抵当権の効力に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 抵当権の効力は抵当不動産の従物にも及ぶが、抵当不動産とは別個に従物について対抗要件を具備しなければ、その旨を第三者に対して対抗することができない。
- 借地上の建物に抵当権が設定された場合において、その建物の抵当権の効力は、特段の合意がない限り借地権には及ばない。
- 買戻特約付売買の買主が目的不動産について買主の債権者のために抵当権を設定し、その旨の登記がなされたところ、その後、売主が買戻権を行使した場合、買主が売主に対して有する買戻代金債権につき、上記抵当権者は物上代位権を行使することができる。
- 抵当不動産が転貸された場合、抵当権者は、原則として、転貸料債権(転貸賃料請求権)に対して物上代位権を行使することができる。
- 抵当権者が、被担保債権について利息および遅延損害金を請求する権利を有するときは、抵当権者は、原則として、それらの全額について優先弁済権を行使することができる。
【解説】
1.抵当権の効力は抵当不動産の従物にも及ぶが、抵当不動産とは別個に従物について対抗要件を具備しなければ、その旨を第三者に対して対抗することができない。
1・・・妥当ではない
判例によると
「石灯籠および取り外しのできる庭石等は本件根抵当権の目的たる宅地の従物であり、
・・・
根抵当権は右従物にも及び、この場合、右根抵当権は本件宅地に対する根抵当権設定登記をもって、その構成部分たる右物件についてはもちろん、抵当権の効力から除外する等特段の事情のないかぎり、民法370条により従物たる右物件についても対抗力を有するものと解するのが相当である」としている(最判昭44.3.28)。上記を言い換えると抵当権の設定登記があれば、原則として、抵当権を設定した不動産(宅地)だけでなく、
その不動産の従物(石灯籠・庭石)にも、抵当権の効力が及び、第三者に対して対抗することができるということです。
判例によると
「石灯籠および取り外しのできる庭石等は本件根抵当権の目的たる宅地の従物であり、
・・・
根抵当権は右従物にも及び、この場合、右根抵当権は本件宅地に対する根抵当権設定登記をもって、その構成部分たる右物件についてはもちろん、抵当権の効力から除外する等特段の事情のないかぎり、民法370条により従物たる右物件についても対抗力を有するものと解するのが相当である」としている(最判昭44.3.28)。上記を言い換えると抵当権の設定登記があれば、原則として、抵当権を設定した不動産(宅地)だけでなく、
その不動産の従物(石灯籠・庭石)にも、抵当権の効力が及び、第三者に対して対抗することができるということです。
したがって、妥当ではありません。
2.借地上の建物に抵当権が設定された場合において、その建物の抵当権の効力は、特段の合意がない限り借地権には及ばない。
3.買戻特約付売買の買主が目的不動産について買主の債権者のために抵当権を設定し、その旨の登記がなされたところ、その後、売主が買戻権を行使した場合、買主が売主に対して有する買戻代金債権につき、上記抵当権者は物上代位権を行使することができる。
3・・・妥当
売主A、買主B、買主の債権者Cとします。AがBに売却し、その後、AがBから買い戻すといった流れです。判例は、「買戻し特約付き売買の買主Bから目的不動産につき抵当権の設定を受けた者Cは、抵当権に基づく物上代位権の行使として、買戻し権の行使により買主が取得した買戻し債権(買い戻す際に、AがBに支払う代金)を差し押さえることができる」としている(最判平11.11.30)。
売主A、買主B、買主の債権者Cとします。AがBに売却し、その後、AがBから買い戻すといった流れです。判例は、「買戻し特約付き売買の買主Bから目的不動産につき抵当権の設定を受けた者Cは、抵当権に基づく物上代位権の行使として、買戻し権の行使により買主が取得した買戻し債権(買い戻す際に、AがBに支払う代金)を差し押さえることができる」としている(最判平11.11.30)。
よって、本肢は妥当です。
この問題は理解すべき部分が多いので個別指導で解説します!
4.抵当不動産が転貸された場合、抵当権者は、原則として、転貸料債権(転貸賃料請求権)に対して物上代位権を行使することができる。
4・・・妥当でない
判例によると「抵当権のついた不動産が転貸(又貸し)された場合、
抵当権者は、原則として、転貸料について、物上代位権を行使できない」
としています(最決平12.4.14)。よって、本肢は妥当ではありません。
判例によると「抵当権のついた不動産が転貸(又貸し)された場合、
抵当権者は、原則として、転貸料について、物上代位権を行使できない」
としています(最決平12.4.14)。よって、本肢は妥当ではありません。
この問題は理解していただきたいので個別指導で解説します!
5.抵当権者が、被担保債権について利息および遅延損害金を請求する権利を有するときは、抵当権者は、原則として、それらの全額について優先弁済権を行使することができる。
5・・・妥当でない
抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の2年分についてのみ、その抵当権を行使することができます(民法375条1項)。よって、本肢は「それらの全額について優先弁済権を行使することができる」となっているので誤りです。正しくは「2年分」です。
抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の2年分についてのみ、その抵当権を行使することができます(民法375条1項)。よって、本肢は「それらの全額について優先弁済権を行使することができる」となっているので誤りです。正しくは「2年分」です。
これも、整理すべき点があるので、個別指導で解説します!
また、満期となった最後の2年分についても併せて解説します!
平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 著作権の関係上省略 | 問31 | 民法:債権 |
---|---|---|---|
問2 | 法令用語 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 判決文の理解 | 問33 | 民法:債権 |
問4 | 学問の自由 | 問34 | 民法:親族 |
問5 | 生存権 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 参政権 | 問36 | 商法 |
問7 | 天皇・内閣 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政代執行法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 公法と私法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 無効と取消し | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政事件訴訟 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・社会 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・その他 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識・社会 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・その他 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識・社会 |
問25 | 行政法の判例 | 問55 | 基礎知識・個人情報保護 |
問26 | 行政法の判例 | 問56 | 基礎知識・個人情報保護 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・個人情報保護 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |