Aが登記簿上の所有名義人である甲土地をBが買い受ける旨の契約(以下「本件売買契約」という。)をA・B間で締結した場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア.甲土地は実際にはCの所有に属していたが、CがAに無断で甲土地の所有名義人をAとしていた場合において、Aがその事情を知らないBとの間で本件売買契約を締結したときであっても、BはCに対して甲土地の引渡しを求めることができない。
イ.甲土地はAの所有に属していたところ、Aの父であるDが、Aに無断でAの代理人と称して本件売買契約を締結し、その後Dが死亡してAがDを単独で相続したときは、Aは、Dの法律行為の追認を拒絶することができ、また、損害賠償の責任を免れる。
ウ.甲土地が相続によりAおよびEの共有に属していたところ、AがEに無断でAの単独所有名義の登記をしてBとの間で本件売買契約を締結し、Bが所有権移転登記をした場合において、Bがその事情を知らず、かつ、過失がないときは、Bは甲土地の全部について所有権を取得する。
エ.甲土地はAの所有に属していたところ、本件売買契約が締結され、B名義での所有権移転の仮登記がされた場合において、Aが甲土地をその事情を知らないFに売却し所有権移転登記をしたときは、Bは本登記をしない限りFに対して所有権の取得を対抗することができない。
オ.甲土地はAの所有に属していたところ、GがAに無断で甲土地上に建物を築造し、その建物の所有権保存登記をした場合において、本件売買契約により甲土地の所有者となったBは、Gが当該建物の所有権を他に譲渡していたとしても、登記名義がGにある限り、Gに対して当該建物の収去および土地の明渡しを求めることができる。
- ア・ウ
- ア・オ
- イ・ウ
- イ・エ
- エ・オ
【解説】
ア.甲土地は実際にはCの所有に属していたが、CがAに無断で甲土地の所有名義人をAとしていた場合において、Aがその事情を知らないBとの間で本件売買契約を締結したときであっても、BはCに対して甲土地の引渡しを求めることができない。
判例によると
「不動産の所有者Cが他人名義Aを使用して不実の登記を経由した場合、民法94条2項(通謀虚偽表示)が類推適用される」としています(最判昭45.7.24)。つまり、本肢の場合、AC間で通謀虚偽表示が行われ、AがBに売却しているので、Bが第三者です。「通謀虚偽表示」によると、当事者は、善意の第三者には、通謀虚偽表示による無効を主張できません(対抗することができない)(民法94条2項)。もし、第三者Bが善意の場合、当事者Cに対して甲土地の引き渡しを求めることができるので、
本肢は妥当ではありません。本肢は理解すべき点があるので個別指導で解説します!
イ.甲土地はAの所有に属していたところ、Aの父であるDが、Aに無断でAの代理人と称して本件売買契約を締結し、その後Dが死亡してAがDを単独で相続したときは、Aは、Dの法律行為の追認を拒絶することができ、また、損害賠償の責任を免れる。
「A:本人」「D:無権代理人」として、A所有の甲土地が売却され、
その後、無権代理人Dが死亡して、本人Aが単独相続しています。この場合、
本人Aは、無権代理行為について追認拒絶をすることができるが
「無権代理人の損害賠償債務」は相続するので、当該損害賠償債務は免れることができません(最判昭48.7.3)。よって、「損害賠償の責任を免れる」が妥当ではありません。
個別指導では、「問題文の理解の仕方」や「関連ポイント」まで解説します!
ウ.甲土地が相続によりAおよびEの共有に属していたところ、AがEに無断でAの単独所有名義の登記をしてBとの間で本件売買契約を締結し、Bが所有権移転登記をした場合において、Bがその事情を知らず、かつ、過失がないときは、Bは甲土地の全部について所有権を取得する。
甲土地についてAとEが共同相続したにも関わらず、Aが勝手に甲土地についてAの単独所有名義の登記をした。その後、Aが第三者Bに売却した場合、どうなるか?
判例によると、
「他の共同相続人Eは第三者Bに対し自己の持分を登記なくして対抗できる」としています(最判昭38.2.22)。
つまり、「第三者Bがその事情を知らず、かつ、過失がないときは、Bは甲土地の全部について所有権を取得する」は妥当ではありません。
詳細解説については、個別指導で解説します!
エ.甲土地はAの所有に属していたところ、本件売買契約が締結され、B名義での所有権移転の仮登記がされた場合において、Aが甲土地をその事情を知らないFに売却し所有権移転登記をしたときは、Bは本登記をしない限りFに対して所有権の取得を対抗することができない。
判例によると、仮登記では、対抗力は認められないとしています(最判昭38.10.8)。
A→B(仮登記)
↓
F
つまり、B名義での所有権移転の仮登記がされた場合、Aが甲土地をFに売却し所有権移転登記をしたときは、Bは本登記をしない限りFに対して所有権の取得を対抗することができません。
よって、本肢は妥当です。
オ.甲土地はAの所有に属していたところ、GがAに無断で甲土地上に建物を築造し、その建物の所有権保存登記をした場合において、本件売買契約により甲土地の所有者となったBは、Gが当該建物の所有権を他に譲渡していたとしても、登記名義がGにある限り、Gに対して当該建物の収去および土地の明渡しを求めることができる。
判例によると
「甲土地上の建物を取得し、自らの意思に基づいてその旨の登記を経由した者(G)は、たとい右建物をXに譲渡したとしても、引き続きGに登記名義を保有する限り、AまたはBに対し、建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできない。」としています(最判平6.2.8)。よって、本肢「Bは、登記名義がGにある限り、Gに対して当該建物の収去および土地の明渡しを求めることができる」は妥当です。この問題はしっかり状況理解が必要なので個別指導で解説します!
平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 著作権の関係上省略 | 問31 | 民法:債権 |
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問2 | 法令用語 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 判決文の理解 | 問33 | 民法:債権 |
問4 | 学問の自由 | 問34 | 民法:親族 |
問5 | 生存権 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 参政権 | 問36 | 商法 |
問7 | 天皇・内閣 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政代執行法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 公法と私法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 無効と取消し | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政事件訴訟 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・社会 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・その他 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識・社会 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・その他 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識・社会 |
問25 | 行政法の判例 | 問55 | 基礎知識・個人情報保護 |
問26 | 行政法の判例 | 問56 | 基礎知識・個人情報保護 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・個人情報保護 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |