地方自治法の定める都道府県の事務に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 都道府県は、自治事務については条例を制定することができるが、法定受託事務については条例を制定することができない。
- 都道府県の事務は、自治事務、法定受託事務および機関委任事務の3種類に分類される。
- 都道府県の自治事務については、地方自治法上、どのような事務がこれに該当するかについて、例示列挙されている。
- 都道府県の法定受託事務は、国が本来果たすべき役割に係るものであるから、法定受託事務に関する賠償責任は国にあり、都道府県に賠償責任が生じることはないものとされている。
- 都道府県の自治事務と法定受託事務は、いずれも事務の監査請求および住民監査請求の対象となることがある。
【解説】
1.都道府県は、自治事務については条例を制定することができるが、法定受託事務については条例を制定することができない。
1・・・誤り
普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理します(地方自治法2条2項)。
そして、普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて上記事務に関し、条例を制定することができます(地方自治法14条1項)。
事務については「法定受託事務」と「自治事務」の2つがありますが、上記条文のから、どちらについても条例制定できることが分かります。
よって、「法定受託事務については条例を制定することができない」という記述は誤りです。
普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理します(地方自治法2条2項)。
そして、普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて上記事務に関し、条例を制定することができます(地方自治法14条1項)。
事務については「法定受託事務」と「自治事務」の2つがありますが、上記条文のから、どちらについても条例制定できることが分かります。
よって、「法定受託事務については条例を制定することができない」という記述は誤りです。
2.都道府県の事務は、自治事務、法定受託事務および機関委任事務の3種類に分類される。
2・・・誤り
普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理します(地方自治法2条2項)。
そして、この事務は、「自治事務」と「法定受託事務」の2つがあります(同条8項9項)。
したがって、「機関委任事務」はないので誤りです。
※機関委任事務は、地方分権一括法に基づく地方自治法の改正(平成12年施行)により、廃止された。
普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理します(地方自治法2条2項)。
そして、この事務は、「自治事務」と「法定受託事務」の2つがあります(同条8項9項)。
したがって、「機関委任事務」はないので誤りです。
※機関委任事務は、地方分権一括法に基づく地方自治法の改正(平成12年施行)により、廃止された。
3.都道府県の自治事務については、地方自治法上、どのような事務がこれに該当するかについて、例示列挙されている。
3・・・誤り
「自治事務」とは、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものをいいます(地方自治法2条8項)。
「法定受託事務」は、「第1号法定受託事務」と「第2号法定受託事務」の2つがあるのですが
それ以外は、すべて「自治事務」に当たります。
具体的に例示列挙することができないくらい多いため、上記のように、「~以外のもの」としています。
「自治事務」とは、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものをいいます(地方自治法2条8項)。
「法定受託事務」は、「第1号法定受託事務」と「第2号法定受託事務」の2つがあるのですが
それ以外は、すべて「自治事務」に当たります。
具体的に例示列挙することができないくらい多いため、上記のように、「~以外のもの」としています。
4.都道府県の法定受託事務は、国が本来果たすべき役割に係るものであるから、法定受託事務に関する賠償責任は国にあり、都道府県に賠償責任が生じることはないものとされている。
4・・・誤り
法定受託事務には、「第1号法定受託事務」と「第2号法定受託事務」があります(地方自治法2条9項)。
「第1号法定受託事務」は、
法令により国が本来果たすべき役割に係る事務の一部を都道府県、市町村又は特別区が処理することとされた事務です(地方自治法2条9項1号)
「第2号法定受託事務」とは、法令により都道府県が本来果たすべき役割に係る事務の一部を市町村又は特別区が処理することとされた事務です(地方自治法2条9項2号)。
法定受託事務に関する賠償責任は、国、都道府県、市町村又は特別区が責任を負います。
したがって、「都道府県に賠償責任が生じることはない」という記述は誤りです。
ちなみに、国家賠償法3条1項では下記のように規定されています。
「国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、『「公務員の選任若しくは監督」又は「公の営造物の設置若しくは管理」に当る者』と『「公務員の俸給、給与その他の費用」又は「公の営造物の設置若しくは管理の費用」を負担する者』とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。」
5.都道府県の自治事務と法定受託事務は、いずれも事務の監査請求および住民監査請求の対象となることがある。
5・・・正しい
事務監査請求は、「地方公共団体の事務全般」を対象として、有権者の50分の1の連署によって請求できます(地方自治法75条)。
一方、
住民監査請求は、「財務会計上の違法・不当な行為または不作為」を対象として、一人でも請求できます(地方自治法242条)。そして、監査請求を受けた監査委員は、下記2つについては、監査の対象外としていますが、それ以外は監査の対象です(地方自治法199条2項)。
事務監査請求は、「地方公共団体の事務全般」を対象として、有権者の50分の1の連署によって請求できます(地方自治法75条)。
一方、
住民監査請求は、「財務会計上の違法・不当な行為または不作為」を対象として、一人でも請求できます(地方自治法242条)。そして、監査請求を受けた監査委員は、下記2つについては、監査の対象外としていますが、それ以外は監査の対象です(地方自治法199条2項)。
- 自治事務にあっては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるもの
- 法定受託事務にあっては国の安全を害するおそれがあることその他の事由により監査委員の監査の対象とすることが適当でないもので政令で定めるもの
よって、自治事務と法定受託事務について、上記を除いては、監査請求や住民監査請求の対象となるので、本肢は正しいです。
平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 著作権の関係上省略 | 問31 | 民法:債権 |
---|---|---|---|
問2 | 法令用語 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 判決文の理解 | 問33 | 民法:債権 |
問4 | 学問の自由 | 問34 | 民法:親族 |
問5 | 生存権 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 参政権 | 問36 | 商法 |
問7 | 天皇・内閣 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政代執行法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 公法と私法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 無効と取消し | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政事件訴訟 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・社会 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・その他 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識・社会 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・その他 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識・社会 |
問25 | 行政法の判例 | 問55 | 基礎知識・個人情報保護 |
問26 | 行政法の判例 | 問56 | 基礎知識・個人情報保護 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・個人情報保護 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |