A市は、市内へのパチンコ店の出店を規制するため、同市内のほぼ全域を出店禁止区域とする条例を制定した。しかし、事業者Yは、この条例は国の法令に抵触するなどと主張して、禁止区域内でのパチンコ店の建設に着手した。これに対して、A市は、同条例に基づき市長名で建設の中止命令を発したが、これをYが無視して建設を続行しているため、A市は、Yを被告として建設の中止を求める訴訟を提起した。最高裁判所の判例によれば、こうした訴訟は、どのような立場でA市が提起したものであるとされ、また、どのような理由で、どのような判決がなされるべきこととなるか。40字程度で記述しなさい。
【解説】
質問内容は
「このような訴訟は、どのような立場でA市が提起したものであるとされ、また、どのような理由で、どのような判決がなされるべきこととなるか」
なので
①どのような立場でA市が訴訟提起したものとされるか?
②どのような理由で、どのような判決がされるか?
この2つを考えます。
この問題文を見たときにまず、「最判平14.7.9:宝塚市パチンコ条例事件」の内容であることは分からないといけません。
そして、問題文の状況を確認すると
- A市は、市内へのパチンコ店の出店を規制するため、同市内のほぼ全域を出店禁止区域とする条例を制定した。
- しかし、事業者Yは、この条例は国の法令に抵触するなどと主張して、禁止区域内でのパチンコ店の建設に着手した。
- これに対して、A市は、同条例に基づき市長名で建設の中止命令を発した
- しかしYが無視して建設を続行した
- そのため、A市は、Yを被告として建設の中止を求める訴訟を提起した。
という流れです。
そして、上記は、
「行政権の主体」として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟です。
言い換えると、「行政サービスを行うため」に、国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟です。
裁判所の審判の対象となるのは「行政権の主体」の場合ではなく「財産権の主体」の場合です。例えば、行政が所有する土地を誰かが侵害していた、といった場合です。
今回の内容は、「行政権の主体」の場合なので、「法律上の争訟」に当たらず、却下判決が下されます。
したがって、
行政権の主体とした立場で提起したとされ、法律上の争訟ではなく、却下判決がなされる。(41字)
平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:物権 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
| 問3 | 人権 | 問33 | 民法:債権 |
| 問4 | 経済的自由 | 問34 | 民法:債権 |
| 問5 | 内閣 | 問35 | 民法:親族 |
| 問6 | 財政 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 憲法の概念 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 取消しと撤回 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 無効な行政行為 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 執行罰 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
| 問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・社会 |
| 問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識・政治 |
| 問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
| 問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
| 問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識・情報通信 |
| 問25 | 行政法の判例 | 問55 | 基礎知識・その他 |
| 問26 | 行政不服審査法 | 問56 | 基礎知識・情報通信 |
| 問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・個人情報保護 |
| 問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法:総則 | 問60 | 著作権の関係上省略 |



