行政事件訴訟法3条3項による「裁決の取消しの訴え」に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 「裁決の取消しの訴え」の対象とされている裁決は、「義務付けの訴え」や「差止めの訴え」の対象ともされている。
- 「裁決の取消しの訴え」について、原告適格が認められるのは、裁決の相手方である審査請求人に限られ、それ以外の者には、原告適格は認められない。
- 「裁決の取消しの訴え」は、審査請求の対象とされた原処分に対する「処分の取消しの訴え」の提起が許されない場合に限り、提起が認められる。
- 「裁決の取消しの訴え」については、審査請求に対する裁決のみが対象とされており、再調査の請求に対する決定は、「処分の取消しの訴え」の対象とされている。
- 「裁決の取消しの訴え」については、「処分の取消しの訴え」における執行停止の規定は準用されていないから、裁決について、執行停止を求めることはできない。
【解説】
1.「裁決の取消しの訴え」の対象とされている裁決は、「義務付けの訴え」や「差止めの訴え」の対象ともされている。
1・・・正しい
「義務付けの訴え」とは、
①行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき、または、②審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないときに、
行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいいます(行政事件訴訟法3条6項)。また、
「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいいます(行政事件訴訟法3条7項)。したがって、裁決も「義務付け訴訟」や「差止め訴訟」の対象です。
「義務付けの訴え」とは、
①行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき、または、②審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないときに、
行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいいます(行政事件訴訟法3条6項)。また、
「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいいます(行政事件訴訟法3条7項)。したがって、裁決も「義務付け訴訟」や「差止め訴訟」の対象です。
2.「裁決の取消しの訴え」について、原告適格が認められるのは、裁決の相手方である審査請求人に限られ、それ以外の者には、原告適格は認められない。
2・・・誤り
処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(取消訴訟)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができます(行政事件訴訟法9条)。したがって、審査請求人以外のものでも、法律上の利益を有する者であれば、裁決取消しの訴えを提起できます。
処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(取消訴訟)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができます(行政事件訴訟法9条)。したがって、審査請求人以外のものでも、法律上の利益を有する者であれば、裁決取消しの訴えを提起できます。
3.「裁決の取消しの訴え」は、審査請求の対象とされた原処分に対する「処分の取消しの訴え」の提起が許されない場合に限り、提起が認められる。
3・・・誤り
①処分→②審査請求→②裁決を進んだ場合、
「処分の取消しの訴え」の提起が許される場合でも
「裁決取り消しの訴え」を提起することは可能です。
したがって、誤りです。本肢は何とひっかけているかというと「原処分主義」のルールです。
裁決取消しの訴えで、「処分の違法を理由」として取消しを求めることができません(行政事件訴訟法10条2項)。
これを原処分主義と言います。
①処分→②審査請求→②裁決を進んだ場合、
「処分の取消しの訴え」の提起が許される場合でも
「裁決取り消しの訴え」を提起することは可能です。
したがって、誤りです。本肢は何とひっかけているかというと「原処分主義」のルールです。
裁決取消しの訴えで、「処分の違法を理由」として取消しを求めることができません(行政事件訴訟法10条2項)。
これを原処分主義と言います。
4.「裁決の取消しの訴え」については、審査請求に対する裁決のみが対象とされており、再調査の請求に対する決定は、「処分の取消しの訴え」の対象とされている。
4・・・誤り
裁決の取消しの訴えとは、「審査請求」その他の「不服申立て(再調査請求など)に対する行政庁の裁決、決定」「その他の行為の取消し」を求める訴訟です(行政事件訴訟法第3条3項)
したがって、「審査請求に対する裁決」だけでなく、「再調査請求に対する決定」も「裁決取り消しの訴え」の対象です。
裁決の取消しの訴えとは、「審査請求」その他の「不服申立て(再調査請求など)に対する行政庁の裁決、決定」「その他の行為の取消し」を求める訴訟です(行政事件訴訟法第3条3項)
したがって、「審査請求に対する裁決」だけでなく、「再調査請求に対する決定」も「裁決取り消しの訴え」の対象です。
5.「裁決の取消しの訴え」については、「処分の取消しの訴え」における執行停止の規定は準用されていないから、裁決について、執行停止を求めることはできない。
5・・・誤り
「裁決の取消しの訴え」は、「処分取り消しの訴え」の執行停止に関するルールが準用されます。
したがって、
裁決の取消しの訴えの提起があった場合において、
「処分、処分の執行又は手続の続行」により生ずる「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」ときは、
裁判所は、申立てにより、決定をもって、執行停止をすることができます(行政事件訴訟法25条2項)。
「裁決の取消しの訴え」は、「処分取り消しの訴え」の執行停止に関するルールが準用されます。
したがって、
裁決の取消しの訴えの提起があった場合において、
「処分、処分の執行又は手続の続行」により生ずる「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」ときは、
裁判所は、申立てにより、決定をもって、執行停止をすることができます(行政事件訴訟法25条2項)。
平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:物権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 人権 | 問33 | 民法:債権 |
問4 | 経済的自由 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 内閣 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 財政 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法の概念 | 問37 | 会社法 |
問8 | 取消しと撤回 | 問38 | 会社法 |
問9 | 無効な行政行為 | 問39 | 会社法 |
問10 | 執行罰 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・社会 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識・政治 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識・情報通信 |
問25 | 行政法の判例 | 問55 | 基礎知識・その他 |
問26 | 行政不服審査法 | 問56 | 基礎知識・情報通信 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・個人情報保護 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:総則 | 問60 | 著作権の関係上省略 |