A市においては、地域の生活環境の整備を図るために、繁華街での路上喫煙を禁止し、違反者には最高20万円の罰金もしくは最高5万円の過料のいずれかを科することを定めた条例を制定した。この場合における次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 違反者に科される過料は、行政上の義務履行確保のための執行罰に当たるものであり、義務が履行されるまで複数回科すことができる。
- 本条例に基づく罰金は、行政刑罰に当たるものであり、非訟事件手続法の定めに基づき裁判所がこれを科する。
- 条例の効力は属人的なものであるので、A市の住民以外の者については、たとえA市域内の繁華街で路上喫煙に及んだとしても、本条例に基づき処罰することはできない。
- 条例に懲役刑を科する旨の規定を置くことは許されていないことから、仮に本条例が違反者に対して懲役を科するものであれば、違法無効になる。
- 長の定める規則に罰金を科する旨の規定を置くことは認められていないことから、本条例にかえて長の規則で違反者に罰金を科することは許されない。
【解説】
1.違反者に科される過料は、行政上の義務履行確保のための執行罰に当たるものであり、義務が履行されるまで複数回科すことができる。
1・・・誤り
執行罰については、義務が履行されるまで複数回科すことができます。
しかし、本肢の「路上喫煙の過料5万円」は「秩序罰」であり、執行罰ではありません。
よって、繰り返し同じ罰を与えることはできません。したがって、本肢は誤りです。
執行罰については、義務が履行されるまで複数回科すことができます。
しかし、本肢の「路上喫煙の過料5万円」は「秩序罰」であり、執行罰ではありません。
よって、繰り返し同じ罰を与えることはできません。したがって、本肢は誤りです。
2.本条例に基づく罰金は、行政刑罰に当たるものであり、非訟事件手続法の定めに基づき裁判所がこれを科する。
2・・誤り
条例に基づく罰金は、行政刑罰に当たります。
そして、行政刑罰には、刑法が適用されます。
したがって、「非訟事件手続法の定めに基づき裁判所がこれを科する」は誤りです。
条例に基づく罰金は、行政刑罰に当たります。
そして、行政刑罰には、刑法が適用されます。
したがって、「非訟事件手続法の定めに基づき裁判所がこれを科する」は誤りです。
3.条例の効力は属人的なものであるので、A市の住民以外の者については、たとえA市域内の繁華街で路上喫煙に及んだとしても、本条例に基づき処罰することはできない。
3・・・誤り
判例によると、条例は属地主義です。
属地主義とは、どこの住民・国籍であっても、その土地の法令が、適用される、ということです。
つまり、A市の住民以外の人がA市で路上喫煙していたら、A市の条例に基づいて罰金や過料を取ることができる、ということです。
よって、本肢は誤りです。
※属人主義とは、行為を行った土地や被害者の国籍にかかわらず、行為を行った者の国や地方公共団体の法令が適用される、という考え方です。
判例によると、条例は属地主義です。
属地主義とは、どこの住民・国籍であっても、その土地の法令が、適用される、ということです。
つまり、A市の住民以外の人がA市で路上喫煙していたら、A市の条例に基づいて罰金や過料を取ることができる、ということです。
よって、本肢は誤りです。
※属人主義とは、行為を行った土地や被害者の国籍にかかわらず、行為を行った者の国や地方公共団体の法令が適用される、という考え方です。
4.条例に懲役刑を科する旨の規定を置くことは許されていないことから、仮に本条例が違反者に対して懲役を科するものであれば、違法無効になる。
4・・・誤り
普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができます(地方自治法14条3項)。
したがって、本条例で違反者に対して、2年以下であれば懲役を科することが可能です(違法とはならないし、無効にもならない)。
普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができます(地方自治法14条3項)。
したがって、本条例で違反者に対して、2年以下であれば懲役を科することが可能です(違法とはならないし、無効にもならない)。
5.長の定める規則に罰金を科する旨の規定を置くことは認められていないことから、本条例にかえて長の規則で違反者に罰金を科することは許されない。
5・・・正しい
普通地方公共団体の長は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができます(地方自治法15条2項)。規則で罰金を科する規定を設けることはできないので、本肢は正しいです。
普通地方公共団体の長は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができます(地方自治法15条2項)。規則で罰金を科する規定を設けることはできないので、本肢は正しいです。
平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 法の下の平等 | 問33 | 民法 |
問4 | 憲法と私法上の行為 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 権力分立 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 国会 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法・精神的自由 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法等 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 法改正のより削除 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・経済 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・社会 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・政治 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・個人情報保護 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・個人情報保護 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・情報通信 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:債権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |