即時取得とは?
「即時取得」とは、簡単にいえば、他人が所有する動産が自分のモノになってしまう制度です。
例えば、A所有の時計を、Bが借りていたとします。
(時計の所有者・貸主A、時計の占有者・借主B)
その後、Cが、Bからこの時計を買いました。
この場合、Cは、時計を所有者Aに返さないといけないか?
答えは、下記の一定要件を満たすと、即時取得が成立して、この時計はCのモノとなります。
つまり、Cは所有者Aに時計を返さなくても良いことになります。これが「即時取得」です。
即時取得の成立要件
下記3つをすべて満たすとき、即時取得が成立します(民法192条)。
- 目的物は動産であること
- 有効な取引行為によること
- 平穏、公然、善意無過失で占有を始めること
要件1:目的物は動産であること
目的物は動産である必要があります。上記事例も「時計」で動産なので、即時取得は可能です。
一方、不動産は即時取得できません。
不動産について即時取得できない理由は個別指導で解説します。
要件2:有効な取引行為によること
「有効な取引行為」とは、例えば、売買契約や贈与契約、質権設定契約などがあります。
【有効な取引とならないものの具体例】
- 制限行為能力者とした取引
- 錯誤や詐欺、強迫、無権代理などの取り消すことができる取引
- 相続によって取得した場合
要件3:平穏、公然、善意無過失で占有を始めること
平穏・公然・善意は推定されます(民法186条1項)。
無過失も推定されます(民法188条、最判昭41.6.9)
上記判例から、占有者は、192条(即時取得の要件)の「過失がない」ことを立証する責任はありません。
即時取得の効果
即時取得すると、即時にその動産について行使する権利(所有権や質権等)を取得する。
盗品又は遺失物についての特例
占有物が盗品(盗まれた場合)又は遺失物であるとき(失くした場合)、被害者又は遺失者は、「盗難又は遺失の時から2年間」、占有者に対してその物の回復(取り戻し)を請求することができます(民法193条)。
即時取得の規定は、取引の安全を図るためのルールですが、反面、原権利者(一番上の事例でいうと所有者A)の権利を奪うことになります。そこで、所有者Aの意思に基づかないで占有を離れた物については、あとで取戻し(回復請求)ができるようにしています。
そして、この回復請求をするには、占有者が支払った代価を弁償する必要はありません。
占有者が盗品又は遺失物を、競売や市場で、善意で購入した場合
上記の通り、原則、無償で物を取り戻すことができるのですが
占有者が、「盗品又は遺失物」を、「競売若しくは公の市場(店舗)等」で、「善意」で買い受けたときは、「被害者又は遺失者」は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができません(民法194条)。
つまり、占有者がお店で購入したのであれば、その代金を支払って、原権利者(所有者A)は回復請求できるということです。
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(即時取得)
第192条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
(盗品又は遺失物の回復)
第193条 前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
第194条 占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。