令和7年度の行政書士試験対策の個別指導開講

令和6年・2024|問9|行政立法

行政立法に関する次の記述のうち、法令の定めまたは最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 行政手続法が定める意見公募手続の対象となるのは、法規命令のみであり、行政規則はその対象とはされていない。
  2. 法律の規定を実施するために政令を定めるのは内閣の事務であるが、その法律による委任がある場合には、政令に罰則を設けることもできる。
  3. 法律による委任の範囲を逸脱して定められた委任命令は違法となるが、権限を有する機関が取り消すまでは有効なものとして取り扱われる。
  4. 通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合には、当該通達に対して取消訴訟を提起することができる。
  5. 行政手続法が適用される不利益処分の処分基準において、過去に処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定が加重される旨の定めがある場合には、当該処分基準の定めに反する後行の処分は当然に無効となる。

>解答と解説はこちら


【答え】:2
【解説】
1.行政手続法が定める意見公募手続の対象となるのは、法規命令のみであり、行政規則はその対象とはされていない。

1・・・妥当でない

行政手続法における意見公募手続の対象は、法規命令に限られず、行政規則等も含まれるので、本肢は誤りです。

意見公募手続とは?
行政手続法39条に定められた手続で、行政庁が「命令等」を定めようとする場合に、その案をあらかじめ公示して、国民や事業者などの意見を広く募る制度です。
いわゆるパブリックコメント制度とも呼ばれています。

「命令等」とは何か?
行政手続法2条8号では、「命令等」を以下のように定義しています。

法律に基づく命令、規則、審査基準、処分基準、行政指導指針その他これらに類するもの

つまり、

  • 法規命令(政令、省令など)
  • 行政規則(訓令・通達など)
  • 審査基準、処分基準、行政指導指針

など、かなり幅広いものが「命令等」に含まれます。

したがって、意見公募手続の対象は「法規命令だけ」ではなく、「行政規則」等も含まれるので、「法規命令のみが対象で、行政規則は対象外」とする本肢の記述は誤りです。

2.法律の規定を実施するために政令を定めるのは内閣の事務であるが、その法律による委任がある場合には、政令に罰則を設けることもできる。

2・・・妥当である

原則として、罰則は国民の権利・自由を制限するものであるため、法律で定める必要があります(法律主義の原則)。
ただし、憲法73条6号ただし書きにより、次のようにされています:
政令には特にその法律の委任がある場合でなければ、罰則を設けることができない。」
つまり、法律に明確な委任がある場合に限り、政令で罰則を設けることが可能となります。よって、本肢は妥当です。

本肢は周辺知識も頭に入れておく必要があるので、個別指導で解説します。

3.法律による委任の範囲を逸脱して定められた委任命令は違法となるが、権限を有する機関が取り消すまでは有効なものとして取り扱われる。

3・・・妥当でない

法律の委任の範囲を超えて命令を定めた場合、その命令は無効です。言い換えると、法令の委任に基づく命令であっても、委任の趣旨や内容、範囲を逸脱している場合には、最初から効力がない(=無効)ということです。よって「違法だが、取り消されるまでは有効」とする本肢の記述は誤りです。

判例による裏付け

📌 最判平成3年7月9日

  • 監獄法施行規則が、未決拘禁者と14歳未満の者との接見を一律に禁止。
  • これは、監獄法の委任の範囲を逸脱しており、無効と判断。

📌 最判平成14年1月31日

  • 児童扶養手当法施行令が、父から認知された子を対象外にする規定を追加。

本肢も関連ポイントがあるので、個別指導で解説します。

4.通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合には、当該通達に対して取消訴訟を提起することができる。

4・・・妥当でない

通達は一般に行政機関の内部的な指示に過ぎず、通常は行政処分には当たらないため、原則として取消訴訟の対象にはならないです。よって、本肢は誤りです。

判例:最判昭和43年12月24日

この判例は、通達が取消訴訟の対象になるかについて判断したもので、次のように述べています。

「通達は、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対して、その職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものである。
このような通達は関係下級行政機関および職員に対する行政組織内部の命令にすぎず、一般国民はこれに拘束されない。」

さらに、

「通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するものであって、国民の権利義務に重大な関わりを持つものであっても、
それ自体が直接国民に対して法律上の効果を生じさせるものではない限り、取消訴訟の対象にはならない」

としています。

本肢は基本事項を頭に入れておく必要があるので、個別指導で解説します。

5.行政手続法が適用される不利益処分の処分基準において、過去に処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定が加重される旨の定めがある場合には、当該処分基準の定めに反する後行の処分は当然に無効となる。

5・・・妥当でない

処分基準に反するからといって、直ちにその処分が「当然に無効」となるわけではありません。よって、本肢は妥当ではないです。

行政庁が処分基準に反する処分をしたとしても、それは自動的に「無効」となるわけではありません。
このような場合、行政事件訴訟法30条に基づき、裁量権の逸脱または濫用があったかどうかが問われます
つまり、「無効」ではなく、「違法(取消しうる)」かどうかが問題となるのです。

行政事件訴訟法30条
行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。

重要判例:最判平成27年3月3日

この判例では、次のように判示されました。

「処分基準に反する取扱いをする場合、裁量権の行使における公正・平等の原則や、基準の内容に対する相手方の信頼保護の観点から、特段の事情がなければ裁量権の逸脱・濫用にあたる。」

つまり、処分基準に反する処分は「当然に無効」なのではなく、特段の事情なく基準から逸脱すれば、裁量権の逸脱として違法となり得るということで、その場合には、取消訴訟で争う余地があると整理されています。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

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