令和7年度の行政書士試験対策の個別指導開講

令和6年・2024|問8|行政法

行政行為(処分)に関する次の記述のうち、法令の定めまたは最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 処分に瑕疵があることを理由とする処分の取消しは、行政事件訴訟法上の取消訴訟における判決のほか、行政不服審査法上の不服申立てにおける裁決または決定によってのみすることができる。
  2. 金銭納付義務を課す処分の違法を理由として国家賠償請求をするためには、事前に当該処分が取り消されていなければならない。
  3. 処分取消訴訟の出訴期間が経過した後に当該処分の無効を争うための訴訟としては、行政事件訴訟法が法定する無効確認の訴えのみが許されている。
  4. 処分Aの違法がこれに後続する処分Bに承継されることが認められる場合であっても、処分Aの取消訴訟の出訴期間が経過している場合には、処分Bの取消訴訟において処分Aの違法を主張することは許されない。
  5. 瑕疵が重大であるとされた処分は、当該瑕疵の存在が明白なものであるとまでは認められなくても、無効とされる場合がある。

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【答え】:5
【解説】
1.処分に瑕疵があることを理由とする処分の取消しは、行政事件訴訟法上の取消訴訟における判決のほか、行政不服審査法上の不服申立てにおける裁決または決定によってのみすることができる。

1・・・妥当でない

本肢の記述は 妥当でありません。

たしかに、処分に瑕疵がある場合、その取消しを求める方法としては、

  • 行政事件訴訟法による 取消訴訟
  • 行政不服審査法による 不服申立て(審査請求など)

などの法的手続きを通じて行うのが一般的です。

しかし、それだけではありません。行政処分には、行政庁が自らの判断で処分を取り消す「職権取消し」という方法も認められています。

よって、処分の取消しは訴訟や不服申立てだけでなく、職権によっても行うことができるため、本肢の「〜によってのみすることができる」という断定的な表現は誤りです。

2.金銭納付義務を課す処分の違法を理由として国家賠償請求をするためには、事前に当該処分が取り消されていなければならない。

2・・・妥当でない

国家賠償請求の前提として、行政処分が事前に取り消されている必要はないため、本肢は誤りです。

判例(最判昭和36年4月21日)でも、「行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あらかじめ処分の救済または無効確認の判決を得る必要はない。」と言っています。

この判例は、国家賠償請求と行政処分の取消訴訟とは別個の法的救済手段であり、互いに独立していることを明確にしています。

3.処分取消訴訟の出訴期間が経過した後に当該処分の無効を争うための訴訟としては、行政事件訴訟法が法定する無効確認の訴えのみが許されている。

3・・・妥当でない

無効を争う訴訟手段は、無効確認訴訟だけに限られるわけではありません。以下のように他の訴訟類型でも無効を主張することが可能です。

  • 民事訴訟
    例えば、行政処分に基づいてされた契約が無効であることを理由に損害賠償を請求する場合など、民事訴訟の中で処分の無効を抗弁として主張できます。
  • 当事者訴訟
    処分に基づく法律関係に関する紛争(たとえば公務員の地位確認など)において、処分が無効であることを前提として争うことが可能です。

よって、本肢は「無効を争う方法が行政事件訴訟法上の無効確認訴訟だけに限られる」としている点が誤りです。

4.処分Aの違法がこれに後続する処分Bに承継されることが認められる場合であっても、処分Aの取消訴訟の出訴期間が経過している場合には、処分Bの取消訴訟において処分Aの違法を主張することは許されない。

4・・・妥当でない

「違法性の承継」が認められる場合には、たとえ先行処分(処分A)の出訴期間が過ぎていたとしても、後行処分(処分B)の取消訴訟において処分Aの違法を主張することが許されるので、本肢は妥当ではありません。

最判平成21年12月17日(建築確認・安全認定の違法性承継)

建築確認処分(後行)に対し、その前提となる安全認定処分(先行)が違法であることを争点とした事案です。

判例は、「建築確認と安全認定は目的が共通し、結合して効果を発揮するものである
とし、「出訴期間が経過した安全認定の違法を、建築確認の取消訴訟において主張することは許される」としました。

よって、違法性の承継が認められる場合には、たとえ先行処分(処分A)の出訴期間が過ぎていても、後行処分(処分B)の取消訴訟において処分Aの違法を主張することが可能です。

この点は周辺知識も含めて理解していただきたいので、個別指導で解説します。

5.瑕疵が重大であるとされた処分は、当該瑕疵の存在が明白なものであるとまでは認められなくても、無効とされる場合がある。

5・・・妥当である

通常、ある処分が「無効」とされるには、その瑕疵が重大かつ明白であることが求められます(「重大かつ明白」説)。

しかし、この原則には例外があります。
つまり、瑕疵が重大であれば、それが「明白」でなくても処分が無効とされることがある
ということです。

判例:最一小判昭和48年4月26日(いわゆる大牟田税務署事件)

この判例は、課税処分に関するものですが、重要な判断を示しました。

「課税処分に重大な内容上の過誤があり、しかもそれが課税要件の根幹部分に関わるものであって、不服申立期間の経過によって不可争力が生じていたとしても、それを理由に課税処分の不利益を受け入れさせるのは著しく不当だと認められるような特別の事情がある場合には、その処分は当然無効である」

つまり、この判例では、次のような事情があれば、「明白性」がなくても無効とされることを認めています。

  • 課税処分に重大な過誤がある
  • 課税要件の根幹にかかわる
  • 不服申立期間の経過で救済が困難
  • 第三者の信頼保護などの支障がない
  • それでも納税者に不利益を強いるのは著しく不当である

したがって、本肢の記述は判例に沿っており、妥当であるといえます。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

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