デジタル環境での情報流通に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
- 生成AIが、利用者からの質問を受けて、誤った情報をあたかも真実であるかのように回答する現象を、アノテーションという。
- 情報が大量に流通する環境の中で、人々が費やせるアテンションや消費時間が希少になり、それらが経済的価値を持つようになることを、アテンションエコノミーという。
- SNSなどを運営する事業者が、違法コンテンツや利用規約違反コンテンツを削除することなどを、コンテンツモデレーションという。
- SNSなどで流通する情報について、第三者がその真偽を検証して結果を公表するなどの活動を、ファクトチェックという。
- SNSなどのアルゴリズムにより、自分の興味のある情報だけに囲まれてしまう状況を、フィルターバブルという。
【答え】:1
【解説】
1・・・妥当でない
生成AIが事実に基づかないもっともらしい誤った情報を回答する現象は、「ハルシネーション(hallucination)」と呼ばれます。AIがまるで“幻覚”を見ているかのように誤った情報を生成することから、この名称が使われています。
一方、「アノテーション(annotation)」は「注釈」や「付加情報」という意味で、AI分野では主に学習データにラベルを付ける作業を指します。たとえば、画像に「犬」「猫」などのラベルを付ける作業がアノテーションです。
よって、「ハルシネーション」と「アノテーション」はまったく別の概念です。
2・・・妥当である
「アテンションエコノミー(Attention Economy)」とは、情報があふれる現代において、人々の「注意(アテンション)」や「時間」が限られており、それ自体が経済的価値を持つという考え方です。
たとえば、SNSや動画配信サービス、ニュースサイトなどがユーザーの注目を集めることで広告収入を得ているように、アテンションはお金と直結する資源となっています。
しかしその一方で、ユーザーの関心を引くために、
- 過激なタイトル
- センセーショナルな内容
- 憶測に基づいた事実に反する記事
といったものが拡散されやすく、偽情報や誤情報の拡散、炎上の助長といった社会問題も引き起こしています。
これは、総務省『情報通信白書 令和5年版』にも明記されており、現代社会における大きな課題の一つです。
3・・・妥当である
「コンテンツモデレーション(Content Moderation)」とは、SNSや掲示板、口コミサイトなどのオンラインプラットフォーム上に投稿される内容を監視・管理し、不適切なコンテンツを排除する取り組みを指します。
主な目的は、
- 違法コンテンツ(例:暴力的映像、ヘイトスピーチ、著作権侵害など)や
- 利用規約違反コンテンツ(例:スパム、不快な表現、虚偽情報など)
を削除し、ユーザーが安心して利用できる健全なオンライン環境を維持することです。
コンテンツモデレーションには、
- 人間の目によるチェック(人力モデレーション)
- AIや自動フィルターによる検出(機械的モデレーション)
が併用されることが多いです。
最近では、コンテンツの多様化や投稿量の増加により、より高度な判断や倫理的配慮が求められるようになっています。
4・・・妥当である
「ファクトチェック(Fact-check)」とは、報道・SNS・ネット上で拡散された情報や主張が事実に基づいているかどうかを、第三者が客観的に検証する活動のことです。
SNSの普及により、情報が一気に拡散する時代になりましたが、その中には誤情報や虚偽情報(フェイクニュース)も含まれています。こうした情報が広がると、
- 政治や選挙の公平性が損なわれたり
- ワクチンや健康などの誤情報で人々が混乱したり
- 社会不安や偏見を生む原因になったり
といった深刻な社会的影響を引き起こすことがあります。
そのため、特に政治・選挙・健康・災害など、正確な情報が求められる分野では、ファクトチェックが非常に重要とされています。
公正・中立な立場から、信頼できる根拠に基づいてチェックされることが求められ、国内外には専門のファクトチェック団体も存在します。
5・・・妥当である
「フィルターバブル(Filter Bubble)」とは、SNSや検索エンジンなどのアルゴリズムによって、自分の興味・関心に合った情報だけが届くようになり、他の多様な意見や事実に触れにくくなる現象を指します。まるで“情報の泡”の中に閉じ込められているような状態になるため、この名前がついています。
たとえば、ある政治的立場に関心があるユーザーには、その立場を支持する記事や投稿ばかりが表示され、反対意見や異なる視点が届かなくなることがあります。これにより、偏った情報の中で思考や判断が形成され、社会的な分断を生む一因となる可能性があります。
さらに関連する概念として、「エコーチェンバー(Echo Chamber)」があります。これは、自分と似た考えの人々の間で情報が反響し合い、似た意見ばかりが繰り返されて増幅していく状態です。意見の多様性が失われ、「自分の考えが“当然”だ」と過信してしまうリスクもあります。
このようなフィルターバブルやエコーチェンバーによって、情報空間の偏りや社会的対立が進行し、民主主義に悪影響を及ぼす恐れがあると、総務省『情報通信白書(令和5年版)』でも指摘されています。
令和6年(2024年)過去問
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法 |
問3 | 憲法 | 問33 | 民法 |
問4 | 憲法 | 問34 | 民法 |
問5 | 憲法 | 問35 | 民法 |
問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 多肢選択 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 多肢選択 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 多肢選択 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行服法・行訴法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 行政書士法 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 住民基本台帳法 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識 |
問26 | 公文書管理法 | 問56 | 基礎知識 |
問27 | 民法 | 問57 | 個人情報保護法 |
問28 | 民法 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
