日本における外国人に関する次のア~オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。
ア.外国籍の生徒も、全国高等学校体育連盟や日本高等学校野球連盟が主催する大会に参加することができる。
イ.より広い業種での外国人の就労を可能とするために新たに設けられた在留資格「特定技能1号」には、医師も含まれる。
ウ.徴税など、いわゆる公権力の行使にあたる業務を含め、外国籍の者も全国の全ての自治体で公務員として就労することができる。
エ.名古屋出入国在留管理局の施設に収容されていたスリランカ人女性が2021年に死亡し、その遺族が国家賠償請求訴訟を行った。
オ.特別永住者を含む外国人には、日本への入国時に指紋と顔写真の情報の提供が義務付けられている。
- ア・イ
- ア・エ
- イ・ウ
- ウ・オ
- エ・オ
【答え】:2(ア・エが妥当)
【解説】
ア・・・妥当である
全国高等学校体育連盟(高体連)が主催する全国高等学校総合体育大会(インターハイ)では、外国籍の生徒でも以下の条件を満たせば参加が認められています。
- 日本の高等学校に在籍していること
- 卒業を目的として4月に入学していること(短期留学生は対象外)
- 学習活動を継続して行っていること
つまり、正式な留学生であって、短期滞在ではなく卒業を目指して在学している場合には、外国籍であっても出場可能です。
また、日本高等学校野球連盟(高野連)が主催する高校野球(例:甲子園大会など)では、国籍に関する制限は設けられていません。したがって、学校の生徒である限り、外国籍であっても大会に出場できます。
イ・・・妥当でない
在留資格「特定技能1号」は、深刻な人手不足が生じている特定の産業分野において、一定の技能や知識を有する外国人を受け入れるために設けられた在留資格です。対象となるのは、以下のような現業系の職種です。
介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・船用工業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業
医師や弁護士のような高度専門職(国家資格が必要な職種)は対象外であり、「特定技能1号」に該当しません。こうした職種には、別の在留資格(例:「医療」など)が用意されています。
よって、医師は「特定技能1号」に含まれないため、本肢は妥当でないと判断されます。
ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・船用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業
ウ・・・妥当でない
近年、外国籍の者も公務員として採用する自治体は増えていますが、すべての自治体で就労できるわけではなく、職種にも制限があります。特に、以下の点に注意が必要です。
<① 公権力の行使にあたる業務は原則不可>
徴税、警察、行政処分の決定など、国家または地方公共団体の意思を一方的に国民に及ぼす「公権力の行使」や、政策形成に関与する職務については、原則として日本国籍を有する者が担うことが想定されています。
<② 採用は自治体の判断に委ねられている>
外国籍者の公務員採用は、自治体ごとの条例や採用方針によって異なり、全国すべての自治体で認められているわけではありません。
<③ 判例による確認(外国人管理職選考拒否事件)>
最高裁判例(平成17年1月26日)では、
と判断されており、外国籍であることを理由に一定の職務を制限することは法的に認められるとされています。
したがって、外国籍の者が公権力を行使する職務に就くことはできず、全国すべての自治体で公務員になれるわけでもないため、この選択肢は妥当でないといえます。
エ・・・妥当である
この事案は、2021年3月6日に発生した、スリランカ国籍のウィシュマ・サンダマリさんが名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)に収容中に亡くなった事件です。
背景:
- ウィシュマさんは在留資格を失い、収容されていたが、体調不良を繰り返し訴えていた。
- しかし、入管側は十分な医療対応を行わなかったとされ、死亡に至った。
その後の経緯:
- ウィシュマさんの遺族は、「必要な治療を怠った過失により死亡に至った」として、国を相手取り国家賠償請求訴訟を提起。
- この事件は、日本の入管制度に対する国内外からの強い批判と関心を呼び、入管法改正論議にも大きな影響を与えました。
オ・・・妥当でない
日本への入国時には、出入国管理及び難民認定法(入管法)第6条の3により、外国人は原則として指紋および顔写真(個人識別情報)の提供が義務付けられています。この制度は、テロ防止や不法入国の防止を目的として2007年から導入されました。
しかし、以下のような一定の外国人はこの提供義務が免除されています。
【個人識別情報の提供が免除される主な対象者】
- 特別永住者(入管法6条の3 第1項1号)
- 16歳未満の者
- 国の公務で来日する外交官や公用関係者 等
特別永住者とは、主に戦前から日本に居住していた旧植民地出身者(朝鮮半島や台湾など)およびその子孫が対象で、法律上も一般の中長期在留者とは異なる扱いを受けています。
したがって、特別永住者には指紋・顔写真の提供義務は課されていないため、本肢は妥当でないです。
令和6年(2024年)過去問
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法 |
問3 | 憲法 | 問33 | 民法 |
問4 | 憲法 | 問34 | 民法 |
問5 | 憲法 | 問35 | 民法 |
問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 多肢選択 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 多肢選択 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 多肢選択 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行服法・行訴法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 行政書士法 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 住民基本台帳法 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識 |
問26 | 公文書管理法 | 問56 | 基礎知識 |
問27 | 民法 | 問57 | 個人情報保護法 |
問28 | 民法 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
