中東やパレスチナに関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
- 1947年に、国際連合総会において、パレスチナをアラブ人国家とユダヤ人国家と国際管理地区とに分割する決議が採択された。
- 1948年に、イスラエルの建国が宣言されると、これに反発したアラブ諸国との間で第一次中東戦争が勃発した。
- 1987年に、イスラエルの占領地で始まり、大規模な民衆蜂起に発展したパレスチナ人による抵抗運動を、第一次インティファーダ(民衆蜂起)という。
- 1993年に、パレスチナ解放機構(PLO)とイスラエルとの間で暫定自治協定が結ばれ、(ヨルダン川)西岸地区・ガザ地区でパレスチナの先行自治が始まった。
- 2020年に、日本が仲介して、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)およびイランが、国交の正常化に合意した。
【答え】:5
【解説】
1・・・妥当である
第一次世界大戦中、イギリスはアラブ人に対して「戦後に独立国家を与える」と約束する一方で、ユダヤ人に対しても「パレスチナにユダヤ人の民族的郷土を建設することを支持する」と表明しました(バルフォア宣言)。このように、アラブ人とユダヤ人の双方に相反する約束をしたことから、パレスチナにおける両民族の対立が激化していきました。
その後、第二次世界大戦後も対立は収まらず、国際的な対応が求められるようになります。そこで、1947年、国際連合総会において、パレスチナをユダヤ人国家・アラブ人国家・国際管理地区(エルサレム周辺)に分割する「パレスチナ分割決議(国連決議第181号)」が採択されました。
この決議は、ユダヤ人側は受け入れましたが、アラブ人側は反発し、その後の紛争の火種となりました。
2・・・妥当である
1948年5月14日、ユダヤ人指導者ベングリオンがイスラエルの建国を宣言しました。これは、前年に採択された国連のパレスチナ分割決議に基づくものでしたが、アラブ諸国はこの分割案およびユダヤ人国家の成立に強く反対していました。
建国宣言の翌日、エジプト・シリア・ヨルダン・イラク・レバノンなどのアラブ諸国が一斉にイスラエルに侵攻し、第一次中東戦争(1948年~1949年)が勃発しました。この戦争は、「パレスチナ戦争」とも呼ばれています。
結果として、イスラエルは戦争に勝利し、国際連合の分割案よりも広い領土を確保しました。一方で、多くのパレスチナ人が難民となり、アラブとイスラエルの対立はさらに深まることになりました。
3・・・妥当である
インティファーダ(Intifada)は、アラビア語で「振り払う」「蜂起」を意味する言葉で、イスラエルの占領に対するパレスチナ人の民衆による抵抗運動を指します。
第一次インティファーダは、1987年12月、ガザ地区での交通事故をきっかけに勃発しました。事故の背景にイスラエルの占領政策への不満があり、これを機にガザ地区やヨルダン川西岸地区(いずれもイスラエル占領地)で大規模な抗議運動が発生。住民たちは石を投げる、ストライキを行うなど、主に非武装の手段で抵抗を続けました。
この運動は、1993年のオスロ合意の成立まで続きました。オスロ合意によって、パレスチナ自治政府の設立が合意され、和平への道が模索されるようになります。
なお、2000年には、より暴力的な第二次インティファーダが再び発生し、両者の対立はさらに深まっていきました。
4・・・妥当である
1993年、イスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)は、ノルウェーの首都オスロで秘密交渉を行い、「パレスチナ暫定自治協定(通称:オスロ合意)」に合意しました。
この合意により、イスラエルはヨルダン川西岸地区とガザ地区におけるパレスチナ人の暫定的な自治を認め、パレスチナ暫定自治政府(PA=パレスチナ自治政府)が設立されました。これにより、1994年5月から、パレスチナ人による先行的な自治が開始されました。
また、オスロ合意に基づき、イスラエルとPLOは相互に相手の存在を承認し、将来的な「二国家共存」の可能性が模索されるようになります。
ただし、この合意は最終的な地位や国境、エルサレムの帰属問題などは未解決のままであり、その後の和平プロセスは停滞と対立を繰り返すことになります。
5・・・妥当でない
2020年、アメリカ合衆国の仲介により、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)は国交正常化に合意しました。この合意は「アブラハム合意(Abraham Accords)」と呼ばれ、同年9月にホワイトハウスで正式に署名されました。
この合意により、UAEはイスラエルと外交関係を樹立した初の湾岸アラブ国家となり、その後、バーレーン、スーダン、モロッコなども同様に国交正常化に踏み切りました。
一方、イランはこの合意に強く反発しており、イスラエルと国交を結んだわけではありません。よって、問題文中の「UAEおよびイランが国交の正常化に合意した」という点も誤りです。
また、「日本が仲介した」という記述も事実ではなく、主に仲介を行ったのはアメリカ(トランプ政権)です。
令和6年(2024年)過去問
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法 |
問3 | 憲法 | 問33 | 民法 |
問4 | 憲法 | 問34 | 民法 |
問5 | 憲法 | 問35 | 民法 |
問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 多肢選択 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 多肢選択 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 多肢選択 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行服法・行訴法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 行政書士法 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 住民基本台帳法 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識 |
問26 | 公文書管理法 | 問56 | 基礎知識 |
問27 | 民法 | 問57 | 個人情報保護法 |
問28 | 民法 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
