総務大臣Yは、新たなテレビ放送局の開設を目的として、電波法に基づく無線局開設免許を1社のみに付与することを表明した。これを受けて、テレビ放送局を開設しようとする会社XがYに開設免許の申請をしたところ、Yは、その他の競願者の申請を含めて審査を実施し、会社Aに対しては免許を付与する処分(免許処分)をし、Xに対しては申請を棄却する処分(拒否処分)をした。 これに対し、Xは取消訴訟を提起して裁判上の救済を求めたいと考えている。競願関係をめぐる最高裁判所の判例の考え方に照らし、Xは誰を被告として、どのような処分に対する取消訴訟を提起できるか。なお、現行の電波法は、審査請求前置や裁決主義の規定を置いているが、それらは度外視して、直接に処分取消訴訟ができるものとして考え、40字程度で記述しなさい。
【答え】:Xは国を被告として、免許処分または拒否処分の取消訴訟を提起できる。(40字)
Xは国を被告として、免許処分に対する取消訴訟または拒否処分に対する取消訴訟を提起できる。(44字)
【解説】
<問題のポイント>
競願関係(=複数の申請者がいて、その中から1社のみ選ばれる)にある許認可処分に関し、不許可処分を受けた者(X)が取消訴訟を提起したい。
- 取消訴訟で争える処分は何か?
- 被告とすべき相手は誰か?
<1. 被告について>
行政事件訴訟法11条1項1号により、処分をした行政庁が国に所属する場合、被告は「国」です。
今回、処分をしたのは総務大臣(行政庁)なので、Xは「国」を被告として訴訟を提起することになります。
<2. 争える処分について>
競願関係にある場合、以下の2つの処分のいずれか、または両方について取消訴訟を提起可能。
- 自己に対する拒否処分(Xに対する免許の不許可)
自分の申請を不許可にされたという処分に対して、Xは原告適格を有する。 - 他者に対する免許処分(Aへの免許付与)
自分がそのポストを争っていた立場(競願)である以上、「他人の処分の取消し」でも法律上の利益があるとされる(最判昭和43年12月24日)。
よって、Aへの免許処分の取消しを求める訴訟も可能。
<まとめると>
Xは、
自己の拒否処分に対して取消訴訟を提起することができ、
競願関係にある他社(A)への免許処分に対しても取消訴訟を提起することができます。
両方を併せて提起することも可能です。
よって、上記を40字程度でまとめると
Xは国を被告として、免許処分に対する取消訴訟または拒否処分に対する取消訴訟を提起できる。(44字)
令和6年(2024年)過去問
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法 |
問3 | 憲法 | 問33 | 民法 |
問4 | 憲法 | 問34 | 民法 |
問5 | 憲法 | 問35 | 民法 |
問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 多肢選択 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 多肢選択 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 多肢選択 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行服法・行訴法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 行政書士法 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 住民基本台帳法 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識 |
問26 | 公文書管理法 | 問56 | 基礎知識 |
問27 | 民法 | 問57 | 個人情報保護法 |
問28 | 民法 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
