令和7年度の行政書士試験対策の個別指導開講

令和6年・2024|問43|多肢選択

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]にあてはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

参議院の総議員の1/4以上である72名の議員は、平成29年6月22日、憲法53条後段の規定により、内閣に対し、国会の臨時会の召集を決定すること(以下「臨時会召集決定」という)を要求した。内閣は、同年9月22日、臨時会を同月28日に召集することを決定した。同日、第194回国会が召集されたが、その冒頭で衆議院が解散され、参議院は同時に閉会となった。本件は、上記の要求をした参議院議員の一人である上告人(原告)が、被上告人(国)に対し、主位的に、上告人が次に参議院の総議員の1/4以上の議員の一人として臨時会召集決定の要求(以下「臨時会召集要求」という)をした場合に、内閣において、20日以内に臨時会が召集されるよう臨時会召集決定をする義務を負うことの確認を、予備的に、上記場合に、上告人が20日以内に臨時会の召集を受けられる地位を有することの確認を求める(以下、これらの請求に係る訴えを「本件各確認の訴え」という)事案である。 本件各確認の訴えは、上告人が、個々の国会議員が臨時会召集要求に係る権利を有するという憲法53条後段の解釈を前提に、[ ア ]に関する確認の訴えとして、上告人を含む参議院議員が同条後段の規定により上記権利を行使した場合に被上告人が上告人に対して負う法的義務または上告人が被上告人との間で有する法律上の地位の確認を求める訴えであると解されるから、当事者間の具体的な権利義務または法律関係の存否に関する紛争であって、法令の適用によって終局的に解決することができるものであるということができる。そうすると、本件各確認の訴えは、[ イ ]にあたるというべきであり、これと異なる原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ない。 もっとも、本件各確認の訴えは、将来、上告人を含む参議院議員が憲法53条後段の規定により臨時会召集要求をした場合における臨時会召集決定の遅滞によって上告人自身に生ずる不利益を防止することを目的とする訴えであると解されるところ、将来、上告人を含む参議院の総議員の1/4以上により臨時会召集要求がされるか否かや、それがされた場合に臨時会召集決定がいつされるかは現時点では明らかでないといわざるを得ない。 そうすると、上告人に上記不利益が生ずる[ ウ ]があるとはいえず、本件各確認の訴えは、[ エ ]を欠き、不適法であるというべきであるから、これを却下すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができる。 (最三小判令和5年9月12日民集77巻6号1515頁<文章を一部修正した>)
1.法律上保護された利益  2.予見可能性  3.確認の利益  4.統治行為  5.合理的な理由  6.公権力の行使に関する不服の訴訟  7.法律上の争訟  8.国権の発動  9.処分たる性格  10.相当の蓋然性  11.制度上の障害  12.国会議員の資格  13.現実の危険  14.確認の対象  15.被告適格  16.公法上の法律関係  17.機関相互間における権限の存否またはその行使  18.当事者間の法律関係を確認しまたは形成する処分または裁決に関する訴訟  19.自己の法律上の利益にかかわる資格で提起する訴訟  20.国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟

>解答と解説はこちら


【答え】:ア:公法上の法律関係、イ:法律上の争訟、ウ:現実の危険、エ:確認の利益
【解説】
本件各確認の訴えは、上告人が、個々の国会議員が臨時会召集要求に係る権利を有するという憲法53条後段の解釈を前提に、[ ア ]に関する確認の訴えとして、上告人を含む参議院議員が同条後段の規定により上記権利を行使した場合に被上告人が上告人に対して負う法的義務または上告人が被上告人との間で有する法律上の地位の確認を求める訴えである

ア・・・公法上の法律関係

上記を要約すると、
本件各確認の訴えは、憲法53条後段の解釈を前提に、上告人を含む参議院議員が行使した権利について、被上告人が負う法的義務や法律上の地位の確認を求めるものである。

ここでは、「訴えの性質」が問われています。つまり、これは私人間の民法上の関係ではなく、議員と国家(内閣)という公的主体間の法的関係です。

キーワード

  • 憲法に基づく請求
  • 国会議員と内閣との関係(→公的関係)
  • 法律上の地位の確認

よって、「公法上の法律関係」が最も適切です。

当事者間の具体的な権利義務または法律関係の存否に関する紛争であって、法令の適用によって終局的に解決することができるものであるということができる。そうすると、本件各確認の訴えは、[ イ ]にあたるというべきであり、これと異なる原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ない。

イ・・・法律上の争訟

上記を要約すると、
法令の適用によって終局的に解決することができる争いだから、これは◯◯◯である。

これは、「裁判所が取り扱える争い」=裁判審査の対象になるかどうか、という判断です。

キーワード

  • 当事者間の具体的な権利義務や法律関係の存否
  • 法令の適用により終局的に解決可能

上記は、判例上明確に「法律上の争訟」と定義されています。
選択肢の中にまさにこの語句があるので、それを選びます。

将来、上告人を含む参議院の総議員の1/4以上により臨時会召集要求がされるか否かや、それがされた場合に臨時会召集決定がいつされるかは現時点では明らかでないといわざるを得ない。 そうすると、上告人に上記不利益が生ずる[ ウ ]があるとはいえず、

ウ・・・現実の危険

上記を要約すると、
将来、臨時会召集の要求がされるか、または内閣がどう対応するかは現時点では不明確であり、上告人に不利益が生じる◯◯◯があるとはいえない。

これは「確認訴訟における訴えの適法性(現在性・具体性)」に関わるところです。

キーワード

  • 将来の事態が確定していない
  • 不利益が生じるかどうかが不確実
    → 抽象的・仮定的であり、訴訟の条件を欠く

このような文脈での典型的な判断基準は「現実の危険(real and immediate danger)」の有無」です。
それがないと、裁判所としては判断を避ける傾向にあります。

そうすると、上告人に上記不利益が生ずる[ ウ:現実の危険 ]があるとはいえず、本件各確認の訴えは、[ エ ]を欠き、不適法であるというべきであるから、これを却下すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができる。

エ・・・確認の利益

現実の危険がない以上、訴えは◯◯◯を欠き不適法である。

これは確認訴訟でのキーワードです。

確認訴訟とは、一定の法律関係や権利義務の有無について、裁判所にその存否を確定してもらうことを目的とする訴訟です。

たとえば…

  • 「私にはこの財産に対する所有権があることを確認してほしい」
  • 「この行政処分が無効であることを確認してほしい」

といった請求をします。

確認訴訟の要件

判例・学説を踏まえると、確認訴訟が適法に成立するには次の3つの要件が必要です。

  1. 確認の対象が適切であること
    単なる事実ではなく、「具体的な法律関係・権利義務」が確認の対象でなければなりません。
    例:
    〇「Aに金銭債権があること」
    ✕「事故が起きたことの確認」←単なる事実確認はNG
  2. 現在の法律関係であること
    将来の不確定な事態に備えて確認を求めるだけでは足りません。
    今現在、法的に問題になっている関係である必要があります。
    今回の事案では: → 「将来、臨時国会の召集要求がされるか不確定」 → 「不利益が現実に生じる危険がない」 → よって「確認の利益」がない=不適法
  3. 確認の利益があること
    確認の利益とは、確認を求めることによって、現実に法的地位をめぐる不安を解消し、意味がある結果を得られる必要がある
    つまり、単に「気になるから確認してほしい」というレベルではダメで、裁判を通じて具体的・実質的な意味があるかどうかが問われます。

今回の判例でも、次のように判断されました。

  • 内閣が召集を遅らせたことに対し、議員が将来のために確認を求めた
  • でもその「不利益」が将来発生するか不確定
  • よって、「確認の利益」がない→訴えは不適法

令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略
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