令和7年度の行政書士試験対策の個別指導開講

令和6年・2024|問41|多肢選択

次の文章は、婚外子の法定相続分を嫡出である子の1/2と定めていた民法規定(以下「本件規定」という)を違憲とした最高裁判所の決定の一部である。空欄[ ア ]~[ エ ]にあてはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

本件規定は、国民生活や身分関係の基本法である民法の一部を構成し、相続という日常的な現象を規律する規定であって、〔問題となった相続が開始した〕平成13年7月から既に約12年もの期間が経過していることからすると、その間に、本件規定の合憲性を前提として、多くの遺産の分割が行われ、更にそれを基に新たな権利関係が形成される事態が広く生じてきていることが容易に推察される。取り分け、本決定の違憲判断は、長期にわたる社会状況の変化に照らし、本件規定がその合理性を失ったことを理由として、その違憲性を当裁判所として初めて明らかにするものである。それにもかかわらず、本決定の違憲判断が、[ ア ]としての[ イ ]という形で既に行われた遺産の分割等の効力にも影響し、いわば解決済みの事案にも効果が及ぶとすることは、著しく[ ウ ]を害することになる。[ ウ ]は法に内在する普遍的な要請であり、当裁判所の違憲判断も、その[ ア ]としての[ イ ]を限定し、[ ウ ]の確保との調和を図ることが求められているといわなければならず、このことは、裁判において本件規定を違憲と判断することの適否という点からも問題となり得るところといえる。 以上の観点からすると、既に関係者間において裁判、合意等により[ エ ]なものとなったといえる法律関係までをも現時点で覆すことは相当ではないが、関係者間の法律関係がそのような段階に至っていない事案であれば、本決定により違憲無効とされた本件規定の適用を排除した上で法律関係を[ エ ]なものとするのが相当であるといえる。 (最大決平成25年9月4日民集67巻6号1320頁<文章を一部変更した。>)
1.公権力  2.事実上の拘束性  3.影響力の行使  4.法的安定性  5.衡平  6.暫定的  7.対話  8.先例  9.法令審査  10.確定的  11.具体的  12.家族法秩序  13.終審裁判所  14.既判力  15.司法積極主義  16.遡及的  17.実質的正義  18.蓋然的  19.公益  20.裁量統制

>解答と解説はこちら


【答え】:ア:先例、イ:事実上の拘束性、ウ:法的安定性、エ:確定的
【解説】
本件規定は、国民生活や身分関係の基本法である民法の一部を構成し、相続という日常的な現象を規律する規定であって、〔問題となった相続が開始した〕平成13年7月から既に約12年もの期間が経過していることからすると、その間に、本件規定の合憲性を前提として、多くの遺産の分割が行われ、更にそれを基に新たな権利関係が形成される事態が広く生じてきていることが容易に推察される。取り分け、本決定の違憲判断は、長期にわたる社会状況の変化に照らし、本件規定がその合理性を失ったことを理由として、その違憲性を当裁判所として初めて明らかにするものである。それにもかかわらず、本決定の違憲判断が、[ア:先例]としての[イ:事実上の拘束性]という形で既に行われた遺産の分割等の効力にも影響し、いわば解決済みの事案にも効果が及ぶとすることは、著しく[ウ:法的安定性]を害することになる。[ウ:法的安定性]は法に内在する普遍的な要請であり、当裁判所の違憲判断も、その[ア:先例]としての[イ:事実上の拘束性]を限定し、[ウ:法的安定性]の確保との調和を図ることが求められているといわなければならず、このことは、裁判において本件規定を違憲と判断することの適否という点からも問題となり得るところといえる。 以上の観点からすると、既に関係者間において裁判、合意等により[エ:確定的]なものとなったといえる法律関係までをも現時点で覆すことは相当ではないが、関係者間の法律関係がそのような段階に至っていない事案であれば、本決定により違憲無効とされた本件規定の適用を排除した上で法律関係を[エ:確定的]なものとするのが相当であるといえる。
違憲判断は、長期にわたる社会状況の変化に照らし、本件規定がその合理性を失ったことを理由として、その違憲性を当裁判所として初めて明らかにするものである。それにもかかわらず、本決定の違憲判断が、[ ア ]としての[ イ ]という形で既に行われた遺産の分割等の効力にも影響し、いわば解決済みの事案にも効果が及ぶとすることは、著しく[ ウ ]を害することになる。

ア・・・先例

「違憲判断が〇〇としての△△という形で…」という表現から、裁判所の判断が将来の判断に影響を与えるという文脈が読み取れます。

このような性質をもつのは、「先例(判例)」です。特に最高裁の違憲判断は、それ以降の裁判や実務に大きな影響を及ぼします。

❌間違いやすい選択肢でいうと、「公権力」や「裁量統制」がありますが、これらは文意に合いません(違憲判断が“公権力”になるわけではない)。

本決定の違憲判断が、[ ア:先例 ]としての[ イ ]という形で既に行われた遺産の分割等の効力にも影響し、

イ・・・事実上の拘束性

判例は厳密には法源ではありませんが、「実務上非常に強い影響力(拘束力)」を持ちます。

特に最高裁判所の判例には、下級審に対して「事実上の拘束力」があると言われます。

よって、「事実上の拘束性」が自然に当てはまります。

間違いやすい選択肢として、「法令審査」や「影響力の行使」などがありますが意味は近いですが文脈に適合しません。

解決済みの事案にも効果が及ぶとすることは、著しく[ ウ ]を害することになる。

ウ・・・法的安定性

解決済みの遺産分割に遡って影響が及ぶとすると、「法律関係が不安定になる」という文脈です。

このとき重視される法的価値は「法的安定性」です。

判例の変更や違憲判断がある場合、「法的安定性」と「実質的正義(衡平)」のバランスが常に問題になります。

間違いやすい選択肢として、「衡平」や「実質的正義」があります。「衡平」や「実質的正義」も価値判断ですが、この文脈では「安定性」を重視しているので不適切です。

既に関係者間において裁判、合意等により[ エ ]なものとなったといえる法律関係までをも現時点で覆すことは相当ではないが、関係者間の法律関係がそのような段階に至っていない事案であれば、本決定により違憲無効とされた本件規定の適用を排除した上で法律関係を[ エ ]なものとするのが相当であるといえる。

エ・・・確定的

ここでは、「すでに確定している法律関係」と「未確定な法律関係」を区別しています。

つまり、「すでに協議や裁判で最終的に決着がついているか」が分かれ目です。

よって「確定的」が最も適切です。

間違いやすい選択肢として「具体的」「終審裁判所」などがありますが、これらを入れると意味が合いません。

令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略
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