令和7年度の行政書士試験対策の個別指導開講

令和6年・2024|問4|憲法

インターネット上の検索サービスにおいて、ある人物Xの名前で検索をすると、Xの過去の逮捕歴に関する記事等が表示される。Xは、この検索事業者に対して、検索結果であるURL等の情報の削除を求める訴えを提起した。これに関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益は、法的保護の対象となるというべきであり、過去の逮捕歴もこれに含まれる。
  2. 検索結果として提供される情報は、プログラムによって自動的に収集・整理・提供されるものにすぎず、検索結果の提供は、検索事業者自身による表現行為とはいえない。
  3. 検索事業者による検索結果の提供は、公衆の情報発信や情報の入手を支援するものとして、インターネット上の情報流通の基盤としての役割を果たしている。
  4. 当該事実を公表されない法的利益と、当該情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量した結果、前者が優越することが明らかな場合には、検索事業者に対してURL等の情報を当該検索結果から削除することを求めることができる。
  5. 過去の逮捕歴がプライバシーに含まれるとしても、児童買春のように、児童への性的搾取・虐待として強い社会的非難の対象とされ、罰則で禁止されている行為は、一定の期間の経過後も公共の利害に関する事柄でありうる。

>解答と解説はこちら


【答え】:2
【解説】
1.個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益は、法的保護の対象となるというべきであり、過去の逮捕歴もこれに含まれる。

1・・・妥当である

本件は、過去に児童買春により逮捕され罰金刑を受けた人物Aが、インターネット検索サービスの事業者に対し、自身の逮捕歴に関する情報(逮捕事実を掲載するウェブサイトのURLや検索結果の抜粋)を検索結果から削除するよう求めた事案です。

最高裁は、「個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益は、法的保護の対象となる」としました。
そして、逮捕歴というプライバシーに関わる事実が含まれているものの、それを検索結果から削除するかどうかは、社会的な影響や公益性とのバランスによって決定されるとされました。したがって、一律に削除請求が認められるわけではなく、具体的な事情に応じて個別に判断されることになります。

この点は、判例のポイントをまとめて頭に入れておく必要があるので、個別指導で解説します。

2.検索結果として提供される情報は、プログラムによって自動的に収集・整理・提供されるものにすぎず、検索結果の提供は、検索事業者自身による表現行為とはいえない。

2・・・妥当でない

最高裁は、「検索結果の提供は、検索事業者自身による表現行為とはいえない」とする見解を否定しました。つまり、検索結果の提供は単なる自動処理ではなく、検索事業者が情報の提供に関与している以上、一定の表現行為としての性質を持つと判断したのです。

よって、「検索結果の提供は検索事業者自身による表現行為とはいえない」という考え方は妥当ではありません。検索事業者は、検索結果の表示について一定の方針を定め、それに基づくアルゴリズムを設計している以上、その提供行為には表現の自由に関する側面があると考えられます。

この点も細かい解説が必要なので、個別指導で解説します。

3.検索事業者による検索結果の提供は、公衆の情報発信や情報の入手を支援するものとして、インターネット上の情報流通の基盤としての役割を果たしている。

3・・・妥当である

最高裁は、検索事業者の役割について以下の点を確認しました。

  • 検索エンジンは、単にウェブサイトの情報を自動的に整理しているだけではなく、公衆が情報を発信・取得するための手段を提供するものである。
  • そのため、検索事業者の活動は、インターネット上の情報流通にとって重要な基盤となっている
  • したがって、検索結果の削除請求が認められる場合については、プライバシー保護と情報流通の公益性のバランスを慎重に判断すべきである。

最高裁の見解に基づけば、「検索事業者による検索結果の提供は、公衆の情報発信や情報の入手を支援し、インターネット上の情報流通の基盤としての役割を果たしている」とする考え方は妥当であるといえます。

本肢は周辺知識も含めて頭に入れておく必要があるので、個別指導で解説します。

4.当該事実を公表されない法的利益と、当該情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量した結果、前者が優越することが明らかな場合には、検索事業者に対してURL等の情報を当該検索結果から削除することを求めることができる。

4・・・妥当である

最高裁は、検索事業者が提供する検索結果の削除請求の可否について、以下の諸要素を比較衡量して判断すべきであると述べています。

  • 当該事実の性質および内容
    → 逮捕歴のような個人的な情報は、プライバシーに属する事実として慎重に取り扱う必要があります。
  • 当該URL等情報が提供されることによって、その者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲と被る具体的被害の程度
    → 検索結果の提供が、対象者の社会生活や職業にどの程度影響を及ぼすかが考慮されます。
  • その者の社会的地位や影響力
    → 公人(政治家や芸能人など)の場合、公益性が認められやすく、削除請求が認められにくい傾向にあります。
  • 記事等の目的や意義
    → 報道の自由や社会的関心のある事件に関する情報であるかどうかが考慮されます。
  • 記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化
    → 事件の経過時間が長くなり、社会的関心が薄れている場合、削除請求が認められやすくなります。
  • 記事等において当該事実を記載する必要性
    → 記事の内容が単なる興味本位のものである場合、削除請求が認められやすくなります。

そして、最高裁は、上記の諸要素を総合的に比較衡量した結果、「当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかである場合」には、検索事業者に対し、当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができると判断しました。

5.過去の逮捕歴がプライバシーに含まれるとしても、児童買春のように、児童への性的搾取・虐待として強い社会的非難の対象とされ、罰則で禁止されている行為は、一定の期間の経過後も公共の利害に関する事柄でありうる。

5・・・妥当である

最高裁は、本件に関して次のように判断しました。

  • 児童買春の逮捕歴はプライバシーに属する事実であるが、同時に公共の利害に関わる事項である。
  • 逮捕歴がプライバシーに属する事実であることは認めつつも、児童買春という犯罪の性質上、一定期間経過後も公共の利害に関する事柄であるといえる
  • 児童買春は社会的に強く非難される犯罪であり、罰則をもって禁止されていることを考慮すると、情報提供の公益性は依然として高い。
  • そのため、削除請求が必ずしも認められるわけではなく、ケースバイケースでの判断が必要とされた。

最高裁の見解に基づけば、「過去の逮捕歴がプライバシーに含まれるとしても、児童買春のように、児童への性的搾取・虐待として強い社会的非難の対象とされ、罰則で禁止されている行為は、一定の期間の経過後も公共の利害に関する事柄でありうる」とする考え方は妥当であるといえます。

本肢は周辺知識も含めて頭に入れておく必要があるので、個別指導で解説します。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

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