匿名組合における匿名組合員に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 匿名組合員の出資は、営業者の財産に属する。
- 匿名組合員は、匿名組合契約に基づき営業者が負った債務について、当該匿名組合員が匿名組合の当事者であることをその債務に係る債権者が知っていたときには、当該営業者と連帯して弁済する責任を負う。
- 出資が損失によって減少したときは、その損失をてん補した後でなければ、匿名組合員は、利益の配当を請求することができない。
- 匿名組合員は、営業年度の終了時において、営業者の営業時間内に、営業者の業務および財産の状況を検査することができる。
- 匿名組合員が破産手続開始の決定を受けた場合、匿名組合契約は終了する。
【答え】:2
【解説】
1・・・正しい
匿名組合契約では、組合員(出資者)が営業者に出資し、その営業によって生じた利益の分配を受けることができます(商法535条)。
このとき、出資された財産は営業者の名義で管理され、営業者の財産に組み込まれます(商法536条1項)。つまり、出資者が出したお金は営業者の資産として扱われるのがポイントです。
なお、匿名組合契約は、主に「投資型クラウドファンディング」や「飲食店出資」などのスキームで活用されており、出資者は営業に直接関与せず、損益分配のみを受けるという特徴があります。
2・・・誤り
匿名組合員は、営業者が負った債務について第三者に対して責任を負いません。たとえその第三者(債権者)が匿名組合員の存在を知っていたとしても同様です。
これは、商法536条4項により、匿名組合員は営業者の行為について、第三者に対して権利・義務を持たないとされているためです。
つまり、匿名組合員はあくまで出資だけを行う立場で、営業の責任はすべて営業者が負うのが原則です。
また、匿名組合員は出資した額を限度にリスクを負う有限責任の立場であり、連帯責任を負うことはありません。
3・・・正しい
商法538条により、出資が損失によって目減りしている場合、その損失が埋め合わされるまでは、匿名組合員は利益の配当を請求できません。
ここでいう「損失のてん補」とは、匿名組合員がさらに出資しなければならないという意味ではありません。あくまで、営業者の営業活動によって損失が回復(利益で穴埋め)されることを指します。
つまり、営業によって一定の利益が出ても、それがまだ過去の損失をカバーしきれていなければ、匿名組合員に配当はされないのです。
これは、匿名組合の性質上、損益は出資に反映されるという考え方に基づいています。
4・・・正しい
商法539条により、匿名組合員は営業年度の終了時に、営業者の営業時間内に限り、業務や財産の状況を検査することが認められています。
これは、匿名組合員が出資者としての立場から、営業の実態や財務の健全性を確認できるようにするための権利です。
ただし注意点として、商法536条3項にあるように、匿名組合員は営業そのものに関与することはできません。つまり、経営判断や業務執行に口を出すことはできず、あくまでも検査という限定的な範囲で情報を得ることができるだけです。
このように、匿名組合員には「経営に関与しない代わりに、最低限のチェックはできる」というバランスがとられています。
5・・・正しい
商法541条3号により、営業者または匿名組合員が破産手続開始の決定を受けたときは、匿名組合契約は当然に終了します。
匿名組合契約は、営業者と匿名組合員との信頼関係に基づいた契約であり、出資や損益分配など継続的な関係が前提となっています。そのため、どちらかが破産することで契約関係の継続が困難になると判断され、契約終了となるのです。
なお、匿名組合契約が終了する事由としては、以下のようなものがあります(商法541条):
匿名組合の目的である事業が成功した、または成功が不可能になったとき
営業者が死亡した、または後見開始の審判を受けたとき
営業者または匿名組合員が破産手続開始の決定を受けたとき
このように、当事者の事情や事業の状況に応じて契約は終了する仕組みになっています。
令和6年(2024年)過去問
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法 |
問3 | 憲法 | 問33 | 民法 |
問4 | 憲法 | 問34 | 民法 |
問5 | 憲法 | 問35 | 民法 |
問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 多肢選択 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 多肢選択 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 多肢選択 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行服法・行訴法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 行政書士法 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 住民基本台帳法 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識 |
問26 | 公文書管理法 | 問56 | 基礎知識 |
問27 | 民法 | 問57 | 個人情報保護法 |
問28 | 民法 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
