令和7年度の行政書士試験対策の個別指導開講

令和6年・2024|問28|民法

無効および取消しに関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 贈与契約が無効であるにもかかわらず、既に贈与者の履行が完了している場合、受贈者は受け取った目的物を贈与者に返還しなければならず、それが滅失して返還できないときは、贈与契約が無効であることを知らなかったとしても、その目的物の現存利益の返還では足りない。
  2. 売買契約が無効であるにもかかわらず、既に当事者双方の債務の履行が完了している場合、売主は受け取った金銭を善意で費消していたとしても、その全額を返還しなければならない。
  3. 秘密証書遺言は、法が定める方式に欠けるものであるときは無効であるが、それが自筆証書による遺言の方式を具備しているときは、自筆証書遺言としてその効力を有する。
  4. 未成年者が親権者の同意を得ずに締結した契約について、未成年者本人が、制限行為能力を理由としてこれを取り消す場合、親権者の同意を得る必要はない。
  5. 取り消すことができる契約につき、取消権を有する当事者が、追認をすることができる時以後に、異議をとどめずにその履行を請求した場合、これにより同人は取消権を失う。

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【答え】:1
【解説】
1.贈与契約が無効であるにもかかわらず、既に贈与者の履行が完了している場合、受贈者は受け取った目的物を贈与者に返還しなければならず、それが滅失して返還できないときは、贈与契約が無効であることを知らなかったとしても、その目的物の現存利益の返還では足りない。

1・・・誤り

贈与契約のような無償行為が無効である場合、民法121条の2第2項が適用されます。

無効な無償行為に基づいて給付を受けた者が、その無効を知らなかった(善意)ときは、現に利益を受けている限度でのみ返還義務を負う。

つまり、受贈者が贈与契約が無効であることを知らず、善意であった場合には、目的物が滅失していたり、すでに使ってしまって手元に残っていなければ、現存利益がない部分についての返還義務は免れることになります。

この規定は、「善意の受贈者に過度な不利益を与えない」ことを目的としており、現に得ている利益の範囲で返還すれば足りるという立場です。
したがって、記述のように「現存利益の返還では足りない」とするのは誤りです。

2.売買契約が無効であるにもかかわらず、既に当事者双方の債務の履行が完了している場合、売主は受け取った金銭を善意で費消していたとしても、その全額を返還しなければならない。

2・・・正しい

売買契約は有償契約であるため、民法121条の2第1項が適用されます。

無効な法律行為に基づいて給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。

つまり、契約が無効であった場合、たとえ受領した者(ここでは売主)がその給付を善意で使ってしまっていたとしても、その金銭は全額返還しなければならないということになります。

これは、有償契約では当事者双方が対価的な給付を受けているため、不当利得が明確に生じるからであり、受領者が善意であったかどうかは返還義務の有無に影響しません。

なお、買主側が目的物をすでに消費または滅失させていた場合には、その価値に見合う金銭の支払義務(価額償還義務)を負うことになります。

3.秘密証書遺言は、法が定める方式に欠けるものであるときは無効であるが、それが自筆証書による遺言の方式を具備しているときは、自筆証書遺言としてその効力を有する。

3・・・正しい

秘密証書遺言は、民法970条に定められた厳格な方式に従わなければなりません。
たとえば封印や、公証人・証人の立会い、封紙への記載といった手続きが必要です。

しかし、仮に秘密証書遺言としての方式(民法970条)を欠いていた場合であっても、その遺言書が自筆証書遺言の方式(民法968条)を満たしていれば、自筆証書遺言として有効になります(民法971条)。

✅ 具体的には

  • 全文・日付・氏名を遺言者が自書している
  • 押印がある

といった自筆証書遺言としての基本的要件を満たしていれば秘密証書遺言としては無効でも、自筆証書遺言として有効になるというわけです。

これは、遺言者の最終意思をできる限り尊重し、形式的な不備だけで無効とするのを避けるための規定です。

4.未成年者が親権者の同意を得ずに締結した契約について、未成年者本人が、制限行為能力を理由としてこれを取り消す場合、親権者の同意を得る必要はない。

4・・・正しい

未成年者が、法定代理人(=親権者)の同意を得ないで契約をした場合、その契約は取り消すことができます(民法5条2項)。

この取消権は、法定代理人だけでなく、未成年者本人も行使できます(民法120条1項)。

そして、取り消すという行為自体は、もともとの契約をなかったことにする行為(=未成年者を保護するための制度)なので、取消しの際に親権者の同意は必要ありません。

つまり、「未成年者が同意を得ないで契約してしまった。でもそれを本人が取り消したい」っといった場合、本人の意思だけで有効に取り消せるのです。

5.取り消すことができる契約につき、取消権を有する当事者が、追認をすることができる時以後に、異議をとどめずにその履行を請求した場合、これにより同人は取消権を失う。

5・・・正しい

取り消すことができる契約は、追認されると、もはや取り消すことはできなくなります(民法122条)。

そして、追認には「明示の追認」だけでなく、行為や態度から黙示的に追認とみなされる場合(法定追認)もあります。
この「法定追認」にあたる行為の一つが、異議をとどめずに履行を請求することです(民法125条2号)。

民法125条
次に掲げる事実があったときは、取り消すことができる行為を追認したものとみなす。
(中略)
二 追認をすることができる時以後に、異議をとどめずにその履行を請求したとき。

つまり、取消権者が「この契約には取消事由がある」とわかっていながら、それに対して何の異議も出さずに履行を求めた場合、追認したものとみなされ取消権を失うことになります。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

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