令和7年度の行政書士試験対策の個別指導開講

令和6年・2024|問27|民法

失踪の宣告に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 不在者の生死が7年間明らかでない場合において、利害関係人の請求により家庭裁判所が失踪の宣告をしたときは、失踪の宣告を受けた者は、7年間の期間が満了した時に、死亡したものとみなされる。
  2. 失踪の宣告を受けた者が実際には生存しており、不法行為により身体的被害を受けていたとしても、失踪の宣告が取り消されなければ、損害賠償請求権は発生しない。
  3. 失踪の宣告の取消しは、必ず本人の請求によらなければならない。
  4. 失踪の宣告によって失踪者の財産を得た者は、失踪の宣告が取り消されたときは、その受けた利益の全部を返還しなければならない。
  5. 失踪の宣告によって失踪者の所有する甲土地を相続した者が、甲土地を第三者に売却した後に、失踪者の生存が判明し、この者の失踪の宣告が取り消された。この場合において、相続人が失踪者の生存について善意であったときは、第三者が悪意であっても、甲土地の売買契約による所有権移転の効果に影響しない。

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【答え】:1
【解説】
1.不在者の生死が7年間明らかでない場合において、利害関係人の請求により家庭裁判所が失踪の宣告をしたときは、失踪の宣告を受けた者は、7年間の期間が満了した時に、死亡したものとみなされる。

1・・・妥当である

不在者の生死が 7年間不明 な場合、利害関係人(家族など)は、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることができます(民法30条1項)。

失踪宣告には2種類あります。

普通失踪

長期間(7年)生死がわからない場合
7年が満了した時に死亡したとみなされます。

特別失踪

戦争や災害など、生死に関わる危険(危難)に遭遇した場合。
→ その危難が去った時に死亡とみなされます。

この問題は①の「普通失踪」に関するものであり、内容は正しいです(民法31条)。

2.失踪の宣告を受けた者が実際には生存しており、不法行為により身体的被害を受けていたとしても、失踪の宣告が取り消されなければ、損害賠償請求権は発生しない。

2・・・妥当でない

失踪の宣告を受けた者は、法律上「死亡したもの」とみなされます(民法31条)。
しかし、この「みなし死亡」は、相続など法律関係の清算を目的とした擬制にすぎず、失踪者の権利能力そのものを否定するものではありません。

したがって、失踪宣告後に本人が実際に生存していたことが判明し、たとえば第三者から不法行為による身体的被害を受けていた場合には、たとえ失踪の宣告がまだ取り消されていなかったとしても、本人は損害賠償請求権を有すると解されます。

つまり、損害賠償請求権の発生は、「失踪の宣告の有無」ではなく実際に生存しており、被害を受けた事実に基づいて判断されるべきです。

3.失踪の宣告の取消しは、必ず本人の請求によらなければならない。

3・・・妥当でない

失踪宣告の取消しは、必ずしも本人の請求に限られるものではなく、利害関係人も請求することができます(民法32条1項)。

つまり、たとえば失踪者の配偶者や相続人、関係する契約の相手方など、利害関係を有する第三者が、失踪者の生存または実際の死亡時期が失踪宣告によるみなし死亡時期と異なることを証明すれば、家庭裁判所に対して取消しの請求を行うことが可能です。

したがって、「必ず本人の請求によらなければならない」というのは誤りです。

4.失踪の宣告によって失踪者の財産を得た者は、失踪の宣告が取り消されたときは、その受けた利益の全部を返還しなければならない。

4・・・妥当でない

失踪宣告により財産を取得した者は、その後に失踪宣告が取り消されると、原則としてその財産を返還する義務があります(民法32条2項)。
しかし、返還義務は 「現に利益を受けている限度」 にとどまります。つまり、受けた利益のすべてを返還しなければならないわけではありません

この「現に利益を受けている限度」とは、たとえば受け取った財産がまだ手元にある、または形を変えて残っている場合などを指し、既に消費してしまっている部分には返還義務が生じないこともあります。

判例の例

  • 遊興費として消費した金銭:返還義務なし(大判昭和14年10月26日)
  • 生活費に充てた場合:現存利益ありとされ返還義務がある(大判昭和8年2月23日)
    → これは、「生活費は通常支出すべき費用であり、他の財産を節約できた」という理屈によるもの。

このように、返還義務は「形式的に受け取った財産全額」ではなく、「実質的に残っている利益の範囲」で判断されるため、「全部を返還しなければならない」という記述は妥当ではありません。

5.失踪の宣告によって失踪者の所有する甲土地を相続した者が、甲土地を第三者に売却した後に、失踪者の生存が判明し、この者の失踪の宣告が取り消された。この場合において、相続人が失踪者の生存について善意であったときは、第三者が悪意であっても、甲土地の売買契約による所有権移転の効果に影響しない。

5・・・妥当でない

民法32条1項では、失踪の宣告が取り消された場合であっても、その取消し前に善意でした行為の効力には影響しないとされています。
しかしこの「善意でした行為」として保護されるには、当事者双方(=失踪者から財産を得た者と、譲り受けた第三者)が善意であることが必要です。

したがって、

  • 相続人が失踪者の生存について善意でも、
  • 売却先の第三者が悪意(=失踪者が生きていることを知っていた)であれば、

その所有権移転の効果は否定される可能性があり、失踪者の本来の所有権が回復することになります。

このように、「第三者が悪意であっても効力に影響しない」とするのは誤りであり、両当事者が善意であることが保護の要件です(大判昭和13年2月7日)。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

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