公文書管理法 * について説明する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 (注) * 公文書等の管理に関する法律
- 公文書管理法に定める「行政文書」とは、同法の定める例外を除き、行政機関の職員が職務上作成しまたは取得した文書で、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして当該行政機関が保有しているものであるとされる。
- 公文書管理法は、行政機関の職員に対し、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き文書を作成しなければならないという文書作成義務を定め、違反した職員に対する罰則を定めている。
- 行政機関の職員が行政文書を作成・取得したときには、当該行政機関の長は、政令で定めるところにより、当該行政文書について分類し、名称を付するとともに、保存期間および保存期間の満了する日を設定しなければならない。
- 行政機関の長は、行政文書の管理が公文書管理法の規定に基づき適正に行われることを確保するため、行政文書の管理に関する定め(行政文書管理規則)を設けなければならない。
- 行政機関の長は、行政文書ファイル管理簿の記載状況その他の行政文書の管理の状況について、毎年度、内閣総理大臣に報告しなければならない。
【答え】:2
【解説】
1・・・正しい
本肢は正しいです。
公文書管理法第2条第4項では、「行政文書」について、以下のように定義されています。
つまり、以下の3つの条件を満たすものが「行政文書」です。
- 職務上作成・取得した文書であること
- 組織として利用する目的で作成・取得されたこと
- 行政機関が実際に保有していること
【ただし、行政文書に該当しないもの】
次のようなものは、たとえ行政機関が保有していても「行政文書」には該当しません(除外されます)。
① 不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの
たとえば以下のような出版物です。
- 官報
- 白書
- 新聞
- 雑誌
- 書籍 など
これらは広く一般に販売・配布されるため、行政文書には含まれません。
② 特定歴史公文書等
国立公文書館などで保存・管理される「特定歴史公文書等」は、既に歴史資料として扱われるものであり、現行の行政活動とは切り離されています。
③ 歴史的・文化的・学術的資料として特別に管理されているもの
政令で定める研究所などの施設で、特別な管理下に置かれている資料は、行政文書にはあたらないとされています。
つまり、行政文書とは、行政機関の職員が職務上作成・取得し、組織的に用いるために保有している文書のことです。
ただし、一般向けに発行される出版物や、歴史的・文化的資料などは除かれます。
2・・・誤り
本肢は誤りです。
確かに、公文書管理法では、行政機関の職員に対して文書作成義務があると定められています。しかし、違反した場合の罰則は定められていません。
公文書管理法第4条第1項では、次のように定められています。
当該行政機関における意思決定の過程および事務・事業の実績を
合理的に跡付け、または検証することができるように文書を作成しなければならない。
つまり、単なる事務記録ではなく、意思決定や実績の記録性・検証可能性が求められているという点が重要です。
【文書作成義務の例外(除外される事項)】
以下のような事項については、文書作成義務の対象外となります。
- 法令の制定・改廃およびその経緯
- 閣議、省議、各種会議の決定または了解とその経緯
- 複数の行政機関による申合せや、基準の設定等とその経緯
- 個人・法人の権利義務に関する得喪とその経緯
- 職員の人事に関する事項
これらは政策形成や内部運用に関するもので、すべてについて文書を義務づけると行政運営に過度な負担となるため、除外されています。
3・・・正しい
この記述は正しいです。
公文書管理法第5条第1項では、行政文書の作成・取得後の適切な管理のため、行政機関の長に次のような義務が課されています。
この条文の趣旨は、行政文書を後から正確に探し出し、適切に保存・廃棄できるようにするためのルールを定めている点にあります。
4・・・正しい
公文書管理法第10条第1項では、行政機関の長に対して、行政文書の管理を適正に行うためのルール(=行政文書管理規則)を策定する義務が課されています。
各行政機関の長は、行政文書の管理が
第4条(文書作成義務)から第9条(歴史的文書の移管等)までの規定に基づき
適正に行われることを確保するため、行政文書の管理に関する定め(行政文書管理規則)を設けなければならない。
よって、本肢は正しいです。
✅「行政文書管理規則」とは?
これは、各行政機関ごとに作成する内部ルールです。
つまり、公文書管理法の内容を踏まえて、各機関が独自に運用できるように整備したルールのことです。
✅なぜ必要なのか?
行政文書の管理は、公文書の信頼性・保存性・検証可能性を確保するために重要です。
そのため、各機関の実情に即した明確なルールづくりが求められます。
5・・・正しい
公文書管理法第9条第1項では、行政機関の長に対し、行政文書の管理状況に関する年次報告義務が定められています。
各行政機関の長は、
行政文書ファイル管理簿の記載状況その他の行政文書の管理の状況について、
毎年度、内閣総理大臣に報告しなければならない。
よって本肢は正しいです。
✅「行政文書ファイル管理簿」とは?
これは、各行政機関が保有する行政文書ファイルの一覧表のようなもので、
- 文書の名称
- 作成年月日
- 保存期間
- 管理部署
などの情報が記録されています。
これを適切に記載・更新しているかどうかが、行政文書管理の透明性を担保する鍵となります。
✅「その他の管理の状況」とは?
- 文書の分類・保存・廃棄の手続きが適切に行われているか
- 保存期間の設定が正確か
- 移管や廃棄がルールに従って処理されているか
などを指します。
✅ なぜ内閣総理大臣に報告?
報告先が「内閣総理大臣」であるのは、政府全体としての文書管理の統一性と透明性を保つためです。
内閣総理大臣はこの情報をもとに、行政文書管理の実態を把握し、必要に応じて改善措置をとることができます。
令和6年(2024年)過去問
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法 |
問3 | 憲法 | 問33 | 民法 |
問4 | 憲法 | 問34 | 民法 |
問5 | 憲法 | 問35 | 民法 |
問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 多肢選択 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 多肢選択 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 多肢選択 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行服法・行訴法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 行政書士法 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 住民基本台帳法 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識 |
問26 | 公文書管理法 | 問56 | 基礎知識 |
問27 | 民法 | 問57 | 個人情報保護法 |
問28 | 民法 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
