普通地方公共団体の条例または規則に関する次の記述のうち、地方自治法の定めに照らし、妥当なものはどれか。
- 普通地方公共団体の長が規則を定めるのは、法律または条例による個別の委任がある場合に限られる。
- 普通地方公共団体は法令に違反しない限りにおいて条例を定めることができるが、条例において罰則を定めるためには、その旨を委任する個別の法令の定めが必要である。
- 普通地方公共団体は、特定の者のためにする事務につき手数料を徴収することができるが、この手数料については、法律またはこれに基づく政令に定めるものを除いて、長の定める規則によらなければならない。
- 普通地方公共団体の委員会は、個別の法律の定めるところにより、法令等に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を定めることができる。
- 普通地方公共団体は条例で罰則を設けることができるが、その内容は禁錮、罰金、科料などの行政刑罰に限られ、行政上の秩序罰である過料については、長が定める規則によらなければならない。
【答え】:4
【解説】
1・・・妥当でない
この選択肢は、「普通地方公共団体の長が規則を定めるには、法律または条例による個別の委任が必要だ」としていますが、それは誤りです。
地方自治法第15条第1項では、次のように定められています。
つまり、法律や条例の個別の委任がなくても、その長の権限に属する事務については、法令に反しない範囲で自由に規則を定めることができるのです。
2・・・妥当でない
確かに、普通地方公共団体は法令に違反しない限りにおいて条例を制定することができます(地方自治法第14条第1項)。
しかし、この選択肢の後半「罰則を定めるには個別の法令の委任が必要である」という部分が誤りです。
【罰則付き条例は、個別の委任がなくてもOK】
地方自治法第14条第3項では、次のように定められています。
普通地方公共団体は、法令に特別の定めがある場合を除いて、その条例中に、違反者に対して一定の刑罰または過料を科す旨の規定を設けることができる。
つまり、個別の法令による委任がなくても、条例の中に罰則を設けることが可能です(包括的授権)。
【設定できる罰則の範囲】
条例により科すことができる刑罰・過料の範囲は、以下のとおり上限が定められています(地方自治法14条3項)。
- 2年以下の懲役または禁錮
- 100万円以下の罰金
- 拘留
- 科料
- 没収
- 5万円以下の過料
※ 刑の内容の詳細(例:科料は1000円以上1万円未満など)は刑法等に規定があります。
3・・・妥当でない
選択肢の前半部分「普通地方公共団体は、特定の者のためにする事務について手数料を徴収することができる」という部分は正しいです。
しかし、後半部分「長の定める規則によらなければならない」は誤りであり、正しくは「条例」によって定めなければなりません。
地方自治法第227条
普通地方公共団体は、その事務で特定の者のためにするものについて、手数料を徴収することができる。
地方自治法第228条第1項
分担金、使用料、加入金及び手数料に関する事項については、条例でこれを定めなければならない。
つまり、手数料の徴収については、個別の規則ではなく、議会の議決を経た条例による定めが必要です。
【特例:政令による標準手数料】
なお、次のような特例もあります。
たとえば「旅券事務」など、全国一律の取扱いが求められるケースが該当します。
【「特定の者のためにする事務」とは?】
具体例としては次のような事務が該当します。
- 住民票・印鑑証明の交付
- 戸籍の附票の写しの交付
- 書類・公簿の閲覧
これらはすべて、申請者個人の利益のために行われる行政サービスであり、費用の一部を手数料として負担してもらうことが正当とされます。
4・・・妥当である
普通地方公共団体には、長(知事・市町村長)だけでなく、委員会形式の執行機関が設けられていることがあります。たとえば、教育委員会、選挙管理委員会、監査委員などがそれに該当します。
こうした委員会は、独立した合議制の機関として、地方自治法等の定めに基づき、一定の事務を執行します。
地方自治法第138条の4第2項では、次のように規定されています。
この規定により、委員会も法律の委任を受けて、自己の権限に関する範囲で規則を定めることができるのです。
ただし、「法令等に違反しないこと」が前提です。
5・・・妥当でない
この選択肢の誤りは、「過料(行政上の秩序罰)は規則でしか定められない」としている点にあります。
実際には、過料は条例にも規則にも規定することができます。
条例による罰則(地方自治法第14条第3項)
普通地方公共団体は、法令に特別の定めがある場合を除き、次のような刑罰・過料を条例に規定できます。
- 2年以下の懲役または禁錮
- 100万円以下の罰金
- 拘留
- 科料
- 没収
- 5万円以下の過料
つまり、条例においても過料を含めた罰則規定が可能です。
普通地方公共団体の長は、法令に特別の定めがある場合を除き、次のように規定できます。
規則に違反した者に対して、5万円以下の過料を科すことができる。
つまり、長の定める規則においても過料の規定が可能です。
令和6年(2024年)過去問
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法 |
問3 | 憲法 | 問33 | 民法 |
問4 | 憲法 | 問34 | 民法 |
問5 | 憲法 | 問35 | 民法 |
問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 多肢選択 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 多肢選択 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 多肢選択 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行服法・行訴法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 行政書士法 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 住民基本台帳法 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識 |
問26 | 公文書管理法 | 問56 | 基礎知識 |
問27 | 民法 | 問57 | 個人情報保護法 |
問28 | 民法 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
