普通地方公共団体の事務に関する次の記述のうち、地方自治法の定めに照らし、妥当なものはどれか。
- 普通地方公共団体が処理する事務には、地域における事務と、その他の事務で法律またはこれに基づく政令により処理することとされるものとがある。
- 都道府県の法定受託事務とは、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律またはこれに基づく政令に特に定めるものであり、都道府県知事が国の機関として処理することとされている。
- 市町村の法定受託事務とは、国または都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律またはこれに基づく政令に特に定めるものであるから、これにつき市町村が条例を定めることはできない。
- 法定受託事務は、普通地方公共団体が当該団体自身の事務として処理するものであるから、地方自治法上の自治事務に含まれる。
- 地方自治法は、かつての同法が定めていた機関委任事務制度のような仕組みを定めていないため、現行法の下で普通地方公共団体が処理する事務は、その全てが自治事務である。
【答え】:1
【解説】
1・・・妥当である
地方自治法第2条第2項:
普通地方公共団体は、地域における事務及び法令により処理することとされる事務を処理する。
つまり、本肢は、地方公共団体の事務の分類と根拠条文に即した正しい内容であるため、妥当です。
普通地方公共団体(都道府県や市町村など)が処理する事務には、大きく分けて以下の2種類があります。
① 自治事務(=地域における事務)
これは、地域の住民の福祉の増進を目的として、地方公共団体が自主的・主体的に行う事務のことです。たとえば、道路や公園の整備、保育所の運営など、地域のニーズに応じて行う日常的な行政サービスが該当します。
② 法定受託事務(=その他の事務で法律や政令で定められたもの)
これは、国が本来行うべき事務を、法律や政令に基づいて地方公共団体に委託している事務のことです。地方公共団体は、これらを国の代わりに処理する義務があります。
2・・・妥当でない
法定受託事務は、国の事務を地方公共団体が法令に基づいて処理するものです。
しかし、それを国の「機関」として処理するわけではありません。
よって、「都道府県知事が国の機関として処理することとされている」という記述は誤りであり、妥当でないです。
法定受託事務とは、本来は国や都道府県などが行うべき事務を、法律や政令によって地方公共団体に処理させるものです。
地方公共団体が国などの機関として処理するのではなく、「あくまでも地方公共団体の事務として処理する」ことになります。
本肢は「都道府県知事が国の機関として処理することとされている」この部分が誤りです。
都道府県の法定受託事務であっても、都道府県知事が“国の機関”として処理するわけではありません。
地方自治法においても、そのような規定はありません。
■ 法定受託事務の分類(地方自治法第2条第9項)
法定受託事務は、以下のように大きく2つに分類されます。
- 第一号法定受託事務
国の役割に関係する事務で、都道府県や市町村が処理するもの。
例:旅券(パスポート)の交付事務など。 - 第二号法定受託事務
都道府県の役割に関係する事務で、市町村が処理するもの。
例:自動車の登録申請に関する事務など。
地方自治法第2条第9項:
この法律において「法定受託事務」とは、次に掲げる事務をいう。
一 法律又はこれに基づく政令により都道府県、市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第一号法定受託事務」という。)
二 法律又はこれに基づく政令により市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、都道府県が本来果たすべき役割に係るものであつて、都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第二号法定受託事務」という。)
※都道府県知事が「国の機関」として行うとは規定されていない。
3・・・妥当でない
市町村が行う法定受託事務には、以下のようなものがあります。
第二号法定受託事務(地方自治法2条9項2号)
法律またはこれに基づく政令により、市町村または特別区が処理することとされる事務のうち、都道府県が本来果たすべき役割に関係し、適正な処理を特に確保する必要があるもの
例:自動車の車庫証明事務などがこれに該当します。
本肢は、「これにつき市町村が条例を定めることはできない」という部分が誤りです。
たとえ法定受託事務であっても、法令に違反しない限り、市町村はその事務に関して条例を制定することができます。
これは、地方自治法が保障する自治権の一部として認められています。
4・・・妥当でない
問題文では、「法定受託事務は…地方自治法上の自治事務に含まれる」
とありますが、これは明確な誤りです。
地方自治法第2条第8項では、自治事務について「法定受託事務以外の事務」と定義しており、法定受託事務は含まれないと明記されています。
この法律において「自治事務」とは、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものをいう。
◆ ① 自治事務(地方自治法第2条第8項)
地方公共団体が自主的・主体的に行う事務。
国の関与が少なく、地域の実情に応じて行われる事務です。
例:道路の維持管理、ゴミ処理、保育所の設置など。
※条文においては、「法定受託事務以外の事務」を指します。つまり、法定受託事務は自治事務に含まれません。
◆ ② 法定受託事務(地方自治法第2条第9項)
国または都道府県が本来行うべき事務を、法律や政令に基づいて地方公共団体に処理させるもの。
地方公共団体が処理しますが、処理方法などについて国からの関与が強いのが特徴です。
- 第一号法定受託事務:国の役割に関係(例:旅券の交付)
- 第二号法定受託事務:都道府県の役割に関係(例:車庫証明)
5・・・妥当でない
かつての地方自治法には、「機関委任事務」という制度が存在していました。
これは、国の事務を地方公共団体の長(知事や市町村長など)に国の「機関」として処理させる仕組みです。
しかし、この制度は中央集権的であり、「地方自治の本旨」に反するとの批判が強かったため、
1999年の地方分権一括法の施行により、機関委任事務制度は廃止されました。
■ 現行制度:事務の二元分類
機関委任事務制度の廃止後、地方公共団体が処理する事務は「自治事務」と「法定受託事務」の2つの分類に再編されました(地方自治法第2条第8項・第9項)。
問題文では、「普通地方公共団体が処理する事務は、その全てが自治事務である」
と述べていますが、これは誤りです。
確かに、機関委任事務制度は廃止されましたが、その代わりに法定受託事務という制度が導入され、現在も地方公共団体が処理しています。
したがって、地方公共団体が処理する事務はすべてが自治事務ではありません。
令和6年(2024年)過去問
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法 |
問3 | 憲法 | 問33 | 民法 |
問4 | 憲法 | 問34 | 民法 |
問5 | 憲法 | 問35 | 民法 |
問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 多肢選択 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 多肢選択 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 多肢選択 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行服法・行訴法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 行政書士法 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 住民基本台帳法 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識 |
問26 | 公文書管理法 | 問56 | 基礎知識 |
問27 | 民法 | 問57 | 個人情報保護法 |
問28 | 民法 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
