令和7年度の行政書士試験対策の個別指導開講

令和6年・2024|問2|基礎知識

訴訟の手続の原則に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。

  1. 民事訴訟手続において、裁判長は、口頭弁論の期日または期日外に、訴訟関係を明確にするため、事実上および法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、または立証を促すことができる。
  2. 刑事訴訟手続において、検察官は、犯人の性格、年齢および境遇、犯罪の軽重および情状ならびに犯罪後の状況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
  3. 非訟事件手続において、裁判所は、利害関係者の申出により非公開が相当と認められる場合を除き、その手続を公開しなければならない。
  4. 民事訴訟手続において、裁判所は、裁判をするにあたり、口頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。
  5. 刑事訴訟手続において、検察官は、起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添付し、またはその内容を引用してはならない。

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【答え】:3
【解説】
1.民事訴訟手続において、裁判長は、口頭弁論の期日または期日外に、訴訟関係を明確にするため、事実上および法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、または立証を促すことができる。

1・・・妥当である

裁判長は、口頭弁論の期日または期日外において、訴訟の進行を適切に導くために、当事者に対して事実上および法律上の事項について問いを発したり立証を促したりすることができます。これは、民事訴訟法149条1項に基づくものであり、訴訟関係を明確にするために認められています。

このような裁判官の権限は「釈明権」と呼ばれ、当事者が主張や立証を適切に行えるようにするためのものです。裁判官は公平な立場を保ちつつ、必要に応じてこの権限を行使し、裁判の適正な進行を図ります。

2.刑事訴訟手続において、検察官は、犯人の性格、年齢および境遇、犯罪の軽重および情状ならびに犯罪後の状況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

2・・・妥当である

検察官は、犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重や情状、さらには犯罪後の状況を考慮し、訴追を必要としないと判断した場合、公訴を提起しないことができます。これは、刑事訴訟法248条に規定されています。

刑事訴訟法では、検察官に公訴を提起するかどうかについての裁量を認めています。このような制度を起訴便宜主義といい、検察官が社会的な影響や被告人の更生可能性などを総合的に判断した上で、公訴提起の必要性を決定できる仕組みとなっています。

3.非訟事件手続において、裁判所は、利害関係者の申出により非公開が相当と認められる場合を除き、その手続を公開しなければならない。

3・・・妥当でない

非訟事件の手続は、原則として公開されません。ただし、裁判所は、必要に応じて相当と認める者の傍聴を許可することができます。これは、非訟事件手続法30条に規定されています。

一方、民事訴訟に関しては、刑事制裁を科する作用とは異なり、憲法82条や憲法32条に定められた「公開の法廷における対審および判決」の要件には該当しません。この点について、最判昭和41年12月27日は「純然たる訴訟事件としての性質の認められる刑事制裁を科する作用とは異なる」と判示しています。

したがって、「非訟事件手続は公開しなければならない」という記述は誤りであり、原則として非公開であることに注意が必要です。

4.民事訴訟手続において、裁判所は、裁判をするにあたり、口頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。

4・・・妥当である

裁判所は、判決をするにあたり、口頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果をしん酌(しんしゃく)し、自由な心証に基づいて、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断します。これは民事訴訟法247条に規定されています。

※斟酌(しんしゃく)とは、相手の事情や心情をくみとって、それに応じて手加減したり、考慮したりすること

この原則を自由心証主義といいます。自由心証主義のもとでは、裁判所は提出された証拠の証拠力をどの程度認めるかについて、法が定めた特別な制約がない限り、自由に判断することができます。つまり、特定の証拠に対して機械的な評価基準があるわけではなく、裁判官の合理的な判断によって証拠の信用性や証明力が決定されるのです。

5.刑事訴訟手続において、検察官は、起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添付し、またはその内容を引用してはならない。

5・・・妥当である

検察官は、起訴状に裁判官に事件について予断を生じさせるおそれのある書類その他の物を添付したり、その内容を引用したりしてはならないとされています。これは、刑事訴訟法256条6項に規定されています。

これは、公訴の提起が裁判官に偏った先入観を与えないようにするための制度です。そのため、起訴状は1枚のみ提出され、それ以外の証拠資料などは起訴状には含めません。このような方式を起訴状一本主義といいます。

起訴状一本主義は、裁判官が偏りのない公正な判断を下すことを確保し、被告人の防御権を保障するために設けられています。この制度により、裁判はあくまで公判の場で提出された証拠に基づいて行われることが確保されます。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

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