令和7年度の行政書士試験対策の個別指導開講

令和6年・2024|問16|行審法・行訴法

行政不服審査法(以下「行審法」という)と行政事件訴訟法(以下「行訴法」という)との違いに関する次のア~オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。

ア.行訴法は、処分取消訴訟につき、出訴期間の制限を規定するとともに、「ただし、正当な理由があるときは、この限りでない」という規定(以下「ただし書き」という)を置いているが、行審法は、処分についての審査請求につき、審査請求期間の制限を規定しているものの、行訴法のようなただし書きは置いていない。

イ.行審法は、行政庁が不服申立てをすることができる処分をする場合には、原則として、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすべき行政庁や不服申立てをすることができる期間を書面で教示しなければならないと規定しているが、行訴法は、取消訴訟を提起することができる処分をする場合につき、被告とすべき者や出訴期間を教示すべき旨を定めた明文の規定は置いていない。

ウ.行訴法は、判決の拘束力について、「処分または裁決を取り消す判決は、その事件について、処分または裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。」と定めているのに対し、行審法は、裁決の拘束力について、「裁決は、関係行政庁を拘束する。」と定めている。

エ.行審法は、行訴法における取消訴訟と同様、審査請求について執行停止の規定を置くとともに、執行停止の申立てまたは決定があった場合、内閣総理大臣は、審査庁に対し、異議を述べることができる旨を定めている。

オ.行訴法は、行政庁がその処分または裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟として「差止めの訴え」を設けているが、行審法は、このような処分の差止めを求める不服申立てについて明文の規定を置いていない。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・エ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:5(ウ・オが妥当)

【解説】
ア.行訴法は、処分取消訴訟につき、出訴期間の制限を規定するとともに、「ただし、正当な理由があるときは、この限りでない」という規定(以下「ただし書き」という)を置いているが、行審法は、処分についての審査請求につき、審査請求期間の制限を規定しているものの、行訴法のようなただし書きは置いていない。

ア・・・妥当でない

この記述は前半部分(行政事件訴訟法)については正しいですが、後半部分(行政不服審査法)について誤りがあります。

■ 行政事件訴訟法における出訴期間とただし書き(14条)

取消訴訟は、

原則として「処分または裁決があったことを知った日から6か月以内」に提起しなければならず(14条1項)、

また、「処分または裁決の日から1年を経過したとき」は、原則として提起することができません(14条2項)。

しかし、これらの期間については、「正当な理由があるときは、この限りでない」とされています。

→ 行訴法は、出訴期間の制限を設けつつ、正当な理由がある場合の例外(ただし書き)を明記しています。

■ 行政不服審査法における審査請求期間とただし書き(18条1項)

審査請求は、

処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内

再調査請求がされた場合は、その決定を知った日の翌日から起算して1か月以内に行わなければなりません。

ただし、「正当な理由があるときは、この限りでない」とされており、こちらにも明確に例外規定(ただし書き)が設けられています。

したがって、「行審法には行訴法のようなただし書きがない」という記述は誤りであり、
この選択肢は「妥当でない」ものです。

イ.行審法は、行政庁が不服申立てをすることができる処分をする場合には、原則として、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすべき行政庁や不服申立てをすることができる期間を書面で教示しなければならないと規定しているが、行訴法は、取消訴訟を提起することができる処分をする場合につき、被告とすべき者や出訴期間を教示すべき旨を定めた明文の規定は置いていない。

イ・・・妥当でない

この記述は前半(行政不服審査法)については正確ですが、後半(行政事件訴訟法)に誤りがあります。
行政事件訴訟法にも教示に関する明文の規定が存在するため、本肢は誤りです。

■ 行政不服審査法における教示義務(82条1項)

行政庁が、審査請求や再調査の請求、その他の不服申立てをすることができる処分を行う場合、原則として、処分の相手方に対し、以下の事項を書面で教示しなければなりません。

  • 不服申立てができる旨
  • 不服申立てをすべき行政庁
  • 不服申立てをすることができる期間

※ただし、当該処分を口頭で行う場合は、この限りではありません。

■ 行政事件訴訟法における教示義務(46条)

行政事件訴訟法にも、教示に関する明文の規定があります。

行政庁が取消訴訟を提起できる処分または裁決を書面で行う場合、その相手方に対して、次の事項を書面で教示しなければならないとされています(46条本文、1項・2項)。

  • 被告とすべき者
  • 出訴期間
  • 審査請求前置に関する定めがある場合はその旨

※こちらも、処分が口頭でされた場合には教示義務はありません。

よって、本肢は、行政不服審査法・行政事件訴訟法のどちらにも教示に関する明文の規定があるため、「行訴法には定めがない」という記述は誤りです。したがって、この選択肢は「妥当でない」ものです。

ウ.行訴法は、判決の拘束力について、「処分または裁決を取り消す判決は、その事件について、処分または裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。」と定めているのに対し、行審法は、裁決の拘束力について、「裁決は、関係行政庁を拘束する。」と定めている。

ウ・・・妥当である

この記述は、行政事件訴訟法と行政不服審査法それぞれの規定内容を正しく説明しており、妥当です。

■ 行政事件訴訟法における判決の拘束力(33条)

行政事件訴訟法33条は次のように定めています。

処分または裁決を取り消す判決は、その事件について、処分または裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。

つまり、取消判決には行政庁に対する法的拘束力が生じます。
これは、裁判所の判断に従って行政が対応すべきことを明確にする趣旨です。

■ 行政不服審査法における裁決の拘束力(52条)

行政不服審査法52条は次のように定めています。

裁決は、関係行政庁を拘束する。

この規定により、たとえば審査庁が処分を取り消す裁決をした場合には、その裁決に関係する行政庁は、その内容に従って対応しなければなりません。
→ 裁決の実効性を確保するための規定です。

よって、両法ともに、上位機関の判断が下位行政機関に対して拘束力を持つ旨を定めており、本肢は「妥当である」といえます。

エ.行審法は、行訴法における取消訴訟と同様、審査請求について執行停止の規定を置くとともに、執行停止の申立てまたは決定があった場合、内閣総理大臣は、審査庁に対し、異議を述べることができる旨を定めている。

エ・・・妥当でない

本肢は、後半部分が誤りであり、全体として妥当でないものとなります。

■ 行政不服審査法における執行停止(25条)

行政不服審査法では、審査請求の対象となった処分について、以下のような場合に執行停止が認められます(25条)。

処分の執行または手続の続行により、重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき

または、処分に取消しの理由があると明らかに認められるとき

このように、行審法も行訴法と同様に、処分の執行停止制度を設けています。

記述の後半にある「内閣総理大臣は、審査庁に対し、異議を述べることができる」という部分は、行政不服審査法には存在しない制度です。

これは、行政事件訴訟法にのみ規定された制度であり、以下のとおりです。

行政事件訴訟法27条(執行停止と内閣総理大臣の異議)
執行停止の申立てがあった場合、内閣総理大臣は、裁判所に対して異議を述べることができる(27条1項)

内閣総理大臣が異議を述べた場合、裁判所は執行停止をしてはならず、すでに執行停止の決定をしているときはこれを取り消さなければならない(27条4項)

これは、国の重要な政策執行に支障が出ることを防ぐための特別な制度であり、行政訴訟に特有の規定です。

オ.行訴法は、行政庁がその処分または裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟として「差止めの訴え」を設けているが、行審法は、このような処分の差止めを求める不服申立てについて明文の規定を置いていない。

オ・・・妥当である

■ 行政事件訴訟法における「差止めの訴え」(3条7項)

行政事件訴訟法では、「差止めの訴え」という独立の訴訟類型を規定しています。

第3条第7項
行政庁が一定の処分または裁決をすべきでないにもかかわらず、これがされようとしている場合において、行政庁がその処分または裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟を「差止めの訴え」といいます。

つまり、将来に向けてなされようとしている違法な処分を未然に防ぐための訴訟が可能です。

■ 行政不服審査法における対応の有無

一方、行政不服審査法には、将来の処分を差し止めるための不服申立て制度(=差止め請求)に関する明文の規定はありません

つまり、処分がまだされていない段階では、行政不服審査法に基づく審査請求などを行うことはできず、差止め的な効力を持つ制度は設けられていないということです。

つまり、

  • 行訴法 → 差止めの訴え(明文あり)〇
  • 行審法 → 差止め的な制度についての明文なし ×

したがって、本肢は妥当です。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

【勉強の仕方等、お気軽にご相談ください!】
  • メールアドレス
  • お名前(姓・名)
  • 姓と名はスペースで区切ってください
  • 郵便番号
  • 例:123-4567
  • 住所(都道府県)
  • 住所(市町村以下)
  • ご相談はこちら

  
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。