令和7年度の行政書士試験対策の個別指導開講

令和6年・2024|問15|行政不服審査法

行政不服審査法(以下「行審法」という)に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、または金銭の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分については、行審法の規定は適用されない。
  2. 行審法が審査請求の対象とする「行政庁の不作為」には、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分がされていない場合も含まれる。
  3. 地方公共団体の機関がする処分でその根拠となる規定が条例または規則に置かれているものについては、行審法の規定は適用されない。
  4. 地方公共団体またはその機関に対する処分で、当該団体または機関がその固有の資格において処分の相手方となるものについては、行審法の規定は適用されない。
  5. 行審法は、国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める審査請求で、自己の法律上の利益にかかわらない資格でするものについても規定している。

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【答え】:4
【解説】
1.納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、または金銭の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分については、行審法の規定は適用されない。

1・・・妥当でない

この選択肢は、「行政不服審査法の規定は適用されない」としていますが、これは誤りです。

行政不服審査法(行審法)には、金銭の納付や給付に関する処分を除外する規定はありません。つまり、金銭に関する処分であっても、他の処分と同様に、審査請求の対象となり、行審法の適用を受けます。

一方、選択肢が混同しているのは行政手続法の規定です。

行政手続法第13条第2項第4号では、以下のように定められています。

納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、または金銭の給付決定の取消しその他金銭の給付を制限する不利益処分」については、
聴聞や弁明の機会の付与を要しない(=行政手続法13条1項の適用除外)。

つまり、行政手続法上の手続保障が一部省略されるケースがあるだけであり、不服申立ての対象(=行審法の適用)とは関係ありません。

したがって、この選択肢は誤り(妥当でない)です。

2.行審法が審査請求の対象とする「行政庁の不作為」には、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分がされていない場合も含まれる。

2・・・妥当でない

この選択肢は、「法令違反の是正のために処分がされていない場合」も審査請求の対象となる不作為に含まれるとしており、これは誤りです。

行政不服審査法第3条は、不作為についての審査請求を以下のように限定しています。

行政庁に対して法令に基づく申請をした者が、相当の期間が経過しても何らの処分がされない場合」に限って、不作為に対する審査請求が認められます

つまり、対象となる「不作為」とは、申請があったにもかかわらず処分がされない場合に限られます。

一方で、本肢が述べているような「法令に違反する事実があるにもかかわらず、是正のための処分がなされていない」ケースについては、申請に基づかない不作為であり、審査請求の対象外です。

このような場合は、行政手続法第36条の3第1項に基づき、処分または行政指導を求める「申出」は可能ですが、審査請求として争うことはできません。

3.地方公共団体の機関がする処分でその根拠となる規定が条例または規則に置かれているものについては、行審法の規定は適用されない。

3・・・妥当でない

本肢は「条例や規則に基づく処分には行政不服審査法が適用されない」としている点が誤りです。

行政不服審査法には、上記のように「条例や規則に基づく処分」を適用除外とする規定はありません。

行政不服審査法では、「概括主義」がとられており、原則としてすべての行政処分および不作為が審査請求の対象となります(第2条)。
つまり、条例や規則に基づく処分であっても、不服申立て(審査請求)の対象となります。

4.地方公共団体またはその機関に対する処分で、当該団体または機関がその固有の資格において処分の相手方となるものについては、行審法の規定は適用されない。

4・・・妥当である

この選択肢は、行政不服審査法第7条第2項の内容に基づく正しい記述です。

行政不服審査法第7条第2項

「国の機関または地方公共団体その他の公共団体もしくはその機関に対する処分で、これらの機関または団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの」およびその不作為については、行政不服審査法の規定は適用されません

🔍「固有の資格」とは?

「固有の資格」とは、その機関や団体が一般私人とは異なる、公的な立場で行動している場合のことを指します。

たとえば、地方公共団体が国からの補助金に関する処分を受けたような場合、それは「私人」としてではなく、行政主体としての特別な立場で処分の対象となっているということです。

このような処分については、行政不服審査法による不服申立ての対象外とされています。

5.行審法は、国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める審査請求で、自己の法律上の利益にかかわらない資格でするものについても規定している。

5・・・妥当でない

この選択肢は、「自己の法律上の利益にかかわらない資格でも審査請求できる」としており、行政不服審査法(行審法)にはそのような規定はありません。

行政不服審査法第2条では、「行政庁の処分に不服がある者は、審査請求をすることができる」と定めています。

ここでいう「不服がある者」とは、単に不満を持っている者ではなく、その処分によって自己の権利または法律上保護された利益を侵害された者、すなわち不服申立適格を有する者を意味します。

この点について明確な定義規定は行審法には存在しませんが、判例(最判昭和53年3月14日・主婦連ジュース訴訟)において、次のように整理されています。

「当該処分により自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害され、または必然的に侵害されるおそれのある者」に限り、審査請求が可能。

つまり、法律上の利益と無関係な者による審査請求は認められないというのが行審法の立場です。

比較:行政事件訴訟法の「民衆訴訟」

一方、選択肢の内容は、行政事件訴訟法第5条の「民衆訴訟」の定義にあたります。

たとえば選挙無効訴訟などが代表的で、これは自己の権利利益とは関係なく、公益的立場から訴えを提起するものです。

しかし、これは訴訟法上の制度であり、行政不服審査法の審査請求には適用されません。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

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