審査基準と処分基準に関する次の記述のうち、行政手続法に照らし、妥当なものはどれか。
- 審査基準を公にすることによって行政上特別の支障が生じる場合、行政庁が当該審査基準を公にしなかったとしても違法とはならない。
- 処分基準は、不利益処分を行うに際して、その名あて人からの求めに応じ、当該名あて人に対してこれを示せば足りるものとされている。
- 行政庁が審査基準を作成し、それを公にすることは努力義務にすぎないことから、行政庁が審査基準を公にしなかったとしても違法とはならない。
- 審査基準を公にする方法としては、法令により申請の提出先とされている機関の事務所において備え付けることのみが認められており、その他の方法は許容されていない。
- 行政庁が処分基準を定めることは努力義務に過ぎないが、処分基準を定めた場合には、これを公にする法的義務を負う。
【答え】:1
【解説】
1・・・妥当である
行政手続法第5条第3項では、行政庁は審査基準を「公にしておかなければならない」と定めていますが、その義務には例外が設けられています。それは、「行政上特別の支障があるとき」です。
この「行政上特別の支障があるとき」とは、審査基準を公開することで、例えば不正防止の観点から支障が出るような場合などが想定されています。したがって、こうした特別の事情がある場合には、審査基準を公にしなかったとしても違法とは評価されません。
よって、本肢の記述は妥当です。
2・・・妥当でない
行政手続法第12条第1項では、行政庁は処分基準を定めるよう努めなければならず、またこれを公にしておくよう努めなければならないとされています。
この規定は、行政運営の透明性や公平性を確保するためのものです。つまり、処分基準は、単に処分の名あて人に対して求めがあった場合にだけ示せばよいという考え方ではなく、原則としてあらかじめ公にしておくことが求められているのです。
また、第12条第2項では、処分基準を定める際には、その不利益処分の性質に照らして、できる限り具体的なものとしなければならないとされています。
したがって、本肢のように「名あて人からの求めに応じて示せば足りる」というのは、法の趣旨に反しており、妥当でないといえます。
3・・・妥当でない
行政手続法第5条において、審査基準の作成および公表は法的義務とされています。
- 第5条第1項:行政庁は審査基準を定めなければならない(義務)。
- 第5条第2項:審査基準は、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとする。
- 第5条第3項:行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、審査基準を法令で定められた申請先の事務所等で公にしておかなければならない(義務)。
つまり、審査基準の公表は「努力義務」ではなく、「義務」です。例外として、行政上特別の支障があるときのみ、公表しなくても許されます。
一方、処分基準については、行政手続法第12条により「定め、公にしておくよう努めなければならない」とされており、こちらは努力義務です。
したがって、本肢のように「審査基準の公表は努力義務」とするのは処分基準との混同による誤りであり、妥当ではないといえます。
4・・・妥当でない
行政手続法第5条第3項では、審査基準の公表方法について、以下のように定められています。
「行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により、審査基準を公にしておかなければならない。」
つまり、「事務所での備付け」だけではなく、それに加えて「その他の適当な方法」も認められているのです。
この「その他の適当な方法」には、たとえば行政庁の公式ウェブサイトでの公開などが含まれ、実務上も一般的な手段とされています。
したがって、本肢のように「事務所における備付けのみが認められている」とするのは誤りであり、妥当でないです。
5・・・妥当でない
行政手続法第12条第1項では、処分基準について以下のように定めています:
「行政庁は、不利益処分に関する処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。」
つまり、
- 処分基準を定めることも、
- 処分基準を公にすることも、
いずれも努力義務です。
したがって、本肢のように「定めることは努力義務だが、定めた場合には公にする法的義務が生じる」とするのは誤りです。
なお、「定めた場合に公にする法的義務がある」という扱いになるのは、たとえば行政手続法第6条に定められている標準処理期間についてであり、処分基準のケースとは異なります。
よって、本肢は妥当でないといえます。
令和6年(2024年)過去問
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法 |
問3 | 憲法 | 問33 | 民法 |
問4 | 憲法 | 問34 | 民法 |
問5 | 憲法 | 問35 | 民法 |
問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 多肢選択 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 多肢選択 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 多肢選択 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行服法・行訴法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 行政書士法 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 住民基本台帳法 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識 |
問26 | 公文書管理法 | 問56 | 基礎知識 |
問27 | 民法 | 問57 | 個人情報保護法 |
問28 | 民法 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
