令和7年度の行政書士試験対策の個別指導開講

令和6年・2024|問12|行政手続法

行政指導についての行政手続法の規定に関する次のア~エの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。

ア.行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項等、行政手続法が定める事項を示さなければならない。

イ.地方公共団体の機関がする行政指導については、その根拠となる規定が法律で定められている場合に限り、行政指導に関する行政手続法の規定が適用される。

ウ.法令に違反する行為の是正を求める行政指導で、その根拠となる規定が法律に置かれているものを受けた相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思科するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。

エ.意見公募手続の対象である命令等には、審査基準や処分基準など、処分をするかどうかを判断するための基準は含まれるが、行政指導に関する指針は含まれない。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

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【答え】:2

【解説】
ア.行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項等、行政手続法が定める事項を示さなければならない。

ア・・・妥当である

行政指導とは、行政機関が特定の者に対して、法律上の義務ではないけれども、一定の作為(やること)や不作為(やらないこと)を求める行為のことです。これは「処分」ではなく、任意の協力を求める形式になります(行政手続法2条6号)。

そして、行政指導が行われる場合、相手方に対して次のような情報をきちんと伝える義務があります。

誰がその行政指導の責任者であるか(行政手続法35条1項)

②さらに、行政指導の場面で、行政機関が「許可しないこともあるよ」などと、自らの権限をちらつかせるような場合(=許認可等を行使し得る旨を示すとき)は、ただ漠然とそう言うのではなく、「何という法律の、どの条文に基づいてその権限があるのか」という根拠を相手にきちんと示さなければなりません。(行政手続法35条2項)

つまり、「言うことを聞かないと許可しないかもよ?」というような態度を取る場合には、法的な裏付けを明確にする必要があるということです。

行政手続法35条(行政指導の方式)

1項 行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。

2項 行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、次に掲げる事項を示さなければならない。

一 当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項
二 前号の条項に規定する要件
三 当該権限の行使が前号の要件に適合する理由

イ.地方公共団体の機関がする行政指導については、その根拠となる規定が法律で定められている場合に限り、行政指導に関する行政手続法の規定が適用される。

イ・・・妥当でない

結論からいうと、本肢は「法律で定められている場合に限り適用される」と述べていますが、行政指導については、法律に根拠があっても、地方公共団体の機関が行う場合は行政手続法の規定が適用されません。

よって、本肢は、誤り(妥当でない) です。

行政手続法は、行政の公正さ・透明性の確保を目的とし、国の行政機関を主な対象としていますが、地方公共団体の機関にも一部適用される場合があります。ただし、すべての行為に適用されるわけではありません。

行政手続法第3条第3項では、以下の場合、行政手続法(第2章~第6章)は適用されない、としています。

  • 地方公共団体の機関による行政指導や命令等の制定行為
    法律に基づいていても、条例または規則に基づいていても適用されない
  • 地方公共団体の機関による処分や届出
    → その根拠が「条例または規則」である場合に限り、適用されない
    → 逆に、根拠が法律にある場合は適用される
ウ.法令に違反する行為の是正を求める行政指導で、その根拠となる規定が法律に置かれているものを受けた相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思科するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。

ウ・・・妥当である

行政手続法36条の2(行政指導の中止等の求め)

法令に違反する行為の是正を求める行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)の相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。ただし、当該行政指導がその相手方について弁明その他意見陳述のための手続を経てされたものであるときは、この限りでない。

上記を整理すると下表の通りです。
本肢は、この内容を説明しているため、妥当である(正しい)です。

要件の区分 内容
対象となる行政指導 法令違反の是正を目的とする行政指導
根拠法令 その行政指導の根拠が「法律」に置かれていること
求めることができる人 行政指導を受けた相手方(※第三者は含まれない)
求めの内容 「中止」や「その他必要な措置」の申し出が可能
エ.意見公募手続の対象である命令等には、審査基準や処分基準など、処分をするかどうかを判断するための基準は含まれるが、行政指導に関する指針は含まれない。

エ・・・妥当でない

結論から言うと、意見公募手続の対象である命令等には、審査基準処分基準など、処分をするかどうかを判断するための基準だけでなく、行政指導に関する指針も含まれるので誤り(妥当ではない)です。

行政手続法2条8号における「命令等」とは、以下のようなものを指します。

  1. 命令・規則: 各省庁が法律に基づいて定める命令や規則
  2. 審査基準: 許認可などの審査をする際の判断基準
  3. 処分基準: 行政処分(例:営業停止など)を行う際の基準
  4. 行政指導指針: 行政指導を行う際の方針やルール(これも「命令等」に含まれる)

意見公募手続(いわゆるパブリックコメント制度)は、「命令等」を定めようとする場合に、あらかじめ案を公表し、広く国民から意見を募る制度です。

つまり、行政が審査基準・処分基準・行政指導指針などを定めるときも、原則として意見公募手続を行わなければならないということになります。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

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