論点
- 薬事法距離制限は憲法22条1項(職業選択の自由)に違反しているか?
事案
Xは、薬局開設の許可申請を行ったが、広島県知事Yは、薬事法と県条例の定める薬局等の配置基準に適合しないとして、不許可処分をした。
そこで、Xは、距離制限を定める薬事法6条2項および県条例が、憲法22条1項に違反する等と主張して、不許可処分の取消訴訟を提起した。
※薬事法(改正前)では、「薬局の配置の場所が配置の適正を欠くと認められう場合は、許可を与えない。また、配置の基準は、住民に対し適正な調剤の確保と医薬品の適正な供給うを図ることができるように、都道府県が条例で定めるものとし、その制定にあたっては、人口、交通事情その他調剤および医薬品の需要に影響を与える各般の事情を考慮するものとする。」と規定されていた。
そして、広島県条例では、既存薬局からおおむね100mとの距離制限を設けていた。
規制目的二分論の比較表|消極目的 vs 積極目的
薬事法距離制限事件を理解するうえで不可欠なのが、規制目的二分論です。最高裁は、職業の自由に対する規制を「消極目的規制」と「積極目的規制」に分類し、それぞれ異なる違憲審査基準を適用しています。試験では両者の比較が頻出するため、以下の表で整理しておきましょう。
| 比較項目 | 消極目的規制 | 積極目的規制 |
|---|---|---|
| 規制の目的 | 国民の生命・健康・安全への危険防止(警察的規制) | 社会的・経済的弱者の保護、福祉国家的政策の実現 |
| 違憲審査基準 | 厳格な合理性の基準:より緩やかな規制手段で目的を達成できないか裁判所が審査 | 明白性の原則:規制が著しく不合理であることが明白な場合のみ違憲 |
| 司法審査の厳しさ | 厳しい(裁判所が代替手段まで検討) | 緩やか(立法裁量を広く尊重) |
| 代表判例 | 薬事法距離制限事件(最大判昭50.4.30)→違憲 | 小売市場距離制限事件(最大判昭47.11.22)→合憲 |
| 判断のポイント | 薬局の偏在と不良医薬品供給の因果関係に合理的根拠なし | 小売商の共倒れ防止という立法目的は著しく不合理とはいえない |
試験対策のポイント:同じ「距離制限」でも、薬事法は消極目的として違憲、小売市場は積極目的として合憲と結論が分かれます。規制目的の分類が審査基準の選択を左右し、結論を決定づける点を押さえておきましょう。
判決
薬事法距離制限は憲法22条1項(職業選択の自由)に違反しているか?
→違反している(違憲)
一般に許可制は職業の自由に対する強力な制限であるから、合憲といえるためには、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが消極目的規制である場合には、より緩やかな制限である職業活動の内容および態様に対する規制によっては目的を十分に達成できないことを要する。
本件薬局の適正配置規制は、国民の生命および健康に対する危険の防止という消極目的のための規制措置であり、目的自体は重要な公共の利益といえる。
しかし、「薬局の偏在→競争激化→一部薬局等の経営の不安定→不良医薬品の供給の危険」という因果関係は、確実な根拠に基づく合理的な判断とは認めがたく、本適正配置規制の必要性と合理性を肯定するに足りない。
したがって、薬事法6条2項および県条例は、憲法22条1項に違反し、無効である。


