論点
- 衆議院解散の効力について、司法審査が及ぶか?
事案
昭和27年、吉田内閣は、憲法7条に基づいて、衆議院の解散を強行した。この解散によって議員の資格を失った苫米地義三氏Xは、当該解散の無効を前提として、国Yを被告として、衆議院議員としての資格確認と任期満了までの歳費請求の訴えを提起した。
憲法第7条(天皇の国事行為)
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
3号 衆議院を解散すること。
判決
衆議院解散の効力について、司法審査が及ぶか?
→及ばない
日本国憲法は、立法、行政、司法の三権分立の制度を確立し、司法権はすべて裁判所の行うところとし(憲法76条1項)、
また裁判所法は、裁判所は一切の法律上の争訟を裁判するものと規定し(裁判所法3条1項)、
これによって、民事、刑事のみならず行政事件についても、事項を限定せず、いわゆる概括的に司法裁判所の管轄に属するものとし、さらに憲法は一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを審査決定する権限(違憲審査権)を裁判所に与えた(憲法81条)
結果として、国の立法、行政の行為は、それが法律上の争訟となるかぎり、違憲審査を含めてすべて裁判所の裁判権に服することとなる。
しかし、あらゆる国家行為が無制限に司法審査の対象となるものと即断すべきでない。
国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為は、たとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であっても、かかる国家行為は裁判所の審査権の外にある。
そして、国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為の判断は、主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府、国会等の政治部門の判断に委され、最終的には国民の政治判断に委ねられている
ここで、衆議院の解散は、国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為である。
したがって、裁判所の審査権の外にある(裁判所による司法審査は及ばない)。
統治行為論が問題となった主要判例の比較
行政書士試験では、統治行為論に関連する判例の違いが問われます。苫米地事件と砂川事件を中心に、司法審査の及ぶ範囲の違いを整理しましょう。
| 判例 | 争点 | 司法審査 | 判旨のポイント |
|---|---|---|---|
| 苫米地事件(最大判昭35.6.8) | 衆議院解散の効力 | 及ばない | 高度に政治性のある国家行為は裁判所の審査権の外にあり、最終的には国民の政治判断に委ねられる |
| 砂川事件(最大判昭34.12.16) | 日米安保条約の合憲性 | 原則及ばない | 高度の政治性を有する条約は、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り司法審査の対象外 |
試験対策:両判例の決定的な違い
- 苫米地事件=統治行為論を正面から採用し、司法審査を完全に排除した
- 砂川事件=「一見極めて明白に違憲無効」の場合は例外的に審査可能とする留保付きの判断(統治行為論の変形)
- 両判例とも、司法権の限界として三権分立の観点から判断している点は共通
択一式では「砂川事件は司法審査を完全に否定した」という誤りの選択肢が頻出します。砂川事件には例外の留保がある点を正確に押さえておきましょう。


