論点
事案
昭和24年、最高裁発足後初めて行われた最高裁判所の裁判官の国民審査が行われた。これに対して、審査人Xは、最高裁判所裁判官国民審査法36条に基づき、国民審査は無効であるとの判決を求める訴えを提起した。
最裁審査法第36条(審査無効の訴訟)
審査の効力に関し異議があるときは、審査人又は罷免を可とされた裁判官は、中央選挙管理会を被告として、審査の結果の報告及び告示のあつた日から30日内に東京高等裁判所に訴えを提起することができる。
判決
国民審査の法的性質とは?
→解職制度である
憲法第79条
2 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後10年を経過した後初めて行われる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
3 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
上記憲法79条2項の字句だけでを見ると、国民審査は、解職制度でないように見える。
しかし、3項の字句と併せてみると、国民審査制度の趣旨は、国民が裁判官を「罷免すべきか否か」を決定する点にある。
国民審査の方式(判断を留保したい裁判官に対しても投票することを余儀なくしている点)は思想・良心の自由を侵害しないか?
→侵害しない
まず、最高裁判所裁判官国民審査の投票については、審査を受ける裁判官の氏名が投票用紙に印刷されています。そして、裁判官ごとに、この裁判官は辞めさせたいという意思(罷免を可とする意思)があれば「×」を記載し、辞めさせたいという意思がなければ何も記載せずに投票します。
ここまでが、前提となる内容です。以下が判決の内容です。
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国民審査は、解職の制度であり、「積極的に罷免を可とする者(罷免させようと思う者)」が「そうでない者」より多数であるか否かを知ろうとするためのものである。
そして、判断を留保したい者は、罷免する方がいいか悪いかが分からない者なので、「積極的に罷免を可とする者」に属さない。
そうすると、記載のない投票に、「罷免を可としない投票」として効果を与えても、なんら意思に反する効果を生じさせているわけではないため、思想・良心の自由を制限するものではない。