論点
- 裁判所は、将来的に論争が起こり得る抽象的なことについて、判断する権限を有するか?
事案
昭和25年、自衛隊の前身である警察予備隊が設置された。これに対し、原告X(日本社会党の鈴木茂三郎氏)は、警察予備隊の設置並びに維持に関して国Yがなした一切の行為の無効を求めて、党を代表して、直接、最高裁判所に出訴した。
判決
裁判所は、将来的に論争が起こり得る抽象的なことについて、判断する権限を有するか?
→抽象的な事柄について判断する権限は有さない
裁判所は、司法権を行う権限を有しており、裁判所が司法権を発動するためには具体的な争訟事件が提起されることを必要とする。
具体的な争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法及びその他の法律命令等の解釈に対し存在する疑義論争に関し抽象的な判断を下す権限を行うことはできない。
また、裁判所が、かような具体的事件を離れて抽象的に法律命令等の合憲性を判断する権限を有するとの見解には、憲法上及び法令上何等の根拠も存しない。
上記内容を分かりやすく言うと
裁判所が違憲立法審査権を行使するには、実際に起こった具体的な争訟事件が必要ということです。
言い換えると、わが国は、「付随的違憲審査制」を採用している、と判旨しています。
結局のところ、今回の訴えについては、具体的な争訟に当たらないとして、却下されました。