論点
- 政党内部の行為について、原則、司法審査は及ぶか?
事案
共産党Xが所有する家屋を、党幹部であった袴田里見氏Yに住居として使用させていた。しかし、その後、XはYを共産党から除名し、Yに対して家屋の明け渡しを求めた。
しかし、Yがこれに応じなかったため、XがYに対して家屋の明渡しを求めて出訴した。
Yは、下記3点について主張した。
- 本件家屋は、これまで党のために活動してきたYの終生の住居として提供されたものであること
- 政党の内部的処分決定も法律上の争訟であり、除名時処分の適否も司法審査の対象となること
- 仮に政党の内部的自律権を尊重し、その自治的措置に委ねるべき事項があるとしても、本件除名処分のように被処分者にとって著しく不利益かつ重大な事項については、司法審査の対象になること
判決
政党内部の行為について、原則、司法審査は及ぶか?
→原則、及ばない。例外として、一般市民法秩序と直接の関係を有する場合は、司法審査が及ぶ
政党に対しては、高度の自主性と自律性を与えて自主的に組織運営をなしうる自由を保障しなければならない。
政党の性質、目的からすると、自由な意思によって政党を結成し、あるいはそれに加入した以上、党員が政党の存立及び組織の秩序維持のために、自己の権利や自由に一定の制約を受けることがあることもまた当然である。
そして、政党の内部的自律権に属する行為は、法律に特別の定めのない限り尊重すべきであるから、政党が組織内の自律的運営として党員に対してした除名処分等の当否については、原則として自律的な解決に委ねるのを相当である。
したがって、政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばない。