令和7年度の行政書士試験対策の個別指導開講
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最判昭59.1.26:未改修河川の安全性(大東水害訴訟)

論点

  1. 河川管理についての瑕疵の有無の判断基準は?
  2. 未改修河川は、どの程度の安全性が必要か?

事案

昭和47年7月7日の集中豪雨により、大阪府大東市の低湿地帯において、床上浸水等が発生した。この地域は低湿地帯であったところ、急速な市街化が進み、浸水被害が深刻化していたため、巨額の費用をかけて河川の改修工事が行われていた。

しかし、一部区間についてはなお未改修のままであった。

そして、この豪雨により、被害を受けた低湿地帯の周辺住民Xらは、浸水の原因は、Xらの居住地域付近を流れる「1級河川・谷田川」および「3本の水路」の管理の瑕疵にあったと主張して、「河川管理者である国Y1」および「水路の管理者である大東市Y2」に対し、国家賠償法2条または3条に基づき国家賠償請求訴訟を提訴した。

判決

河川管理についての瑕疵の有無の判断基準は?

同種・同規模の河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認しうる安全性を備えていると認められるかどうかを基準として判断すべき

財政的、技術的及び社会的諸制約によっていまだ通常予測される災害に対応する安全性を備えるに至っていない現段階においては、当該河川の管理についての瑕疵の有無は、過去に発生した水害の規模、発生の頻度、発生原因、被害の性質、降雨状況、流域の地形その他の自然的条件、土地の利用状況その他の社会的条件、改修を要する緊急性の有無及びその程度等諸般の事情を総合的に考慮し、前記諸制約のもとでの同種・同規模の河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして是認しうる安全性を備えていると認められるかどうかを基準として判断すべきであると解するのが相当である。

既に改修計画が定められ、これに基づいて現に改修中である河川については、右計画が全体として右の見地からみて格別不合理なものと認められないときは、その後の事情の変動により当該河川の未改修部分につき水害発生の危険性が特に顕著となり、当初の計画の時期を繰り上げ、又は工事の順序を変更するなどして早期の改修工事を施行しなければならないと認めるべき特段の事由が生じない限り、右部分につき改修がいまだ行われていないとの一事をもって河川管理に瑕疵があるとすることはできないと解すべきである。

未改修河川は、どの程度の安全性が必要か?

未改修河川は、河川の改修、整備の過程に対応する過渡的安全性をもって足りる

河川の管理においては、道路の管理における危険な区間の一時閉鎖等のような簡易、臨機的な危険回避の手段を採ることもできないのである。

河川の管理には、以上のような諸制約が内在するため、すべての河川について通常予測し、かつ、回避しうるあらゆる水害を未然に防止するに足りる治水施設を完備するには、相応の期間を必要とし、未改修河川又は改修の不十分な河川の安全性としては、右諸制約のもとで一般に施行されてきた治水事業による河川の改修、整備の過程に対応するいわば過渡的な安全性(一時的な対策)をもって足りるものとせざるをえない。

そのため、当初から通常予測される災害に対応する安全性を備えたものとして設置され公用開始される道路その他の営造物の管理の場合とは、その管理の瑕疵の有無についての判断の基準もおのずから異なったものとならざるをえないのである。

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