論点
- 道路交通法に基づく反則金納付通告に処分性は認められるか?
事案
Xは、駐車違反の被疑事実で現行犯逮捕された。その翌日、Xは、反則金納付による処理手続を受けることを希望し、反則金相当額を仮納付して釈放された。
その後、県警本部長Yは、反則金の仮納付を本納付とみなす効果もつ反則金納付通告を行った。
そこで、Xは、駐車違反者の誤認があるとして、反則金納付通告処分の取消訴訟を提起した。
判決
道路交通法に基づく反則金納付通告に処分性は認められるか?
→認められない
交通反則通告制度は、車両等の運転者がした道路交通法違反行為のうち、比較的軽微であって、警察官が現認する明白で定型的なものを反則行為とし、反則行為をした者に対しては、警察本部長が定額の反則金の納付を通告し、その通告を受けた者が任意に反則金を納付したときは、その反則行為について刑事訴追をされず、一定の期間内に反則金の納付がなかったときは、本来の刑事手続が進行するというものである。
そして、道路交通法127条1項の規定による警察本部長の反則金の納付の通告があっても、これにより通告を受けた者は通告に係る反則金を納付すべき法律上の義務が生ずるわけではなく、ただその者が任意に右反則金を納付したときは公訴が提起されないというにとどまり、納付しないときは、検察官の公訴の提起によつて刑事手続が開始され、その手続において通告の理由となつた反則行為となるべき事実の有無等が審判されることとなるものとされているが、これは上記の趣旨を示すものにほかならない。(通告を受けても納付の義務は発生しないので、通告は処分性がないことになる)
道路交通法は、通告を受けた者が、その自由意思により、通告に係る反則金を納付し、これによる事案の終結の途を選んだときは、もはや当該通告の理由となった反則行為の不成立等を主張して通告自体の適否を争い、これに対する抗告訴訟によってその効果の覆滅を図る(くつがえす)ことは許されない。
右のような主張をしようとするのであれば(くつがえしたいのであれば)、反則金を納付せず、後に公訴が提起されたときにこれによって開始された刑事手続の中でこれを争い、これについて裁判所の審判を求める途を選ぶべきであるとしているものと解するのが相当である。
もしそうでなく、抗告訴訟が許されるものとすると、本来刑事手続における審判対象として予定されている事項を行政訴訟手続で審判することとなり、また、刑事手続と行政訴訟手続との関係について複雑困難な問題を生ずるため、同法がこのような結果を予想し、これを容認しているものとは到底考えられない。