論点
- 工業地域指定の決定は抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?
事案
工業地域とは?
工業地域とは、用途地域の一種です。用途地域とは、住居、商業、工業など市街地の大枠として、各地域をどのような地域にしていくのかを定めるものです。その中の一つに「工業地域」があります。工業地域に指定されると、病院や大学などの建設ができなくなるという一定の建築制限が発生します。
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そして、Xは、岩手県内に精神病院を経営し、将来その施設の拡張を予定していた。しかし、岩手県知事Yが都市計画法8条1項に基づいて、Xの経営する病院を含む地区を工業地域に指定した。
これにより、Xは、病院の拡張が困難になること、また病院としての環境が破壊されることなどを危惧し、上記「工業地域指定の決定」の無効確認あるいは取消しを求めて提訴した。
判決
工業地域指定の決定は抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?
→あたらない
都市計画区域内において工業地域を指定する決定は、都市計画法8条1項1号に基づき都市計画決定の一つとしてされるものであり、右決定が告示されて効力を生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用される。
このことにより、上記基準に適合しない建築物については、建築確認を受けることができず、ひいてその建築等をすることができないこととなるから、右決定が、当該地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課し、その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できない。
しかし、かかる効果は、あたかも新たに右のような制約を課する法令が制定された場合におけると同様の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような効果を生ずるということだけから直ちに右地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったものとして、これに対する抗告訴訟を肯定することはできない。(個別具体的な処分とは言えないので、処分性を有しない)