論点
- 公務員に対する懲戒処分について、裁判所はどのような方法で審査すべきか?
事案
神戸税関職員であり、全国税関・労働組合・神戸支部の役員であったXらは、昭和36年に、同僚職員に対する懲戒処分について、抗議活動を行ったり、勤務時間中にも関わらず、職員増員要求運動など行い、これらの運動の中心的な役割を果たしていた。
神戸税関長Yは、Xらの行った行為が、国家公務員法の定める「職命令遵守義務・争議行為等の禁止・職務専念義務」違反、人事院規則に定める「勤務時間中の組合活動の禁止」違反に該当するとして、Xらに対して懲戒処分を行った。
これに対して、Xらは、当該処分の取消しを求めて提訴した。
判決
公務員に対する懲戒処分について、裁判所はどのような方法で審査すべきか?
→懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべき
国家公務員法(国公法)は、同法所定の懲戒事由がある場合に、懲戒権者が、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をするときにいかなる処分を選択すべきかを決するについては、具体的な基準を設けていない。
したがって、懲戒権者は、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきか、を決定することができる。
そして、その判断は、右のような広範な事情を総合的に考慮してされるものである以上、部下の職員(Xら)の指揮監督者(Y)の裁量に任せるのでなければ、とうてい適切な結果を期待することができないものといわなければならない。
それ故、公務員につき、国公法に定められた懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきである。
そして、懲戒権者が右の裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならない。
したがつて、裁判所が右の処分の適否を審査するにあたっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、
その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである。