論点
- 個人タクシー事業の免許申請の審理手続が不公正なものであったことが、却下処分の取消事由となるか?
事案
Xは、陸運局長Yに対し、個人タクシーの免許を申請したところ、申請件数が膨大だったため、Yは、内部的な17の基準を設け、この基準をクリアしない場合は、却下することとした。
しかし、この審査基準が公表されたり、Xに告知されたりすることはなかった。
そのためXは、十分な主張・立証の機会を与えられなかった。
その結果、具体的な17の基準のうち、2つの項目に該当しなかったとして申請は却下された。
そのため、Xは本件却下処分の取消訴訟を提起した。
判決
個人タクシー事業の免許申請の審理手続が不公正なものであったことが、却下処分の取消事由となるか?
→適正な手続きによって、初めに下した処分(判断)と異なる処分(判断)に到達する可能性がなかったとは言えない場合、取消事由となる
多数の者のうちから少数特定の者を、具体的個別的事実関係に基づき選択して免許の許否を決しようとする行政庁(Y)としては、事実の認定につき行政庁の独断が疑われるような不公正な手続をとってはならない。
当該、「内部的な17の基準」は、抽象的な免許基準を定めているにすぎないのであるから、内部的にせよ、さらに、その趣旨を具体化した審査基準を設定し、これを公正かつ合理的に適用しなければならない。
とくに、右基準の内容が微妙、高度の認定を要するようなものである等の場合には、右基準を適用するうえで必要とされる事項について、申請人に対し、その主張と証拠の提出の機会を与えなければならないというべきである。
そして、免許の申請人(X)はこのような公正な手続によって免許の許否につき判定を受くべき法的利益を有するものといえる。
したがって、これに反する審査手続(主張・証拠の提出の機会を与えない審査手続)によって免許の申請の却下処分がされたときは、右利益を侵害するものとして、右処分の違法事由となるものというべきである。
本件事案では、これらの点に関する事実を聴聞し、Xにこれに対する主張と証拠の提出の機会を与えその結果をしんしやくしたとすれば、Yがさきにした判断と異なる判断に到達する可能性がなかったとはいえない。(却下ではなく、許可処分の可能性もあった)
したがって、この手続によってされた本件却下処分は違法たるを免れない。