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平成30年・2018|問35|民法:後見

後見に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 未成年後見は、未成年者に対して親権を行う者がないときに限り、開始する。
  2. 未成年後見人は自然人でなければならず、家庭裁判所は法人を未成年後見人に選任することはできない。
  3. 成年後見は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者について、家庭裁判所の審判によって開始する。
  4. 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護および財産管理に関する事務を行う義務のほか、成年被後見人が他人に損害を加えた場合において当然に法定の監督義務者として責任を負う。
  5. 後見人の配偶者、直系血族および兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】

1.未成年後見は、未成年者に対して親権を行う者がないときに限り、開始する。

1・・・妥当でない
未成年者に対して親権を行う者がないとき」又は「親権を行う者が管理権を有しないとき後見は開始します(民法838条
よって、親権を行う者がないときに限らないので、本肢は妥当ではありません。
  • 「後見」とは、「親権者のいない未成年者」や「精神上の障害者」で後見開始の審判を受けた者の「身上や財産の保護」を行う制度を言います。
  • 「管理権」とは、親権者が、子どもの財産を管理する権利のことです。

「親権」や「親権を行う者がないとき」については、個別指導で解説します!

2.未成年後見人は自然人でなければならず、家庭裁判所は法人を未成年後見人に選任することはできない。

2・・・妥当でない

未成年後見人は自然人だけでなく、法人を選任することもできます民法840条3項)。

よって、本肢は妥当ではありません。

3.成年後見は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者について、家庭裁判所の審判によって開始する。
3・・・妥当でない
精神上の障害により事理を弁識する能力を「欠く常況」にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができます(民法7条)。
つまり、成年後見は、精神上の障害により事理を弁識する能力が「著しく不十分」ではなく
「欠く常況(常に能力がない)」場合に、家庭裁判所の審判によって開始します。よって、誤りです。「著しく不十分」は被保佐人です(民法11条)。
4.成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護および財産管理に関する事務を行う義務のほか、成年被後見人が他人に損害を加えた場合において当然に法定の監督義務者として責任を負う。
4・・・妥当でない
結論から言えば、後半分の「成年後見人は、成年被後見人が他人に損害を加えた場合において当然に法定の監督義務者として責任を負う。」という部分が妥当ではないです。

■ 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければなりません(民法858条)。つまり、成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護および財産管理に関する事務を行う義務があるので、前半部分は正しいです。

■ 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について、当該未成年者は賠償責任を負いません(712条)。

そして、当該未成年者が責任を負わない場合、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者(法定監督義務者)は、原則、その責任無能力者(未成年者)が第三者に加えた損害を賠償する責任を負います(714条)。

そして、判例では、成年後見人であるというだけでは、法定監督義務者には当たらないとしています。つまり、「当然に法定の監督義務者として責任を負う」という記述は誤りです。

判例によると「精神障害者と同居する配偶者であるからといって、その者が当然に『責任無能力者を監督する法定の義務を負う者』に当たるとすることはできない」としています(最判平28.3.1)。
つまり、本肢は「当然に法定の監督義務者として責任を負う」が妥当ではありません。そして、上記「法定の監督義務者」に該当しない者であっても、責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし、第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行いその態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には、法定の監督義務者に準ずべき者として、責任を負うとしています。

5.後見人の配偶者、直系血族および兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。
5・・・妥当
結論から言えば、「後見人の配偶者、直系血族および兄弟姉妹は、後見監督人となることができない(民法850条)」ので妥当です。
後見監督人の仕事は、「後見人の事務を監督すること」、「後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること」、「急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること」、「後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること」です(民法851条)。
後見人に近しい者が後見監督人であると、公平に後見人を監督できないかのうせいがあるので、後見監督人になることはできないことになっています。
したがって、妥当である。

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平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・その他
問24 地方自治法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

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