物権的請求権等に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- Aが所有する甲土地の上に、Bが権原なく乙建物を建設してこれをCに譲渡した場合、無権原で乙建物を建設することによってAの土地所有権を侵害したのはBであるから、AはBに対してのみ乙建物の取去を求めることができる。
- 第三者が抵当不動産を不法占有することによって同不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権に基づく妨害排除請求権が認められるが、抵当権は占有を目的とする権利ではないため、抵当権者が占有者に対し直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることは常にできない。
- 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還を請求することはできるが、損害の賠償を請求することはできない。
- 第三者が賃貸不動産を不法占有している場合、賃借人は、その賃借権が対抗要件を具備しているか否かを問わず、その不法占有者に対して、当該不動産に関する賃借権に基づく妨害排除請求を行うことができる。
- Dが所有する丙土地の上に、Eが権原なく丁建物を建設し、自己所有名義で建物保存登記を行った上でこれをFに譲渡したが、建物所有権登記がE名義のままとなっていた場合、Dは登記名義人であるEに対して丁建物の収去を求めることができる。
【解説】
1.Aが所有する甲土地の上に、Bが権原なく乙建物を建設してこれをCに譲渡した場合、無権原で乙建物を建設することによってAの土地所有権を侵害したのはBであるから、AはBに対してのみ乙建物の取去を求めることができる。
1・・・妥当ではない
判例によると、「建物収去・土地の明渡請求できる相手」は「現実に建物を所有することによってその土地を占拠し、土地所有権を侵害している者」としています(最判昭35.6.17)。
よって、本肢は
Aは、「建物の現所有者であるC」に対して建物の収去を求めることができます。したがって、本肢は妥当でありません。
判例によると、「建物収去・土地の明渡請求できる相手」は「現実に建物を所有することによってその土地を占拠し、土地所有権を侵害している者」としています(最判昭35.6.17)。
よって、本肢は
Aは、「建物の現所有者であるC」に対して建物の収去を求めることができます。したがって、本肢は妥当でありません。
2.第三者が抵当不動産を不法占有することによって同不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権に基づく妨害排除請求権が認められるが、抵当権は占有を目的とする権利ではないため、抵当権者が占有者に対し直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることは常にできない。
2・・・妥当ではない
判例によると、「抵当不動産の占有者に対する抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、当該占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる」としています(最判平17.3.10)。
したがって、本肢は妥当ではありません。本肢は理解しておかないと、本試験で類題が出題されても解けないです。
判例によると、「抵当不動産の占有者に対する抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、当該占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる」としています(最判平17.3.10)。
したがって、本肢は妥当ではありません。本肢は理解しておかないと、本試験で類題が出題されても解けないです。
そのため、個別指導では、具体例を入れて解説します!
3.占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還を請求することはできるが、損害の賠償を請求することはできない。
3・・・妥当ではない
占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、「その物の返還請求」及び「損害賠償請求」をすることができます(民法200条)。
よって、本肢は「損害賠償請求ができない」となっているので妥当ではありません。関連ポイントもあるので、個別指導では、「関連ポイント」と「具体例」を入れて解説します!
占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、「その物の返還請求」及び「損害賠償請求」をすることができます(民法200条)。
よって、本肢は「損害賠償請求ができない」となっているので妥当ではありません。関連ポイントもあるので、個別指導では、「関連ポイント」と「具体例」を入れて解説します!
4.第三者が賃貸不動産を不法占有している場合、賃借人は、その賃借権が対抗要件を具備しているか否かを問わず、その不法占有者に対して、当該不動産に関する賃借権に基づく妨害排除請求を行うことができる。
4・・・妥当ではない
不動産の賃借人は、対抗要件を備えた場合において、その不動産を第三者が占有しているとき、その第三者に対して返還請求ができます(民法605条の4の2号)。
よって、「賃借権が対抗要件を具備していないと、その不法占有者に対して、賃借権に基づく妨害排除請求を行うことができない」ので、妥当ではありません。具体例などは個別指導で解説します。
不動産の賃借人は、対抗要件を備えた場合において、その不動産を第三者が占有しているとき、その第三者に対して返還請求ができます(民法605条の4の2号)。
よって、「賃借権が対抗要件を具備していないと、その不法占有者に対して、賃借権に基づく妨害排除請求を行うことができない」ので、妥当ではありません。具体例などは個別指導で解説します。
5.Dが所有する丙土地の上に、Eが権原なく丁建物を建設し、自己所有名義で建物保存登記を行った上でこれをFに譲渡したが、建物所有権登記がE名義のままとなっていた場合、Dは登記名義人であるEに対して丁建物の収去を求めることができる。
5・・・妥当
判例によると、
「D所有地上の建物を取得し、自らの意思に基づいてその旨の登記を経由したEは、たとい右建物をFに譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、Dに対し、建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできない」としています(最判平6.2.8)。
つまり、Dは、Eに対して、建物収去・土地の明渡請求ができるので妥当です。これは非常にややこしいので、個別指導で細かく分解して解説します。
判例によると、
「D所有地上の建物を取得し、自らの意思に基づいてその旨の登記を経由したEは、たとい右建物をFに譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、Dに対し、建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできない」としています(最判平6.2.8)。
つまり、Dは、Eに対して、建物収去・土地の明渡請求ができるので妥当です。これは非常にややこしいので、個別指導で細かく分解して解説します。
平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:物権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 人権 | 問33 | 民法:債権 |
問4 | 経済的自由 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 内閣 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 財政 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法の概念 | 問37 | 会社法 |
問8 | 取消しと撤回 | 問38 | 会社法 |
問9 | 無効な行政行為 | 問39 | 会社法 |
問10 | 執行罰 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・社会 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識・政治 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識・情報通信 |
問25 | 行政法の判例 | 問55 | 基礎知識・その他 |
問26 | 行政不服審査法 | 問56 | 基礎知識・情報通信 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・個人情報保護 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:総則 | 問60 | 著作権の関係上省略 |