地方自治法による住民監査請求と住民訴訟に関する次の記述のうち、法令および最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 地方公共団体が随意契約の制限に関する法令の規定に違反して契約を締結した場合、当該契約は当然に無効であり、住民は、その債務の履行の差止めを求める住民訴訟を提起することができる。
- 住民訴訟によって、住民は、地方公共団体の契約締結の相手方に対し、不当利得返還等の代位請求をすることができる。
- 住民監査請求をするに当たって、住民は、当該地方公共団体の有権者のうち一定数以上の者とともに、これをしなければならない。
- 地方公共団体の住民が違法な公金の支出の差止めを求める住民訴訟を適法に提起した場合において、公金の支出がなされることによる重大な損害を避けるため、同時に執行停止の申立ても行うことができる。
- 監査委員が適法な住民監査請求を不適法として却下した場合、当該請求をした住民は、適法な住民監査請求を経たものとして、直ちに住民訴訟を提起することができる。
【解説】
1.地方公共団体が随意契約の制限に関する法令の規定に違反して契約を締結した場合、当該契約は当然に無効であり、住民は、その債務の履行の差止めを求める住民訴訟を提起することができる。
1・・・妥当ではない
随意契約とは、競争によらずに、任意に特定の者を選んで契約を締結する方式です。
そして、随意契約は、政令で定める場合に該当するときに限り、することができます(地方自治法234条2項)。
つまり、政令の定めがない場合、随意契約はできません。それにもかかわらず、随意契約を締結した場合が本肢の内容です。
この点について、判例では、「契約の相手方が随意契約の方法によることが許されないことを知り又は知ることができた場合など、一定の場合に限って随意契約は無効」と判示しています(最判昭62.5.19)。
したがって、本肢「当然に無効であり」は誤りです。
随意契約とは、競争によらずに、任意に特定の者を選んで契約を締結する方式です。
そして、随意契約は、政令で定める場合に該当するときに限り、することができます(地方自治法234条2項)。
つまり、政令の定めがない場合、随意契約はできません。それにもかかわらず、随意契約を締結した場合が本肢の内容です。
この点について、判例では、「契約の相手方が随意契約の方法によることが許されないことを知り又は知ることができた場合など、一定の場合に限って随意契約は無効」と判示しています(最判昭62.5.19)。
したがって、本肢「当然に無効であり」は誤りです。
2.住民訴訟によって、住民は、地方公共団体の契約締結の相手方に対し、不当利得返還等の代位請求をすることができる。
2・・・妥当ではない
住民訴訟では、請求できる類型が決まっており、下記4種類に限られています。
住民訴訟では、請求できる類型が決まっており、下記4種類に限られています。
- 当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求
- 行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求
- 当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求
- 当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求
本肢のような「代位請求(住民が地方公共団体に代わって請求すること)」は規定されていません。
4番の内容との違いについては、個別指導で解説いたします!
3.住民監査請求をするに当たって、住民は、当該地方公共団体の有権者のうち一定数以上の者とともに、これをしなければならない。
4.地方公共団体の住民が違法な公金の支出の差止めを求める住民訴訟を適法に提起した場合において、公金の支出がなされることによる重大な損害を避けるため、同時に執行停止の申立ても行うことができる。
4・・・妥当ではない
住民訴訟においては、選択肢2で解説した4つの内容のみ主張することができ「執行停止の申立て」はできません。
また、住民訴訟は「民衆訴訟」ですが、「民衆訴訟」では、執行停止(行政事件訴訟法25条)のルールは準用されていません。
したがって、住民訴訟で「執行停止の申立て」はできません。
住民訴訟においては、選択肢2で解説した4つの内容のみ主張することができ「執行停止の申立て」はできません。
また、住民訴訟は「民衆訴訟」ですが、「民衆訴訟」では、執行停止(行政事件訴訟法25条)のルールは準用されていません。
したがって、住民訴訟で「執行停止の申立て」はできません。
5.監査委員が適法な住民監査請求を不適法として却下した場合、当該請求をした住民は、適法な住民監査請求を経たものとして、直ちに住民訴訟を提起することができる。
5・・・妥当
住民訴訟を行う場合、事前に住民監査請求を行っている必要があります(住民監査請求前置主義)。
そして、判例では、「監査委員が適法な住民監査請求を不適法であるとして却下した場合、当該請求をした住民は、適法な住民監査請求を経たものとして直ちに住民訴訟を提起することができる」としています(最判平10.12.18)。
住民訴訟を行う場合、事前に住民監査請求を行っている必要があります(住民監査請求前置主義)。
そして、判例では、「監査委員が適法な住民監査請求を不適法であるとして却下した場合、当該請求をした住民は、適法な住民監査請求を経たものとして直ちに住民訴訟を提起することができる」としています(最判平10.12.18)。
平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:物権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 人権 | 問33 | 民法:債権 |
問4 | 経済的自由 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 内閣 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 財政 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法の概念 | 問37 | 会社法 |
問8 | 取消しと撤回 | 問38 | 会社法 |
問9 | 無効な行政行為 | 問39 | 会社法 |
問10 | 執行罰 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・社会 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識・政治 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識・情報通信 |
問25 | 行政法の判例 | 問55 | 基礎知識・その他 |
問26 | 行政不服審査法 | 問56 | 基礎知識・情報通信 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・個人情報保護 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:総則 | 問60 | 著作権の関係上省略 |