婚姻の無効原因
婚姻は、下記いずれかに該当する場合に限り、無効です。
そして、この無効主張は、当事者だけでなく、利害関係人も主張でき、利害関係人は当事者が死亡した後も無効主張できます。
- 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。
- 当事者が婚姻の届出をしないとき。
ただし、その届出が「当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭でしなければならない」という方式を欠くだけであるときは、婚姻は、無効とはならず、有効です。
無効な婚姻の追認
夫婦の一方が、他方の意思に基づかないで婚姻届を作成・提出した場合であっても、届出時に夫婦としての実質的生活関係が存在しており、後に他方の配偶者が届出の事実を知って追認したときは、婚姻は追認によりその届出の当初にさかのぼって有効となる(最判昭47.7.25)。
婚姻の取消事由
不適法な婚姻の場合
下記1~6に該当した婚姻をすると「各当事者、その親族又は検察官」から、その取消しを家庭裁判所に請求することができます(民法744条本文)。
ただし、例外として、当事者の一方が死亡した後は、検察官は、下記婚姻の取消しを請求することができません(民法744条ただし書)。
- 婚姻適齢に達していない婚姻(民法731条)
→上記婚姻について、「親族又は検察官」は婚姻適齢になったときに取消請求はできなくなるが、「不適齢者(当事者)」は、適齢に達した後、3ヶ月間は婚姻の取消請求ができます(民法745条)。 - 重婚(配偶者がいるにも関わらず、他の者と婚姻すること)(民法732条)
- 再婚禁止期間にした婚姻(民法733条)
→再婚禁止期間にした婚姻は、前婚の解消若しくは取消しの日から起算して100日を経過し、又は女が再婚後に出産したときは、婚姻の取消請求はできない(民法746条)。 - 近親者間との婚姻(734条)
- 直系姻族間との婚姻(735条)
- 養親子等の間の婚姻(736条)
詐欺又は強迫により婚姻した場合
詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができます(民法747条)。
婚姻の取消しの効力
婚姻の取消しは、将来に向かってのみ効力が生じます(民法748条1項)。つまり、取消しの効果は遡及しません。
婚姻の時においてその取消しの原因があることを知らなかった(善意の)当事者が、婚姻によって財産を得たときは、現存利益を限度に、返還しなければなりません(民法748条2項)。
婚姻の時においてその取消しの原因があることを知っていた(悪意の)当事者は、婚姻によって得た利益の全部を返還しなければなりません(民法748条3項本文)。そして、この場合、相手方が善意であったときは、相手方に損害賠償する責任を負います(民法748条3項ただし書)。
婚姻の無効と取消しの違い
婚姻の無効と取消しの違いについては個別指導で解説します。
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作成中・・・参考条文
(婚姻の無効)
第742条 婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
一 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。
二 当事者が婚姻の届出をしないとき。ただし、その届出が第七百三十九条第二項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。(婚姻の取消し)
第743条 婚姻は、次条から第七百四十七条までの規定によらなければ、取り消すことができない。(不適法な婚姻の取消し)
第744条 第七百三十一条から第七百三十六条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。
2 第七百三十二条又は第七百三十三条の規定に違反した婚姻については、当事者の配偶者又は前配偶者も、その取消しを請求することができる。(不適齢者の婚姻の取消し)
第745条 第七百三十一条の規定に違反した婚姻は、不適齢者が適齢に達したときは、その取消しを請求することができない。
2 不適齢者は、適齢に達した後、なお三箇月間は、その婚姻の取消しを請求することができる。ただし、適齢に達した後に追認をしたときは、この限りでない。(再婚禁止期間内にした婚姻の取消し)
第746条 第七百三十三条の規定に違反した婚姻は、前婚の解消若しくは取消しの日から起算して百日を経過し、又は女が再婚後に出産したときは、その取消しを請求することができない。(詐欺又は強迫による婚姻の取消し)
第747条 詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2 前項の規定による取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後三箇月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。(婚姻の取消しの効力)
第748条 婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。
2 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知らなかった当事者が、婚姻によって財産を得たときは、現に利益を受けている限度において、その返還をしなければならない。
3 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知っていた当事者は、婚姻によって得た利益の全部を返還しなければならない。この場合において、相手方が善意であったときは、これに対して損害を賠償する責任を負う。(離婚の規定の準用)
第749条 第七百二十八条第一項、第七百六十六条から第七百六十九条まで、第七百九十条第一項ただし書並びに第八百十九条第二項、第三項、第五項及び第六項の規定は、婚姻の取消しについて準用する。