地方自治法

監査委員・外部監査契約

監査委員については、特に行政書士で出題されやすいので細かく解説します。

監査委員は、地方公共団体の監査について、長から独立した独任制の執行機関であり、普通地方公共団体には必ず置かなければなりません。

定数 都道府県および人口25万人以上の市にあっては4人
その他の市および町村にあっては2人
選任 長が、議会の同意を得て、選任
罷免 長が、議会の同意を得て、罷免
※罷免できるのは、心身故障など職務遂行ができない場合に限り監査委員の意に反して罷免することはできない

監査委員の職務

監査委員の職務については、大きく分けて一般監査特別監査があり、
一般監査は、財務監査行政監査にわけることができ、
特別監査は、事務監査請求による監査議会請求による監査長の要求監査があります。


一般監査(財務監査と行政監査)

監査委員は、「①普通地方公共団体の財務に関する事務の執行」および「②普通地方公共団体の経営に係る事業の管理」を監査します(=財務監査)。

財務監査には、必ず行わないといけない「定期監査」と、必要があると認めるときに行う「臨時監査」とがあります。

また、監査委員は、財務監査以外に、一般行政事務に関する「行政監査」も行います。

この行政監査は必要があると認めるときに行う臨時監査として行います。

特別監査

事務監査請求による監査

簡単に言えば、住民からの請求により行う監査です。
住民は、有権者総数の50分の1以上の連署により、監査委員に請求をします。

議会請求による監査

議会は、監査委員に対し、当該普通地方公共団体の事務に関する監査を求め、監査の結果に関する報告を請求することができます。
ただし、「自治事務にあっては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務」および「法定受託事務にあっては国の安全を害するおそれがあること」は監査請求できません。

長の要求監査

監査委員は、当該普通地方公共団体の長から当該普通地方公共団体の事務の執行に関し監査の要求があったときは、その要求に係る事項について監査をしなければなりません。

外部監査契約

外部監査とは、都道府県や市町村などの地方公共団体が外部の専門家等からの監査を受けることを言います。平成9年(1997)に「地方自治法の一部を改正する法律」により外部監査制度が創設され、外部監査契約には、包括外部監査契約個別外部監査契約があります。

包括外部監査契約

普通地方公共団体の長は、政令の定めるところにより、毎会計年度、当該会計年度に係る包括外部監査契約を、速やかに、外部監査人と締結しなければなりません。(毎年、必ず締結する)

個別外部監査契約

条例に定めがある場合、事務監査請求に関する監査があったときに、監査委員の監査に代えて個別の事案ごとに外部監査人と監査契約を締結します。

これには、条例の定めが必要な点に注意しましょう!

行政委員会・行政委員(地方公共団体の執行機関)


普通地方公共団体の執行機関には、長のほかに、法律の定めにより合議制の執行機関である委員会または委員がおかれます。このように法律で執行機関を置くように定めているので、執行機関法定主義と言われます。

合議制とは、執行機関を複数の人によって構成させる制度を言います。

都道府県・市町村に置かなければいけないもの

  1. 教育委員会
  2. 選挙管理員会
  3. 人事委員会
    人事委員会を置かない普通地方公共団体にあっては「公平委員会」を置く
    ただし、都道府県、指定都市には必ず人事委員会を置かなければならない
  4. 監査委員

都道府県に置かなければいけないもの

  1. 公安委員会
  2. 労働委員会
  3. 収用委員会
  4. 海区漁業調整委員会
  5. 内水面漁場管理委員会

市町村に置かなければならないもの

  1. 農業委員会
  2. 固定資産評価審査会

上記を言い換えると、
都道府県には、「教育委員会、選挙管理員会、人事委員会、監査委員、公安委員会、労働委員会、収用委員会、海区漁業調整委員会、内水面漁場管理委員会」を置かなければならず、
市町村には、「教育委員会、選挙管理員会、人事委員会、監査委員、農業委員会、固定資産評価委員会」を置かなければなりません。

教育委員会 学校等の教育機関の管理、学校の組織編制、教育課程等の事務を管理執行します。
選挙管理委員会 国政選挙、地方選挙、住民投票の事務を管理する行政機関で、議会が選挙によって選任します。
人事委員会・公平委員会 中立的かつ専門的な人事機関として、「任命権者の任命権行使をチェックする」という役割を果たします。
監査委員 地方公共団体の「財務に関する事務の執行」や「その経営に係る事業の管理」を監査することを職務とする行政機関です。
公安委員会 警察活動の公正中立を確保することを目的に、都道府県警察を管理する行政機関です。
収用委員会 土地収用裁決等の事務を行う行政機関で、都道府県知事が議会の同意を得て任命します。
農業委員会 農地法に基づく売買・貸借の許可、農地転用案件への意見の申し出、遊休農地の調査・指導などを中心に農地に関する事務を執行する行政機関です。
固定資産評価審査委員会 固定資産課税台帳に登録された事項に関する不服の審査及び決定その他の事務を行う行政機関です。

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長の専決処分

長は、執行機関として、議会で決めたことしか、執行することができません。しかし、長は、一定の場合に議決を経ずに、処分をすることができます。これを専決処分と言います。

専決処分には法定の専決処分議会委任の専決処分の2つがあります。

法定の専決処分

法定の専決処分とは、法律で定められた事由に該当する場合に行える専決処分です。

法律で定められた事由とは、下記の通りです。

  1. 議会が成立しないとき(在任議員の総数が議員定数の半数に満たない場合)
  2. 議員の定数の半数以上の議員が出席しないなどが原因で会議を開くことができないとき
  3. 特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないとき
  4. 議決事件を議決しないとき

上記4つのいずれかに該当する場合、長は議会の決議なく処分を行えます。

※ 「副知事・副市町村長の選任の同意」および「指定都市の総合区長の専任の同意」については専決処分の対象外

そして、長が処分をした場合、長は、次の会議で、議会に報告(事後報告)し、議会の承認を求めなければなりません。

もし、議会が承認しなくても、長の処分の効力に影響はありません。

議会委任の専決処分

議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、長は専決処分ができます。

議会の委任による専決処分は、議会への事後報告は必要ですが、議会の承認は不要です。なぜなら、議会で指定された事項だから、議会は長が行うことは事前に分かっているからです。

地方公共団体の長の再議請求権

議会の議決について、①地方公共団体の長に異議がある場合、または②違反がある場合、再度審議および議決を要求する制度があり、これを「再議」と言います。

再議には、一般的再議請求権(一般的拒否権)と特別的再議請求権(特別拒否権)の2つがあります。

一般的再議請求権(一般的拒否権)→一般再議

一般的再議請求権(一般的拒否権)は、①長に異議があるときに長が理由を示して再議に付す制度です。これは、異議があるときに請求すればよいので再議に付すかどうかは任意です。

そして、再議に付す要件が、「条例の制定改廃・予算に関する議決」と「それ以外の議決」とで異なります。


条例の制定改廃・予算に関する議決

条例の制定や改廃、予算に関する議決について、長に異議がある場合、長はその送付を受けた日から10日以内に、理由を示して再議に付し、再議の結果、出席議員の3分の2以上の多数で再議に付された議決と同じ議決がなされたときは、その議決は確定します。

例えば、条例の制定案が可決され、長が再議に付し、再度可決されたら、条例は制定されるということです。再議で否決となれば、条例は制定されません。

それ以外の議決

条例の制定改廃・予算以外に関する議決については、議決の日から10日以内に、理由を付して再議し、再議の結果、出席議員の過半数で、再議に付された議決と同じ議決がなされたときは、その議決は確定します。

例えば、議員Aを除名処分の決議が可決され、それに対して、長が再議にかけ、再度過半数の賛成があれば、除名処分の議決は確定します。

特別的再議請求権(特別拒否権)→違法再議

特別的再議請求権(特別拒否権)は、②議会の議決選挙が、その権限を超えまたは法令・会議規則に違反すると認められるとき、長は、理由を付して再議または再選挙をしなければなりません(義務)。

※特別拒否権は、一般的拒否権と異なり、期間制限はありません。

収支不能議決

普通地方公共団体の議会の議決が、収入または支出に関し、執行することができないものがあるとき(収支不能の場合)、2012年の法改正前は、違法再議として、再議に付すことが義務となっていたが、改正後は、権限を超えたり、法令や会議規則に違反する場合は、違法再議ですが、そうでなければ一般再議となります。

義務費の削除減額議決

義務費とは法令により負担する経費のことです。簡単に言えば、人件費や公債費(地方債の返済にかかる元利償還金と利息)等です。そして人件費等を削減する議決がされた場合、長は、理由を付して、必ず再議に付さなければなりません(特別拒否権の対象)。

予算を削るということは、必要な事業を行えない可能性があるから、再議に付すことが義務となっています。

非常災害対策・感染症予防費の削除減額議決

非常災害対策費とは、災害に対する応急、復旧の施設のための費用です。

感染症予防費とは、感染症患者に対して、法に基づく入院勧告又は入院措置を実施した場合において、医療費は公費負担となり、その費用のことです。

これらの経費を削除したり、削減したりする議決をしたときは、長は、理由を付して、必ず再議に付さなければなりません(特別拒否権の対象)。

もし、再議で再度、経費の削除・減額の議決がなされた場合、長は、その議決を不信任の議決をみなすことができます

地方公共団体の長に対する不信任議決と議会解散

「地方公共団体の長」と「議会」が対立して、議会が長を辞めさせたい!という場合、議会は長に対する「不信任議決」により、長を失職させることができ、逆に長は、議会を解散させる「議会解散権」を持ちます。

※不信任議決と不信任決議は同じと考えて大丈夫です。

長に対する不信任議決の流れ

まず、不信任議決をする場合、議員数の3分の2以上が出席し、その4分の3以上の同意が必要です。

議会が、長の不信任議決をしたときは、議長は直ちにその旨を長に通知しなければなりません。

長は、その通知を受けた日から10日以内議会を解散することができます。解散しない場合は、その10日が経過した日に長は失職します。(長の失職後、長の選挙が行われる)

上記、長が議会を解散させた場合、議会の選挙が行われ、解散後初めて招集される議会において、再度不信任議決(議員数の3分の2以上が出席し、その過半数の同意)があった場合、長は議長から通知があった日において失職します。

長の補助機関(副知事・副市町村長、会計管理者)

地方公共団体の長の補助機関は、長が行うこと(長の職務執行)を補助する機関です。

そして、長の補助機関には、下図の通り、「副知事・副市町村長」「会計管理者」「職員」「出納員その他の会計職員」等があります。


副知事・副市町村長

都道府県には副知事が、市町村には副市町村長が置かれ、定数は条例で定めます。
ただし、条例で、副知事・副市町村長を置かないこともできます。

副知事・副市町村長は、長の職務を代理することなどの職務を行います。

副知事・副市町村長は、長が、議会の同意を得て選任し、任期は4年です。ただし、長は任期中でも解職できます。

会計管理者

会計管理者とは、その地方公共団体の会計事務を行うトップとイメージすると分かりやすいです。普通地方公共団体には、会計管理者を1人必ず置きます。

会計管理者は、長の補助機関である職員から、長が任命します。

会計管理者は、お金に関する事務を行うため、「長、副知事若しくは副市町村長又は監査委員」と「親子、夫婦又は兄弟姉妹」の関係にある者は、会計管理者となることができず、もし、上記関係が生じたときは、会計管理者の職を失います

出納員その他の会計職員

会計管理者の事務を補助する機関で、長の補助機関である職員から、長が任命します。

町村出納員を置かないこともできます

地方公共団体の議会の運営の5つの原則

地方公共団体の議会の運営には下記5つの原則があります。

  1. 会議公開の原則
  2. 定足数の原則
  3. 多数決の原則
  4. 一事不再議の原則
  5. 会期不継続の原則

会議公開の原則

普通地方公共団体の議会の会議は、公開により行います。
ただし、議長または議員3人以上の発議により、出席議員の3分の2以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができます。

定足数の原則

普通地方公共団体の議会は、議員の定数の半数以上の議員が出席しなければ、会議自体開くことができません。

※定足数とは、会議で議事を進め議決するのに必要な最小限の人数です。

多数決の原則

普通地方公共団体の議会の議事は、原則、出席議員の過半数で決定し、可否同数(賛成も反対も同じ数)の場合は、議長が決します。

例外的に特別多数を要するものは下記の通りです。

議員の半数の出席とその3分の2以上の多数の同意
地方公共団体の事務所の位置決定又は変更に関する条例の制定
秘密会の開催
議員の失職、資格決定
条例の制定・改廃または予算に関する再議
条例で定める特に重要な公の施設の廃止、長期かつ独占的な利用をさせること
議員の3分の2の出席過半数の同意
地方公共団体の長に対する再度の不信任議決
議員の3分の2の出席とその4分の3の同意
役員の解職請求に対する同意
議員の除名
地方公共団体の長に対する最初の不信任議決

一事不再議の原則

一度議決された事項は、同一会期中に再度議決してはいけません(再議にかけてはいけない)。これを一事不再議の原則と言います。

会期不継続の原則

会期中に議決に至らなかった事件は、次の会期に継続しません。会期はそれぞれ独立しているということです。

地方公共団体の議会の種類と招集、会期

地方公共団体の議会には、定例会と臨時会の2つがあります。

定例会

定例会とは、毎年定期的(定例的)に招集される議会で、条例で定める回数を招集しなければなりません。

臨時会

臨時会とは、必要がある場合に、あらかじめ告示された付議事件に限って招集されるものです。

通年会期制

地方公共団体の議会は、条例で、定例会および臨時会とせず、毎年、条例で定める日から翌年の当該日の前日まで(結果的に1年中)を会期とすることができます。

1年中議会活動ができるので、条例で、定期的に会議を開く日(定例日)を定めなければなりません。

また、地方公共団体の長(知事や市町村長)は、議長に対し、会議に付議すべき事件を示して、定例日以外の日に会議を開くことを請求することができ、その請求があったとき、議長は一定期間内に会議を開かなければなりません。

議会の招集

議会の招集とは、議員を議場に集めることを言います。

  1. 通常、議会の招集は、地方公共団体の長が行います。(地方公共団体の長の議会招集権
  2. また、議長は、議会運営委員会の議決を経て、地方公共団体の長に対して、臨時会の招集を請求できます。(議長の臨時会招集権
  3. さらに、議員定数の4分の1以上の者は、長に対して、会議に付すべき事件を示して、臨時会の招集を請求できます。(議員の臨時会招集権

2、3について、請求を受けた地方公共団体の長は、請求のあった日から20日以内に臨時会を招集しなければなりません。

もし、長が招集しないときは、2の場合、議長が臨時会を招集することができ(任意)、3の場合、議長は必ず臨時会を招集しなければなりません(義務)。

会期

会期とは、議会が活動をする期間を言います。そして、通年会期の場合は、上記の通り、1年中議会が活動できるということです。

会期の決定は、議会の権限なので、議会の活動期間は議会で決めるということです。また、定例会・臨時会に関係なく、会期を延長することも議会で決めます。

議会の委員会(常任委員会、議会運営委員会、特別委員会)

地方公共団体の議会では、効率的に議会を運営するために、条例で、常任委員会議会運営委員会及び特別委員会を置くことができます。これらは、任意で設置するため、必ずしも設置しなければならないわけではありません。

そして、いずれの委員会も、予算案以外であれば議案を提出することができます


常任委員会

常任委員会は、担当部門の事務の調査、議案等を詳しく審査する組織で、各地方公共団体ごとに、色々な種類の常任員会があります。例えば、総務委員会・市民福祉委員会・文教経済委員会・建設水道委員会等、名称も各地方公共団体ごと様々です。

そして、地方公共団体の議員は、常任委員を複数兼ねることができます。

議会運営委員会

議会運営委員会は、「議会の運営に関する事項」「議会の会議規則、委員会に関する条例等に関する事項」「議長の諮問に関する事項」について調査し、審査する組織です。

特別委員会

特別委員会は、原則、会期中に限って、議会の議決により付議された事件を審査します。ただし、例外的に、特定の事件については、議会の閉会中も審査することができます

議長と副議長(地方公共団体の議会)

地方公共団体の議会の議長と副議長について、行政書士の試験のポイントとなる部分は下記内容です。

議長と副議長の選び方

議会は、議員の中から、議長および副議長1人ずつ選挙で選ばなければなりません。

議長と副議長の任期

  • 議長および副議長の任期は、議員の任期(4年)によります。
  • 議長およぶ副議長は、議会の許可を得て辞職することができます。
  • 副議長は、議会の閉会中においては、議長の許可を得て辞職できます。

議長の権限

  • 議長は、議場の秩序を保持し、議事を整理し、議会の事務を統理し、議会を代表します。
  • 議長は、委員会に出席し、発言することができます。
  • 「普通地方公共団体の議会又は議長」の「処分又は裁決」に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟については、議長が当該普通地方公共団体を代表します。つまり、議会や議長の処分等により、訴えられた場合、議長が被告である普通地方公共団体を代表して、裁判に出るということです。

副議長

議長に事故があるとき、又は議長が欠けたときは、副議長が議長の職務を行います。