国家賠償法

相互保証主義(国家賠償法6条)

国家賠償法6条では、外国人が被害者である場合、相互保証があるときに限って、国家賠償法が適用されるとしています。

国家賠償法第六条
この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する。

分かりやすくいうと、外国Aにおいて、日本人が国家賠償を受けることができる場合、外国Aの外国人が、日本で国家賠償を受けることができるということです。

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国家賠償法と民法の関係(国家賠償法4条)

国家賠償法1条では、公務員による公権力の行使によって他人に損害を与えた場合の国または公共団体の賠償責任を規定しており、
国家賠償法2条では、公の営造物の設置・管理の瑕疵によって他人に損害を与えた場合の国または公共団体の賠償責任を規定しています。

そして、今回解説する、国家賠償法4条では、①公権力の行使とは言えない場合の損害や②公の営造物に該当しない場合の損害については、民法のルールが適用されると規定しています。

国家賠償法第四条
国又は公共団体の損害賠償の責任については、前三条の規定によるの外、民法の規定による。

使用者責任の適用

例えば、公務員が、庁舎間を車で移動中に事故を起こしてしまった場合、民法715条の使用者責任が適用されます。
→車の運転は、公権力の行使とは言えないから。

工作物責任の適用

例えば、「老朽化してすでに使用されていない市営住宅」の塀が崩れて、通行人に損害を与えてしまった場合、民法717条の工作物責任が適用されます。
→「老朽化してすでに使用されていない市営住宅」は、公の目的のために使用されているわけではないので、公の営造物に該当しないから。

その他の民法の適用

上記以外にも、過失相殺(民法722条)、不法行為による損害賠償請求権の期間の制限(724条)なども適用されます。

失火法の適用(国賠法5条)

上記民法の中には、失火法といった特別法も含みます。

例えば、消防職員の消火ミスによって火災の再燃について判例(最判昭53.7.17)では「公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任については、国家賠償法四条により失火責任法が適用され、当該公務員に重大な過失のあることを必要とするものといわなければならない。」としています。

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国家賠償法2条(営造物の設置・管理の瑕疵に基づく賠償責任)

国家賠償法1条では、「公務員による違法な公権力の行使」という行為に着目しました。一方、国家賠償法2条では、「営造物の設置管理の瑕疵」という物の状態に着目します。

国家賠償法
第二条 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
2 前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。

行政書士の試験では、まず、「公の営造物」とは何か?を頭に入れる必要があります。その後、瑕疵に関する具体的な判例を覚えれば得点できます。

公の営造物とは?

「公の営造物」とは、公の目的に供されている有体物を言います。
「有体物」とは「物や設備」と考えていただいて大丈夫です。

そして、「公の営造物」と「公物」は同義(同じもの)で、大きく分けて「自然公物」と「人工公物」があります。

自然公物 河川、湖、沼、海、砂浜等
人工公物 道路、上下水道、庁舎、庁舎内の机・椅子、校舎、公用車、けん銃等

行政書士試験における注意点

公の営造物かどうかの判断基準は「公の用に供されているか(国民みんなが使うものか)」です。

つまり、所有権が誰かは問題ありません。

例えば、道路が私道(私人が所有する道路)であっても、公の用に供されているのであれば、公の営造物です。このように、私人が所有する公の営造物を「私有公物」と言います。

一方、公の用に供されていない国公有地などは、公の営造物に含みません。
(=行政活動に用いられていない「普通財産」は、公の営造物に含まれない)

そして、判例(最判昭59.11.29)では、「公の営造物の設置又は管理は、必ずしも国又は公共団体が法律上の権限に基づいて行うことを要せず事実上これを管理することになったときは管理責任を負う。」としています。例えば、上記私道もこれに当たる場合があります。私道のため、法律上は、国や地方公共団体は、管理義務がありません。しかし、事実上、私道を管理する場合、国や地方公共団体が管理責任を負います。

設置又は管理の瑕疵とは?

公の営造物の「設置又は管理の瑕疵」とは、公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることを言います。これは、客観的な瑕疵が存在すれば足り、損害の発生に関して設置者や管理者の過失の有無は関係ありません(無過失責任)。つまり、設置者や管理者に過失(落ち度)がなかったとしても、公の営造物の設置に瑕疵があったり、管理に瑕疵があれば、国等が賠償責任を負うことになります。

ただし、地震や大洪水といった自然災害のような不可抗力から生じた損害について、国賠法の対象にはなりません

この点は具体例として判例を勉強していくとよいでしょう。

瑕疵に関する判例

  • 工事標識板が道路上に倒れたまま放置され、道路の安全性を著しく欠如する状態であったとしても、時間的に道路を安全な状態に復旧するのが不可能な場合、管理に瑕疵があったと認めることはできない。(最判昭50.6.26)
  • 道路の瑕疵の判断について、国や公共団体が予算不足だからといって、免責にはならない(最判昭50.7.25)
  • 故障車が国道上に長時間にわたって放置され、道路の安全性を著しく欠如する状態であったにも関わらず、道路の安全性を保持するために必要な措置を全く講じなかった場合道路の管理に瑕疵があると認められる。(最判昭50.7.25)
  • 営造物自体に危険性がなくても、一定の限度を超える営造物の利用によって、利用者や第三者が損害を受ける危険性がある場合には、その営造物には設置又は管理の瑕疵があると認められる。(最判昭56.12.16)
    →利用者以外の第三者に対する損害も対象となりえる
  • 瑕疵の存否については、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきものである。(最判昭61.3.25:「点字ブロック」と「設置管理の瑕疵」
    →これは、点字ブロックを駅のホームに設置していなかったことで、視力障害者がホームから転落した事故において、点字ブロックがなかったことが営造物の瑕疵に当たるかの判断基準の一つとして、この点字ブロックの普及の程度も考慮に入れるとしています。
  • 普通河川の管理について、普通地方公共団体の条例で、河川法の適用河川や準用河川(普通河川よりも大きい河川で国等が管理する河川)より厳しい管理を定めることは、河川法に違反するので、許されない。(最判昭53.12.21)
  • 未改修河川は、単に物的安全性の有無によってのみ管理の瑕疵が判断されるのではなく、原則として過渡的安全性(一時的な対策)で足りる。(最判昭59.1.26:未改修河川の安全性(大東水害訴訟))
  • 改修済み河川改修がなされた段階で想定されていた洪水に対応できる安全性を備えていたかどうかを基準とする。(最判平2.12.13:改修済河川の安全性(多摩川水害訴訟)
  • 国家賠償法2条1項にいう「公の営造物の設置又は管理に瑕疵」があるとは、公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、右の安全性を欠くか否かの判断は、当該営造物の構造、本来の用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的、個別的に判断すべきである。本来の用法に従えば安全である営造物について、これを設置管理者の通常予測し得ない異常な方法で使用した場合、国などは国家賠償法2条の責任を負わない最判平5.3.30:テニスコート審判台転倒事件

国賠法2条の求償

「公の営造物の設置又は管理に瑕疵があった」と認められる場合、国賠法2条の責任が成立し、被害者は、営造物の設置管理する国や公共団体に対して損害賠償を請求できます。そして、国や公共団体が賠償した場合、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償することができます。

営造物の設置者・管理者と費用の負担者が異なる場合(国賠法3条)

例えば、河川とダムについてA県が河川管理者として管理していて
その費用の2分の1は国が負担しているとします。
そして、「A県職員であるB」の誤ったダムの放流操作によって、周辺住民に損害を与えてしまった場合、A県だけでなく、国(費用負担者)も損害賠償責任を負います

そして、賠償した者は、責任になる者に対して求償することができます。例えば、上記事例で、国が損賠賠償した場合、国は、A県に求償できます。

国家賠償法
第三条 前二条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。
2 前項の場合において、損害を賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有する。

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国家賠償法1条(公権力の行使に基づく賠償責任)

国家賠償法1条は、条文の内容とその判例が、行政書士の試験で問われます。そのため、条文と判例を見ていきます。個別の判例については、リンク先が具体例となっています。

国家賠償法
第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
2 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

国家賠償責任の法的性質

上記国家賠償法(国賠法)1条の条文の通り、公務員の職務上の行為で、他人に損害を与えた場合、国や公共団体が賠償責任を負うことになっています。つまり、本来公務員が負うべき責任を国や公共団体が代わって賠償責任を負うこととしています。これを代位責任と言います。

加害者の特定性

代位責任説によると、違法行為を行った公務員自身に損害賠償責任が生ずることが前提なので、論理的に考えると、加害者が特定できない場合、損害賠償責任を問えないことになります。しかし、被害者保護の観点から、厳密な特定までは不要としています(最判昭57.4.1:「加害行為の不特定」と「国等の損害賠償責任」)。

公共団体とは?

公共団体とは、地方公共団体(都道府県や市町村)、公共組合(土地区画整理組合、国民健康保険組合)、独立行政法人だけでなく、弁護士会も含まれます。

国家賠償法1条の要件

国賠法1条に基づく責任が生ずるための要件は、下記5つです。

  1. 公権力の行使にあたる公務員の行為であること
  2. 公務員が「職務を行うについて」行った行為であること
  3. 公務員に故意または過失があること
  4. 公務員の行為が違法であること
  5. 損害が発生したこと

上記の中において、行政書士で重要なキーワードを抜粋すると、下記6つです。これから細かく解説していきます。

  1. 公務員
  2. 公権力の行使
  3. 職務を行うについて(職務関連性)
  4. 故意または過失
  5. 違法(違法性)

公務員

公務員とは、地方公務員、国家公務員はもちろん、「公権力の行使」に当たる行為を行う民間人も含まれます。

例えば、建築確認を行う民間の指定確認検査機関による建築確認により、相手方に損害を与えてしまった場合、地方公共団体が国家賠償責任を負う判例(最判平17.6.24)があります。つまり、建築確認という公権力の行使を行う「指定確認検査機関」も「公務員」として扱っているわけです。

また、弁護士会の懲戒委員会の委員が、弁護士に対して懲戒処分する場合、当該委員は、懲戒処分という一種の公権力の行使を行っているため、当該委員を「公務員」として、弁護士会(公共団体)が賠償責任を負う判例(東京高判平19.11.29)があります。

公権力の行使

公権力の行使とは、国賠法1条では、「国家賠償法2条の対象となるもの(公の営造物の設置・管理)および私経済作用を除くすべての行政作用」を指します(判例・通説)。

分かりやすく言えば、下記2つ以外のすべての行政作用ということです。

  1. 国家賠償法2条の対象となるもの(公の営造物の設置・管理)
  2. 私経済作用

私経済作用とは?

例えば、「国公立病院が行う医療行為」や「公務員が事務用品を購入する行為」が私経済作用で、民法が適用されます。これらの行為は、私人と同等の立場で行い、公権力の行使とは言えないからです。

上記の通り、「国家賠償法2条の対象となるもの」および「私経済作用」を除くすべての行政作用なので、「行政手続法における公権力の行使」、「行政不服審査法における公権力の行使」、「行政事件訴訟法における公権力の行使」と比べて、国賠法1条の方が対象範囲が非常に広くなるわけです。

公権力の行使の具体例

国賠法1条では、下記行為も公権力の行使として損害賠償の対象となります。

  • 行政指導
  • 国公立学校・市立学校の教育活動(最判昭58.2.18、最判昭62.2.6、最判平5.2.18)
  • 国会議員による立法行為(最判昭60.11.21、最判平17.9.14)
  • 裁判所による裁判(最判昭57.3.12)
  • 「拘置所職員たる医師」による「拘留されている患者」に対する医療行為(最判平17.12.8)
  • 県から委託を受けた社会福祉法人の施設職員による養育監護行為(最判平19.1.25)

公権力の行使に該当しない場合どうなるか?

公権力の行使にあたる 国家賠償法1条の対象
公権力の行使にあたらない 民法709条不法行為責任)の対象

職務を行うについて(職務関連性)

国賠法1条では、公務員が、職務上の行為によって、国民に損害を与えた場合を対象としているのですが、加害行為が職務で行われた場合はもちろん、職務との間に一定の関連性職務関連性)があればよいとしています。

外形標準説(外形理論)

また、判例(最判昭31.11.30:「公務員の私利を図る目的の行為」と「国家賠償法」)では、加害行為が客観的に職務行為の外形を備えるものであればよく、実際には職務上の行為でなかったとしてもよいとしています。

このように、外見から判断して、職務行為に見える場合も「職務上の行為」として、賠償責任の対象としています。これも被害者救済の見地からきています。

故意または過失

国家賠償責任は、公務員の行った不法行為(民法709条)が前提なので、公務員の故意または過失が要件となってきます。

(不法行為による損害賠償)
民法第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

公務員が上記不法行為を行った場合、「公務員個人」に賠償責任を負わせるよりも「国や公共団体」に責任を負わせた方が被害者を保護できるということです。

故意とは?

民法上の故意とは、一定の侵害結果の発生を認識しながらそれを認容して行う場合(その心理状態)を言います(通説)。そして、国賠法も同様と考えてよいです。

過失とは?

過失とは、判例(最判平5.3.11:「所得税更正処分の取消し」と「国家賠償法」)では、公務員が職務上要求される注意能力を欠く場合を指します。

細かいことをいえば、客観的過失があったかどうかで判断し、主観的過失(公務員自身の注意能力を基準としている)ではないということです。

違法(違法性)

国家賠償責任は、公務員の行った不法行為(民法709条)が前提なので、公務員の違法行為が要件となってきます。

これは法令違反だけでなく、裁量の範囲を逸脱・濫用した場合最判昭52.12.20:神戸税関事件)や社会的相当性を欠く場合最判昭61.2.27:「パトカー追跡」と「国家賠償法」)も違法とされています。

公務員の不作為・権限不行使は違法となるか?

最判平元.11.24:「宅建業法の免許基準」と「国家賠償法」)や(最判平7.6.23)の判例では、公務員の不作為によって、私人に損害が発生した場合も国家賠償の対象としており、また、法律上与えられた権限を行使せずに(権限不行使で)損害が発生した場合も同様に国家賠償の対象としています。

公務員に対する求償

国や公共団体が私人(国民)に対して損害賠償した場合、公務員に故意又は重大な過失があったときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償できます。

行政書士の試験対策として注意点としては、下記部分です。

  • 国等から公務員に対して求償できるが、公務員から国等に対しては求償できない
  • 公務員に故意または重過失があった場合のみ、国等は求償できるが、公務員に故意がなく、かつ、無重過失の場合は求償できない

<<国家賠償と損失補償の全体像 | 国家賠償法2条3条>>

国家賠償と損失補償の全体像

行政書士のここまでの勉強、行政不服審査法行政事件訴訟法と勉強してきました。これらは、争訟による救済制度です。もし、公権力の行使によって、金銭的に損害を受けた場合、行政不服審査法や行政事件訴訟法での救済だけでは不十分です。そのため、国家賠償や損失補償という制度があります。

そもそも、国家賠償法は、憲法17条を受けて制定されました。

憲法17条
何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

一方、損失補償は、憲法29条3項で定めております。しかし、国家賠償法のように、一般法はなく、個別の法律で損失補償の規定がされています。ただし、たとえ、個別法に損失補償の規定がない場合も、上記憲法29条3項を根拠に(直接適用して)損失補償されることもあります。

憲法29条3項
私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

国家賠償 違法行為による損害の賠償を求める制度
損失補償 適法行為ではあるもの損失を受けた場合に補償を求める制度

そして、国家賠償には、「国家賠償法1条による損害賠償責任」と「国家賠償法2条による損害賠償責任」があります。

1条 公権力の行使について、故意または過失により他人に損害を与えた場合(過失責任
2条 営造物の設置管理の瑕疵により他人に損害を与えた場合(無過失責任

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