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裁判所(司法権が及ぶかどうか)

憲法76条
すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

司法権とは?

司法権とは、具体的な争訟について、法を適用し、宣言することによって争訟を裁定する国家の作用のことを言います。分かりやすく言えば、具体的な事件について、法律を使って解決する行為のことです。

具体的な争訟とは?

そして、具体的な争訟を「法律上の争訟」という言い方をしますが、「①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争」であって「②法律を適用することによって終局的な解決をすることができるもの」です。

例えば、あなたが、Aさんに100万円を貸して返してくれないため、裁判をしようとしたとします。この場合、あなたは、Aさんに対して「100万円を返してもらう権利」があります。つまり、上記①を満たします。そして、お金の貸し借りについて、民法という法律を使えば、解決できます。そのため②も満たします。したがって、これは、具体的な争訟と言えるわけです。

具体的な争訟に当たらない事例(判例)

下記判例の通り、「具体的事件性がなく抽象的な事件」「宗教の対象の価値、宗教上の教義の判断、宗教上の地位の確認」については、具体的な争訟(法律上の争訟)に当たらないとして、司法権が及びません。(却下される)

  • 自衛隊の前進である警察予備隊の設置について、当時の日本社会党の代表者Xが、警察予備隊の設置及び維持は、憲法9条に反するとして、国に対して無効確認の訴えを提起した。これに対して最高裁は、
    「わが裁判所が現行の制度上与えられているのは司法権を行う権限であり、そして司法権が発動するためには具体的な争訟事件が提起されることを必要とする」として、上記でも解説した通り、裁判で審理するためには、具体的な争訟である必要があるということです。また、
    「裁判所は具体的な争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法及びその他の法律命令等の解釈に対し存在する疑義論争に関し抽象的な判断を下すごとき権限を行い得るものではない。」として、将来的にそのような論争が起こり得るとしても、抽象的なことを判断する権限は裁判所にはない、としています。さらに、
    「わが現行の制度の下においては、特定の者の具体的な法律関係につき紛争の存する場合においてのみ裁判所にその判断を求めることができるのであり、裁判所が、かような具体的事件を離れて抽象的に法律命令等の合憲性を判断する権限を有するとの見解には、憲法上及び法令上何等の根拠も存しない。」として、裁判所が違憲立法審査権を行使するには、実際に起こった具体的な争訟事件が必要ということです。言い換えると、わが国は、「付随的違憲審査制」を採用している、と判旨しています。
    結局のところ、今回の訴えについては、具体的な争訟に当たらないとして、却下されました。(最大判昭27.10.8:警察予備隊訴訟
  • 国家試験の合格、不合格の判定は、司法審査の対象となるかについて、最高裁は「国家試験の合格・不合格の判定は、学問・技術上の知識、能力、意見等の優劣、当否の判断を内容とする行為であるから、試験実施機関の最終判断に委ねられる」として、法令を適用することによって解決することができない事案なので、裁判の対象とはなり得ないとしました。(最判昭41.2.8:技術士国家試験事件)
  • 創価学会の本尊である「板曼荼羅(いたまんだら)」を安置するために「正本堂」を建築しようと、創価学会が、会員に建築費の寄付を募りました。
    寄付をした創価学会の会員は「板まんだらは偽物だ」として、寄付金の贈与の錯誤無効を主張し不当利得の返還を請求した。
    これに対して最高裁は「本件訴訟は、具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争の形式をとっており、信仰の対象の価値または宗教上の教義に関する判断は、錯誤無効による不当利得の返還請求を認めるか否かの前提条件にとどまっているとされているが、実際、問題、信仰の対象の価値等に対する判断が、本件を判断する上で必要不可欠なものと認められ、本件訴訟の争点および当事者の主張立証もこの判断に関するものがその核心となっていると認められることからすれば、結局、本件の訴訟は、その実質において法令の適用による終局的な解決の不可能なものであって、裁判所法3条にいう『法律上の争訟』にあたらない」とした。(最判昭56.4.7:板まんだら事件

司法権の限界

具体的な争訟であったとしても、「他の権利との関係」や「制度上の理由」から裁判所が判断を回避する場合があります。これを司法権の限界と言います。

憲法に規定された限界

下記については、裁判所による司法権は及びません。(裁判所は裁判をしない)

国際法上の限界

例えば、「外交使節の裁判権免除」。外国から日本に派遣された外交官が犯罪を犯した場合、日本の裁判所で裁判をせず、派遣元の国で裁判を行います。

憲法解釈上の限界

天皇と民事裁判権

天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることにかんがみ、天皇には民事裁判権は及ばない。(最判平元.11.20)

自律権の問題

自律権とは、懲罰や議事手続きなど、国会や各議院の内部事項について自主的に決定できる権能を言います。

議院の自律権はこちら>>

憲法上、国会等に与えられた自律権については、それぞれの組織が決定権を持っているため、司法権は及びません。(最大判昭37.3.7:警察法改正無効事件

ただし、「議院の除名処分」「出席停止処分」は司法審査が及びます。(最大判昭35.10.19:地方議会議員懲罰事件)(最大判令2.11.25:地方議会議員出席停止事件

裁量行為

憲法が、立法権や行政権に対して一定の裁量を認めている場合があります。裁量の範囲内の行為については当か・不当かが問題になるだけで、違法性は問いません。そのため、原則、裁判所は審査できません。

統治行為(政治行為)

統治行為とは、高度な政治性のある国家行為で、例えば、「衆議院の解散行為」です。これは、国会等の判断を尊重すべきところなので、裁判所の審査は及びません。(最大判昭34.12.16:砂川事件最大判昭35.6.8:苫米地事件

部分社会の法理

部分社会の法理とは、ある団体内部の紛争で、団体の自立的な判断を尊重すべきとして、司法審査が及ばない考えを言います。ただし、一般市民秩序と直接関係する問題に対して司法審査が及びます。(最大判昭35.10.19:地方議会議員懲罰事件最判昭52.3.15:富山大学事件最判昭63.12.20:共産党袴田事件

司法権の限界に関する重要判例

  • 1954年(昭和29年)に改正された新警察法について住民が法律として無効であるとして争われた。これに対して最高裁は「新警察法は両院において議決を経たものとされ、適法な手続によって公布されている以上、裁判所は両院の自主性を尊重し、議事手続に関する事実を審理してその有効無効を判断すべきでない」として司法権が及ばないとした。(最大判昭37.3.7:警察法改正無効事件
  • 地方議会が議員Xの出席停止とする懲罰を決議し、Xがこの決議の無効の確認および取消しの訴えをした。
    これに対して最高裁は「自律的な法規範をもつ社会ないしは団体に在つては、当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せ、必ずしも、裁判による審査が適当でないものがある。本件における出席停止の如き懲罰はまさにそれに該当するものと解するを相当とする。」として、議員の出席停止処分は、議院内部の話として司法審査が及ばないとしています。
    また、一方で、
    「議員の除名処分の如きは、議員の身分の喪失に関する重大事項で、単なる内部規律の問題に止らない」として議員の除名処分については、議院内部の話ではなく、司法審査が及ぶとしています。(最大判昭35.10.19:地方議会議員懲罰事件
  • デモ隊員がアメリカ空軍基地内へ侵入した行為が、日米安保条約に違反された事件について、そもそも、日米安保条約が違憲ではないかと争われた。
    これに対して最高裁は「日米安保条約は高度の政治性を有するものであって、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限り、司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものである」として、日米安保条約は高度な政治性を有するものなので、原則、司法権が及ばないとしつつ、一見極めて明白に違憲無効であると認められる場合は、司法権が及ぶとしました。(最大判昭34.12.16:砂川事件
  • 吉田内閣時代、吉田自由党と鳩山自由党が対立しており、吉田自由党は密かに選挙の準備を進めておき、準備の整っていない鳩山派に打撃を与える目的で、抜き打ちで衆議院の解散を行った。これに対して最高裁は「衆議院の解散は、極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であって、かくのごとき行為について、その法律上の有効無効を審査することは司法裁判所の権限の外にありと解すべきである」として、衆議院の解散については司法審査の対象外と判示しました。(最大判昭35.6.8:苫米地事件)
  • 富山大学のA教授が、大学から授業担当停止処分を受け、学生への代替科目履修の指示を行った。しかし、A教授は、授業担当停止処分に従わず、授業を続行し、学生Xもその授業を受け、A教授からの成績評価を受けた。しかし、学校は、Xに対して単位認定をしなかった。これに対して、Xは学校に対して単位認定するよう求めた。
    これに対して、最高裁は「自律的な法規範を有する特殊な部分社会における法律上の争訟のごときは、それが一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、その自主的、自律的な解決に委ねるのを適当とし、裁判所の司法審査の対象にはならないものと解するのが、相当」
    また、
    「単位授与(認定)行為は、特段の事情のない限り、純然たる大学内部の問題として、大学の自主的、自律的な判断に委ねられるべきものであって、裁判所の司法審査の対象にはならないものと解するのが相当」として、一般市民法秩序と直接関係しない単位認定は、大学内部の問題(部分社会の法理)として司法審査が及ばないとしました。(最判昭52.3.15:富山大学事件
  • 日本共産党の党員Xが、党規律違反を理由に、党から除名処分を受けた。この除名処分について、最高裁は「政党の結社としての自主性にかんがみると、政党の内部的自律権に属する行為は、法律に特別の定めのない限り尊重すべきである」とし
    さらに
    「政党が組織内の自律的運営として党員に対してした除名その他の処分の当否については、原則として自律的な解決に委ねられ、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばないというべき」とし
    政党の党員に対する除名処分は、原則、司法審査の対象とならず一般市民法秩序と直接の関係を有する場合は、例外的に司法審査の対象となる判示した。(最判昭63.12.20:共産党袴田事件

<<内閣の権能 | 司法権の独立>>

内閣の権能

内閣は、一般行政事務の他、下記の15の事務を行います。

  1. 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。(73条
  2. 外交関係を処理すること。
  3. 条約を締結すること。ただし、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
  4. 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
  5. 予算を作成して国会に提出すること。
  6. この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
  7. 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
  8. 天皇の告示行為に対する助言と承認(3条7条
  9. 国会の召集を決定すること。(7条2号
  10. 参議院の緊急集会を求めること。(54条2項
  11. 衆議院の解散をすること(7条3号)
  12. 最高裁判所の長たる裁判官を指名すること、およびそれ以外の裁判官を任命すること(6条2項79条1項80条
  13. 予備費を支出すること(87条
  14. 決算を国会に提出すること(90条1項
  15. 国会および国民に財政状況を報告すること(91条

法律を誠実に執行し、国務を総理する

国会で法律を作り、内閣がそれを執行するという流れです。

「国務を総理する」とは、行政事務を統轄し、行政各部を指揮監督するといったイメージです。

そして、「法律」については、あとで解説する「政令」同様、執行の責任を明確にするため、すべての主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署します。(74条

外交関係の処理

外交関係の処理は、内閣の権限です。

条約の締結

内閣は条約を締結することができます。そして、この条約は法律に優位すると解釈されています。つまり、この条約と法律が矛盾する場合、条約が優先します。そのため、法律制定機関である国会の事前承認もしくは事後承認が必要となります。

法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を掌理すること

ここでいう「法律」とは、「国家公務員法」を指します。

また、「官吏(かんり)」とは「国家公務員」と考えて大丈夫です。

「掌理(しょうり)」とは、「とりまとめる」という意味です。

つまり、内閣は、国家公務員法の基準に従って、国家公務員に関する事務のとりまとめを行うということです。

予算を作成して国会に提出

予算の作成権限は内閣に属しますが、国会の議決を受けることが必要です。(60条

政令の制定

内閣は、政令を制定するのですが、この政令については、制定・執行の責任を明確にするため、すべての主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署します。(74条

政令とは?

政令とは、内閣の制定する命令です。

国会中心立法の原則から内閣が政令を制定するにあたっても国会が関与する必要があります。つまり、法律で定められた内容を執行するための細かい事柄を決める執行命令か、法律から委任を受けて細かい事柄を決める委任命令しか認められないと考えられています

大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定(恩赦の決定)

上記をまとめて「恩赦(おんしゃ)」と言います。恩赦とは、内閣の権限で(行政権により)、刑罰の全部又は一部を消滅若しくは軽減させることを言います。

このように、恩赦するかどうかは、内閣が決定します。

大赦とは?

大赦(たいしゃ)は、一定の犯罪者全体について刑を消滅させることを言います。

特赦とは?

特赦(とくしゃ)は特定の者について刑を消滅させることを言います。

国会の召集決定

憲法第7条2号
内閣の決定に基づき、国会の召集を行う。

国会の召集決定は内閣が行い、天皇が召集します。

参議院の緊急集会を求める

憲法第54条
2 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。

国会は衆議院と参議院で構成されていて、両議院は同時に活動します。そのため、衆議院が解散すると、参議院の会期も終了します。この間に、緊急事態が起こった場合に備えて、参議院のみ緊急集会を行うことができます。

内閣が緊急集会を決定します。

そして、緊急集会中は「国会」の会期中とはならないので、天皇の召集は不要です。

緊急集会の手続きについては、下記の通り、国会法で定められています。
内閣総理大臣が、集会の期日を定め、案件を示して、参議院議長に請求します(国会法第99条第1項)。請求を受けた議長はその旨を各議員に通知し、通知を受けた各議員は指定された期日に参議院に集会しなければなりません(国会法第99条第2項)

緊急集会の詳細はこちら>>

衆議院の解散

衆議院解散の決定を行うのは、内閣であり、解散をすることは天皇の国事行為です。

天皇は形式的儀式的に衆議院解散をさせるわけです。

衆議院解散の流れはこちら>>

最高裁判所長官の指名とそれ以外の裁判官の任命

憲法第6条
2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

憲法第79条
最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。

憲法第80条
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。

最高裁判所長官 内閣が指名天皇が任命
上記以外の裁判官 最高裁判所の指名した者の名簿から内閣が任命

高等裁判所の長官も最高裁判所の指名した者の名簿から内閣が任命します。

下級裁判所(高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所)の裁判官については、最高裁が指名するわけなので、裁判所の自主性を確保していると言えます。

予備費の支出

憲法第87条
予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
2 すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

予備費とは、予定外の支出及び予算を超過した支出へ対応するために準備しておく費用のことで、国の場合予備費は設けてもよいし、設けなくてもよいです(任意)。

そして、内閣は、この予備費を使う(支出)ことができるのですが、使った場合、あとで、国会の承諾を得る必要があります。もし、国会の事後承認が得られなかったとしてもその支出は有効であり、内閣の政治責任が問われることはあります。

地方自治法における予備費はこちら>>

決算を国会に提出

憲法第90条
国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。

決算とは、一会計年度(1年間)の収入と支出の結果です。この国の決算は、初めに会計検査院に検査してもらい、その後、内閣が、決算書類と検査報告書を国会に提出します。

会計検査院とは?

会計検査院は、国や政府関係機関の決算、独立行政法人等の会計などを検査報告する行政機関です。

そして、会計検査院は、憲法90条で設置をすることが規定されており、内閣から独立してています。そのため、内閣の統轄の下にはありません。

また、国家行政組織法上の「国の行政機関」ではない点も注意しましょう!

財政状況の報告

憲法第73条
内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。

憲法には、上記の通り、報告すべき財政状況の「具体的な内容」「方法」については規定されていません。

「報告する内容」については、例えば、毎会計年度の予算及び決算、国有財産や国の債務の状況、予算使用の状況などを報告します。

また、「報告の方法」については、財政法46条に規定されています。

財産法第46条
内閣は、予算が成立したときは、直ちに予算、前前年度の歳入歳出決算並びに公債、借入金及び国有財産の現在高その他財政に関する一般の事項について、印刷物、講演その他適当な方法で国民に報告しなければならない。
2 前項に規定するものの外、内閣は、少くとも毎四半期ごとに、予算使用の状況、国庫の状況その他財政の状況について、国会及び国民に報告しなければならない。

<<内閣総理大臣の権能 | 裁判所(司法権が及ぶかどうか)>>

内閣総理大臣の権能

内閣総理大臣の権能は下記6つあります。

  1. 他の国務大臣を任命し、罷免すること(68条
  2. 内閣を代表して、議案を国会に提出し、一般国務および外交関係について国会に報告すること(72条
  3. 内閣を代表して行政各部を指揮監督する。(72条
  4. 国務大臣に対する訴追に対して同意すること(75条
  5. 法律および政令に主任の国務大臣とともに連署すること(74条
  6. 議案について発言をするため議院に出席すること(63条

国務大臣の任命権

憲法第68条
内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

内閣総理大臣は、国務大臣を任命することもできるし、国務大臣を罷免(やめさせること)もできます

そして、任命も罷免も、閣議にかける必要はなく、内閣総理大臣の独断で決めることができます。これは、内閣総理大臣自身を中心に、自分の政策に近い者を国務大臣にすることで統一的な内閣の組織を作り、運営するためです。

内閣を代表して議案提出・国務報告・行政指揮監督を行う

憲法第72条
内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。

内閣総理大臣の行政各部への指揮監督は、閣議によって決定された方針をもとに行われます。(内閣法6条

内閣総理大臣の権能に関する判例

「内閣総理大臣が行政各部に対し、指揮監督権を行使するためには、閣議にかけて決定した方針が存在することを要するが、閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても、内閣総理大臣の右のような地位及び権限に照らすと、流動的で多様な行政需要に遅滞なく対応するため、内閣総理大臣は、少なくとも、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導、助言等の指示を与える権限を有するものと解するのが相当である。」として、閣議にかけて決定した方針でなくても、内閣の意思に反しない限り、総理は行政各部に指示をする権限を有するとしました。(最大判平7.2.22:ロッキード事件

国務大臣の訴追に対する同意

憲法第75条
国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。

在任中の国務大臣の訴追には、内閣総理大臣の同意が必要です。これは、内閣の一体性を確保することと、内閣総理大臣の長としての地位を強化するためです。

しかし、上記ルールは、在任中は訴追されないだけで、在任期間が過ぎれば、訴追されることはあります。

これは、上記「訴追の権利は害されない」という部分です。

訴追の権利は害されないとは?

犯罪が終わった時から一定期間を経過すると、その後起訴することができなくなります。これを公訴時効と言います。そして、「訴追の権利は害されない」とは在任中に公訴時効の期間が進まないだけで、起訴ができなくなるわけではないということです。起訴する権利自体は残るということです。

法律・政令に連署

憲法第74条
法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。

内閣総理大臣は、主任の大臣が署名した法律や政令に連署(一緒に署名)します。

これは、法律や政令の執行責任を明確にするためのものです。

そして、連署は、形式上のものなので、連署がなかったとしても、法律の効力には関係ないので、連署のない法律や政令であっても効力を有します

発言のために議院出席

憲法第63条
内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

内閣総理大臣および国務大臣は、いつでも議案について発言するため議院に出席することができます。つまり、議院からの呼び出しがなくても、自らの意思で議院に出席できるということです。

<<内閣の組織 | 内閣の権能>>

内閣の組織

憲法第66条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。 2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
内閣は、内閣総理大臣とその他の大臣(国務大臣という)で組織される合議体です。 合議体とは、複数の者が集まって意思決定をする組織を言います。 国務大臣の人数は原則14人以内で、特別必要がある場合は17人以内です。(内閣法2条2項) 内閣総理大臣と国務大臣は「文民」でなければならないのですが、文民とは、分かりやすく言えば、軍人でない人・自衛官でない人です。 そして、内閣総理大臣が国務大臣を選び国務大臣の過半数は国会議員でなければならないです。(68条 <<内閣と国会の関係(議院内閣制と内閣総辞職) | 内閣総理大臣の権能>>

国会議員の特権

国会議員は、すべての国民の代表として国会の仕事をこなさなければなりません。そこで、国会で自由に仕事をし、また、仕事中に邪魔されないように3つの特権が与えれています。

  1. 不逮捕特権(50条)
  2. 免責特権(51条)
  3. 歳費受領権(49条)

不逮捕特権

憲法第50条
両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

国会議員は、原則として、国会の会期中は逮捕されません。そして、会期前に逮捕された場合には、議院の要求によって釈放されます。

ただし、例外として、下記2ついずれかの場合は、会期中でも逮捕されます

  1. 議院外における現行犯逮捕の場合
  2. 議院の承諾がある場合

免責特権

憲法第51条
両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。

院外で責任を問われないとは、「刑事上の処分」や「民事上の賠償請求」を受けないという意味です。

また、国会議員は、弁護士法上の懲戒責任や公務員の懲戒責任を問われません。

免責特権に関する判例

国会議員Xの委員会での発言により、民間人Yが自殺した。Yの妻がXに対して損害賠償を求めて争われた。
この点について最高裁は、「発言がXの故意又は過失による違法な行為であるとしても、国会議員X個人は、Yに対してその責任を負わないと解すべきである」として、国会議員は責任を問われないとした。
また、「国会議員が国会の質疑、演説、討論等の中でした個別の国民の名誉又は信用を低下させる発言につき、国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が肯定されるためには、当該国会議員が、その職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とする。」として、国会議員が国会で行った質疑等において、個別の国民の名誉や信用を低下させる発言があったとしても、これによって当然に国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が生ずるものではないとした。

(最判平9.9.9:国会議員名誉毀損発言事件)

歳費受領権

憲法第49条
両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

歳費とは、分かりやすく言えば、給料です。これは、国庫から支払われています。

そして、国会議員の歳費については、在任中に減額されることもあります

一方、裁判官の報酬(給料)は、在任中に減額されることはありません。(80条2項

<<議院の権能 | 内閣と国会の関係(議院内閣制と内閣総辞職)>>

議院の権能(議院自律権と国政調査権)

これから、議院の権能を学ぶのですが、議院の権能とは、各議院が行えることです。 議院の権能として「議院の自律権」と「国政調査権」の2つがあります。

議院の自律権

衆議院と参議院それぞれの自立性を尊重するために、各議院の自律権を認めて、内部的なことは、各議院が自主的に決定できるようにしています。 具体的にどのような内容について自主的に決定できるのか、下記4つがあります。
  1. 議員の資格争訟裁判(55条)
  2. 役員の選任(58条1項)
  3. 議院の懲罰(58条2項)
  4. 議院規則の制定(58条2項)

議員の資格争訟裁判

憲法第55条 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
資格訴訟裁判とは、衆議院議員や参議院議員が、国会議員となる資格を有しているか(例えば、公務員と兼務していないか)を審議する裁判です。 ここで、国会議員の議席を失われるためには、出席議員の3分の2以上の賛成が必要です。 これは、衆議院は衆議院議員の資格に関する争訟を裁判でき、参議院は参議院議員の資格に関する資格の争訟の裁判ができます。

役員の選任

憲法第58条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
役員とは、副議長、常任委員長(内閣委員長、総務委員長、法務委員長など)、特別委員長(災害対策特別委員長等)、憲法審査会会長等があります。これらの役員を衆議院、参議院で選任します。 ※役員の解任については、国会法第30条の2で「各議院において特に必要があるときは、その院の議決をもって、常任委員長を解任することができる。」と規定されています。

議員の懲罰

憲法第58条 2 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
院内の秩序を乱した議員については、「戒告・陳謝・登院禁止・除名」といった懲罰をすることができます。そして、懲罰の中でも「除名」については、一番重い処分なので、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要としています。

議院規則の制定

これも、上記憲法58条2項に規定されています。 議院規則は、議会の各議院が、各々単独の議決により、会議その他の手続及び内部の規律に関して定める規則です。議院規則であり、議員規則ではないので注意しましょう! 具体的にどのような内容か知りたい方は下記からご確認ください! >>衆議院規則 >>参議院規則

国政調査権

憲法第62条 両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。
国政調査権とは、国会の持つ立法権や行政権が適切に行使されているかを監視・調査を行う権利です。これは、各議院それぞれに与えられています。 そして、各議院に国政調査権があるといっても、その権利には一定の限界があります(国政調査権の限界)。 どのような限界かは下記の通りです。

司法権と議院の国政調査権との関係

司法権に対しては、特にその独立性が憲法上強く保障されているため、裁判内容を批判するための調査は許されません。 現に裁判で係争中の問題に関して、裁判所と異なる目的であれば、議院が独自に並行的に調査することが許されます

検察権と国政調査権との関係

検察事務は、本来行政作用であるから、犯罪捜査、公訴提起、不起訴処分など検察事務の運営方法についてその妥当性を調査することは、原則として国政調査権の内容となります。ただし、裁判と密接に関連するため、司法権に対するのと同じように、慎重な配慮が要請されます。具体的には、下記3つについては、違法または不当調査となります。
  1. 起訴・不起訴について、検察権の行使に政治的圧力を加えることが「目的」と考えられる調査
  2. 起訴事件に直接関係する事項(対象)の調査
  3. 捜査の続行に重大な支障を及ぼす「方法」による調査

一般行政権と国政調査権との関係

国政調査権は上記検察事務以外の行政活動に対しては、民主的コントロールの必要性から広く行えます。従って、各省庁の監督下の公益法人(独立行政法人も含む)の活動に対しても、調査権を行使することができます。

人権と国政調査権との関係

国民の権利・自由を侵害するような手段・方法で国政調査権を行使してはならない<<国会の権能 | 国会議員の特権>>

国会の権能

国会の権能とは、国会が何をすることができるかということです。

具体的に国会は、下記8つのことを行うことができます。

国会の7つの権能

  1. 憲法改正を発議する(96条1項)
  2. 法律を議決する(59条1項)
  3. 内閣総理大臣を指名する(67条1項前段)
  4. 弾劾裁判所を設置する(64条1項)
  5. 財政を監督する(86条、90条等)
  6. 皇室の財産事項を議決する(8条)
  7. 条約を承認する73条3号
    条約の締結内閣の権能(仕事)なので注意!

弾劾裁判所の設置

弾劾裁判とは、裁判官に非行があった場合に、その裁判官を辞めさせるかどうかを判断する裁判です。そして、弾劾裁判所は、国会内に設置され、参議院・衆議院の両議院から選ばれた(選挙された)各7名(合計14名)の国会議員が裁判員となり、裁判をします。

財政の監督

財政監督については、下記条文を確認していただければ、どのような内容かはある程度イメージできると思います。だいたい、こんなことをするのかと分かれば大丈夫です。

憲法第83条
国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。

憲法第84条
あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

憲法第85条
国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。

憲法第86条
内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。

憲法第87条
予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
2 すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

憲法第88条
すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。

憲法第89条
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

憲法第90条
国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。

憲法第91条
内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。

<<衆議院の優越 | 議院の権能>>

会期の種類、議決の方法(定足数と表決数)

会期の種類

会期とは、国会の活動期間で、一年中国会を開いているわけではありません。一定の限られた期間のみ国会は開かれています。

そして、会期には、下記4つがあります。

  1. 毎年1回定期に召集される常会
  2. 必要に応じて臨時的に召集される臨時会
  3. 衆議院解散後、総選挙が行われた後に召集される特別会
  4. 衆議院が解散すると同時に参議院は閉会となるが、国に緊急の必要があるとき、参議院のみ召集される緊急集会

常会

憲法第52条
国会の常会は、毎年一回これを召集する。

常会は、一般的に通常国会と呼ばれることが多いです。そして、国会法で「毎年1月に召集される」ことと、「会期は150日」であることが規定されています。

臨時会

憲法第53条
内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

常会は上記の通り、1年のうち150日しか行いません。閉会した後も、国会の活動を必要とする自体が生じることもあります。そのような場合に、臨時会を行います。臨時会は、衆議院もしくは参議院のいずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があった場合、内閣は臨時会の召集決定をしなければなりません。

特別会

憲法第54条
衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。

衆議院が解散すると、解散の日から40日以内に、衆議院議員の総選挙が行われます。そして、その選挙の日に新しい議員が当選するのですが、その選挙の日から30日以内に国会を召集しなければなりません。ここで召集される国会が特別会です。

任期満了(4年経過)に伴う衆議院の総選挙後に召集される国会は臨時会です。


緊急集会

憲法第54条
2 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
3 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。

まず、衆議院が解散すると、同時に参議院は閉会となります。つまり、特別会が召集されるまで、国会は活動停止状態です。その間に、戦争になったり、大規模災害が起こったりして、急遽国会を開かないといけない場合、衆議院は解散しているので、衆議院議員は一人もいません。そのため、参議院が国会の役割を代行して、国会を開きます。これが緊急集会です。

そして、緊急集会を召集するのは、内閣です。天皇ではありません。

また、臨時会のように議員の召集要求も不要です。

緊急集会で議決されたことは、あくまでも臨時的な措置にすぎないので、その後、衆議院の同意を得られなければ、その効力を失います

会議の原則(定足数と表決数)

定足数

憲法第56条
両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。

定足数とは、会議を開いて、議決するために必要な、最小限度の出席人数です。

議事を開いて(審議して)、議決をするためには、衆議院議員と参議院議員の合計人数の3分の1以上の出席が必要です。これに満たない場合、議事を開くことができません(審議することができない)。

表決数

表決数とは、意思決定を行う上で必要な賛成数です。原則、表決は、出席議員の過半数で決めます。総議員の過半数ではないので注意しましょう!

ただし、憲法に特別の定めがある場合(例外)もあります。

資格訴訟の裁判で
議員議席を失われること
出席議員の3分の2以上の議決
秘密会の開催 出席議員の3分の2以上の議決
議員の除名 出席議員の3分の2以上の議決
衆議院の法律案の再可決 出席議員の3分の2以上の可決
憲法改正の発議 総議員の3分の2以上の賛成
各議院の表決を
会議録へ記載すること
出席議員の5分の1以上の賛成
臨時会の召集 いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求

資格争訟裁判とは?

衆議院議員や参議院議員が、国会議員となる資格を有しているか(例えば、公務員と兼務していないか)を審議する裁判です。ここで、国会議員の議席を失われるためには、出席議員の3分の2以上の賛成が必要です。

秘密会とは?

衆議院も参議院も、会議は公開が原則です。しかし、会議を公開せずに、秘密で会議を行うことも可能です。この秘密会にするために必要な議決が「出席議員の3分の2以上の議決」です。実際、国会で秘密会を開催した事例はありません。

議員除名とは?

「資格争訟裁判」では、年齢が25歳未満であったり、国籍が外国籍であったり、他の公務員と兼職していたりといった、本来なら議員として選ばれるはずもない者が議員になったような場合の話です。一方、「議員除名」は、議員が非行を行った場合に、その議員に対して懲罰として行うことです。議員除名も資格争訟裁判同様、出席議員の3分の2以上の議決が必要です。

衆議院の法律案の再可決とは?

法律案については、衆議院で可決した後に、参議院で否決されると、衆議院で再度審議します。ここで、出席議員の3分の2以上の多数で、再度可決すると、無事、法律となります。

憲法改正の発議とは?

国会議員(衆議院100人以上、参議院50人以上)の賛成により憲法改正案の原案が提出され、衆参各議院においてそれぞれ憲法審査会で審査されたのちに、本会議で審議します。

両院それぞれの本会議にて 3分の2以上の賛成で可決した場合、国会が国民に対して、この改正案でどうですか?と提案します。これが「憲法改正の発議」です。

この発議後60日から180日の間に国民投票を行い議決します。

憲法改正案に対する賛成の投票の数が、投票総数(賛成の投票数と反対の投票数を合計した数)の2分の1を超えた場合は、国民の承認があったものとなり、憲法が改正されます。

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天皇(国事行為・皇室の財産)

行政書士の試験において、「天皇」について重要なポイントは、天皇の国事行為になってくるので

天皇の地位

憲法第2条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
世襲(せしゅう)とは、特定の地位や職業、財産等を、子孫が代々承継することです。つまり、皇位(天皇の地位)は、子孫に継承されます。 また、天皇の地位については、「皇室典範」に従って継承が行われます。具体的には、皇室典範の第1章の「皇位継承」で規定しています。その中の第1条に「皇統に属する男系の男子」が皇位を継承するものと定めているため、女性天皇の是非についてが問題になっています。

天皇の国事行為

憲法第3条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。 憲法第4条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
天皇の国事行為とは、天皇が行うものとして日本国憲法に規定された行為のことです。 日本国憲法第1条に基づき天皇の地位が象徴とされたことから、天皇が行う行為について、天皇が責任を負うのではなく、内閣が責任を負うものとし、そのために天皇の国事行為が内閣の助言と承認に基づいてなされるべきものであることを明らかにしています(3条)。 また、天皇は、象徴にすぎないので、国政について、何かしら決定することは行いません(4条)。行うことは、形式的・儀礼的行為です。つまり、天皇は、形だけの、儀式的な行為を行うということです。これは下記国事行為の内容を見ると分かります。 例えば、1番の「天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する」天皇は、内閣総理大臣を任命するのですが、実際には、国会で決まった者を、任命するだけなので、天皇が総理大臣を決めているわけではありません。あくまでも形式的儀礼的に任命行為を行っているだけです。 憲法で規定された天皇の国事行為は、下記の通り12あります。
  1. 国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命すること。(6条1項)
  2. 内閣の指名に基づいて,最高裁判所の長たる裁判官を任命すること。(6条2項)
  3. 憲法改正法律政令及び条約公布すること。(7条1号) ※憲法改正を公布することも含む(96条2項) ※予算、条例の公布は含まない
  4. 国会を召集すること。 (7条2号) ※参議院の緊急集会は含まない
  5. 衆議院を解散すること。 (7条3号) ※内閣が衆議院の解散を決定する
  6. 国会議員の総選挙の施行を公示すること。 (7条4号) ※補欠選挙は含まれない
  7. 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること(7条5号)
  8. 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権認証すること。(7条6号) ※決定は内閣が行う
  9. 栄典を授与すること。(7条7号)
  10. 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。(7条8号)
  11. 外国の大使及び公使を接受すること。(7条9号)
  12. 儀式を行ふこと。 (7条10号)

皇室の財産関係

下記条文が、皇室の財産に関する条文です。ここからも分かるように、皇室の財産は、国に帰属し、皇室の財産を売却する場合は、国会の議決が必要で、皇室が使うについては、予算に組みれておく必要があるということです。
憲法第8条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。 憲法第88条 すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。
<<権力分立 | 国会>>

権力分立

権力分立とは、国家権力をその性質に応じて各権力に区別し、異なる機関に担当させることです。1つの機関に担当させると、その機関が絶対的に支配をしてしまい、独裁国家になってしまいます。それを防ぐため(人権保障のため)、国家権力を分散させ、相互に均衡と抑制を保たせる制度が権力分立です。

例えば、「国会・内閣・裁判所」や「中央政府・地方政府」が権力分立の事例です。

三権分立

権力分立が、現代国家において、それぞれの権力が大きくなってきています。

  1. 行政国家現象(行政権が大きくなる)
  2. 政党国家現象(国会を組織する政党の力が大きくなる)
  3. 司法国家現象(司法権が大きくなる)

行政国家現象

19世紀半ば以降、資本主義が急速に発達しましたが、そのことにより、貧富の格差、労働問題が深刻化し、その結果、国民に人間らしい生活を保障するために、様々な行政サービスを提供することとなり、役人の増加や新行政部門創設など、次第に行政権が大きくなり、結果として、法の執行機関である行政府が、国の基本政策の決定・実施における中心的な役割を担う現象

政党国家現象

国民と議会の媒介組織である政党が発達し、国家意思の形成において政党が事実上の主導的役割を演じることです。議会と政府の関係が伝統的でしたが、今は政府・与党と野党の対抗関係へと変化しています。分かりやすくいうと、内閣総理大臣(行政のトップ)は国会(立法府)が指名するのですが、現実的には、総理は与党が選ぶ形になり、結果として、行政も立法も与党が主導する形になるわけです。これが政党国家現象です。

司法国家現象

裁判所による違憲審査制が導入され、司法権が議会、政府の活動をコントロールするという現象です。法治国家として裁判所が非常に重要な役割を果たすようになったことのあらわれになります。

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