平成29年度(2017年度)過去問

平成29年・2017|問7|憲法の概念

憲法の概念に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 通常の法律より改正手続が困難な憲法を硬性憲法、法律と同等の手続で改正できる憲法を軟性憲法という。ドイツやフランスの場合のように頻繁に改正される憲法は、法律より改正が困難であっても軟性憲法に分類される。
  2. 憲法の定義をめぐっては、成文の憲法典という法形式だけでなく、国家統治の基本形態など規定内容に着目する場合があり、後者は実質的意味の憲法と呼ばれる。実質的意味の憲法は、成文の憲法典以外の形式をとって存在することもある。
  3. 憲法は、公権力担当者を拘束する規範であると同時に、主権者が自らを拘束する規範でもある。日本国憲法においても、公務員のみならず国民もまた、憲法を尊重し擁護する義務を負うと明文で規定されている。
  4. 憲法には最高法規として、国内の法秩序において最上位の強い効力が認められることも多い。日本国憲法も最高法規としての性格を備えるが、判例によれば、国際協調主義がとられているため、条約は国内法として憲法より強い効力を有する。
  5. 憲法には通常前文が付されるが、その内容・性格は憲法によって様々に異なっている。日本国憲法の前文の場合は、政治的宣言にすぎず、法規範性を有しないと一般に解されている。

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【答え】:2

【解説】

1.通常の法律より改正手続が困難な憲法を硬性憲法、法律と同等の手続で改正できる憲法を軟性憲法という。ドイツやフランスの場合のように頻繁に改正される憲法は、法律より改正が困難であっても軟性憲法に分類される。
1・・・妥当ではない
硬性憲法とは、憲法改正について、通常の立法手続よりも厳格な手続を要求している憲法を言います。分かりやすいえば、憲法改正をしにくい憲法です。
日本の憲法も、憲法改正については、
各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、
さらに国民投票または国会の定める選挙の際行われる投票において過半数の賛成を得なければならない
とされている(憲法96条)ので、硬性憲法にあたります。
また、ドイツとフランスの憲法は、どちらも硬性憲法です。
一方、軟性憲法とは、憲法改正につき通常の立法手続で可能な憲法を言います。
イギリスは改正手続がしやすい軟性憲法に当たります。
2.憲法の定義をめぐっては、成文の憲法典という法形式だけでなく、国家統治の基本形態など規定内容に着目する場合があり、後者は実質的意味の憲法と呼ばれる。実質的意味の憲法は、成文の憲法典以外の形式をとって存在することもある。
2・・・妥当
憲法の意味は「形式的意味の憲法」と「実質的意味の憲法」の2つがあります。
つまり、憲法とは?という問いに対して、2つの切り口から説明できるということです。形式的意味の憲法とは、
憲法という名前で呼ばれている成文の法典(日本国憲法のように文としてあらわされているか)を意味します。
つまり、憲法典という形式さえあれば、内容がどのようなものであるかは問いません。
極端なことを言えば、憲法が1条しかなかったとしても、成文として存在しているのであれば
形式的意味での憲法は存在することになります。
ちなみに、イギリスは主要国で唯一、憲法が法典として存在しない国です。実質的意味の憲法は、「成文」「不文」は関係なく、内容に着目しています。
内容のない憲法は、実質的意味での憲法は存在しないということになりますそして「実質的意味の憲法」には、さらに「固有の意味の憲法」と「立憲的意味の憲法」に分類されます。

実質的意味の憲法には、さらに「固有の意味の憲法」と「立憲的意味の憲法」に分類されます。明治憲法下の皇室典範は実質的意味の憲法には当たりますが、形式的には憲法ではないため、上記の形式的意味の憲法には当たりません。

固有の意味の憲法」とは、
国家統治の基本を定めた法としての憲法をいいます。

国があれば、当然に国家権力があります。
国家権力とは、国家統治の力です。

憲法は、国家統治の力についてルールで定めたものなので、
どんな国家でも、「固有の意味の憲法」は存在するわけですね。

立憲的意味の憲法」とは、
市民革命により、絶対的な存在である王様を倒して、国家(王様)による個人の自由への干渉を制限し、国民の権利を保障するという内容をもった憲法です。
つまり、権力を制限することで国民の自由を保障するための法という意味が「立憲的意味の憲法」です。

そして、問題文を見ると
憲法の定義をめぐっては、
①成文の憲法典という法形式だけでなく、
②国家統治の基本形態など規定内容に着目する場合があり、
後者②は実質的意味の憲法と呼ばれる。
②実質的意味の憲法は、成文の憲法典以外の形式をとって存在することもある。
これは妥当です。

3.憲法は、公権力担当者を拘束する規範であると同時に、主権者が自らを拘束する規範でもある。日本国憲法においても、公務員のみならず国民もまた、憲法を尊重し擁護する義務を負うと明文で規定されている。
3・・・妥当ではない
憲法は、「天皇又は摂政及び国務大臣国会議員裁判官その他の公務員」を拘束する規範です。
国民(主権者)は含みません憲法99条)。
よって、本肢は「主権者が自らを拘束する規範でもある」という部分が妥当ではありません。
4.憲法には最高法規として、国内の法秩序において最上位の強い効力が認められることも多い。日本国憲法も最高法規としての性格を備えるが、判例によれば、国際協調主義がとられているため、条約は国内法として憲法より強い効力を有する。
4・・・妥当ではない
憲法は、国の最高法規であって、その条規(憲法)に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しません(無効)憲法98条)。
条約と憲法の優劣については、明確な判例はありません。
したがって、「条約は国内法として憲法より強い効力を有する」が妥当ではありません。
5.憲法には通常前文が付されるが、その内容・性格は憲法によって様々に異なっている。日本国憲法の前文の場合は、政治的宣言にすぎず、法規範性を有しないと一般に解されている。
5・・・妥当ではない
日本国憲法には前文があるが、この前文は憲法の一部だと考えられていて、法規範性も有しています。
したがって、前文を改正するためには、憲法改正の手続き(憲法第96条)が必要です。

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平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問8|行政法・取消しと撤回の違い

砂利採取法26条1号から4号までによる「認可の取消し」に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 1号による「認可の取消し」および2号による「認可の取消し」は、いずれも行政法学上の取消しである。
  2. 1号による「認可の取消し」および3号による「認可の取消し」は、いずれも行政法学上の取消しである。
  3. 2号による「認可の取消し」および3号による「認可の取消し」は、いずれも行政法学上の撤回である。
  4. 2号による「認可の取消し」および4号による「認可の取消し」は、いずれも行政法学上の撤回である。
  5. 3号による「認可の取消し」および4号による「認可の取消し」は、いずれも行政法学上の撤回である。

(参照条文)
砂利採取法

(採取計画の認可)
第16条 砂利採取業者は、砂利の採取を行おうとするときは、当該採取に係る砂利採取場ごとに採取計画を定め、(当該砂利採取場の所在地を管轄する都道府県知事等)の認可を受けなければならない。

(遵守義務)
第21条 第16条の認可を受けた砂利採取業者は、当該認可に係る採取計画・・・に従つて砂利の採取を行なわなければならない。

(緊急措置命令等)
第23条第1項 都道府県知事又は河川管理者は、砂利の採取に伴う災害の防止のため緊急の必要があると認めるときは、採取計画についてその認可を受けた砂利採取業者に対し、砂利の採取に伴う災害の防止のための必要な措置をとるべきこと又は砂利の採取を停止すべきことを命ずることができる。(第2項以下略)

(認可の取消し等)
第26条 都道府県知事又は河川管理者は、第16条の認可を受けた砂利採取業者が次の各号の一に該当するときは、その認可を取り消し、又は6月以内の期間を定めてその認可に係る砂利採取場における砂利の採取の停止を命ずることができる。
1 第21条の規定に違反したとき。
2 ・・・第23条第1項の規定による命令に違反したとき。
3 第31条第1項の条件に違反したとき。
4 不正の手段により第16条の認可を受けたとき。

(認可の条件)
第31条第1項 第16条の認可・・・には、条件を附することができる。(第2項以下略)

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【答え】:3

【解説】

行政行為の取消し」は、処分成立当初に瑕疵があったこと(原始的瑕疵)を理由としており、その効果は原則として遡及し、はじめから行政行為がなかったものとみなされる。
一方
行政行為の撤回」とは、成立に瑕疵のない行政行為について、後発的事情の変化によってその効力を存続させることが適当でない場合に、将来に向かってその効力を失わせることをいう。

1.1号による「認可の取消し」および2号による「認可の取消し」は、いずれも行政法学上の取消しである。
1・・・誤り
26条1号は「21条に違反したとき」に認可が取り消される、という内容です。
当初認可されたときは、瑕疵なく認可され、その後、21条「計画に従って砂利の採取をしなければならない」という内容に違反して(後発的事情によって)認可を取り消すわけです。
したがって、「行政行為の撤回」に当たります。26条2号は「23条1項の命令に違反したとき」に認可が取り消される、という内容です。
当初認可されたときは、瑕疵なく認可され、その後、23条の「砂利の採取を停止の命令」に違反して(後発的事情によって)認可を取り消すわけです。
したがって、「行政行為の撤回」に当たります。よって、本肢は誤りです。
2.1号による「認可の取消し」および3号による「認可の取消し」は、いずれも行政法学上の取消しである。
2・・・誤り
26条3号は「31条1項の条件に違反したとき」に認可が取り消される、という内容です。
当初認可されたときは、瑕疵なく認可され、その後、31条1項の「認可の際に付された条件」に違反して(後発的事情によって)認可を取り消すわけです。
したがって、「行政行為の撤回」に当たります。よって、
1号は、選択肢1より、「撤回」にあたり、
3号も「撤回」にあたるので、
本肢は誤りです。
3.2号による「認可の取消し」および3号による「認可の取消し」は、いずれも行政法学上の撤回である。
3・・・正しい
選択肢1と選択肢2の解説より
2号、3号ともに、「行政行為の撤回」にあたるので、本肢は正しいです。
4.2号による「認可の取消し」および4号による「認可の取消し」は、いずれも行政法学上の撤回である。
4・・・誤り
26条4号は「不正の手段により認可を受けたとき」に認可が取り消される、という内容です。
当初の認可自体、瑕疵があって(原始的な瑕疵を理由)、認可を取り消すわけなので、
行政行為の取消し」に当たります。よって、
2号は、選択肢1の解説より「撤回」
4号は「取消し」なので
本肢は誤りです。
5.3号による「認可の取消し」および4号による「認可の取消し」は、いずれも行政法学上の撤回である。
5・・・誤り
3号は、選択肢2より、「撤回」
4号は、選択肢4より、「取消し」
なので、本肢は誤りです。

行政行為の「取消し」と「撤回」の違いの詳細解説はこちら>>

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平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問6|憲法・財政

次の文章の空欄[  ]に当てはまる語句(ア)と、本文末尾で述べられた考え方(イ)(現在でも通説とされる。)との組合せとして、妥当なものはどれか(旧漢字・旧仮名遣い等は適宜修正した。)。

法の形式はその生産方法によって決定せられる。生産者を異にし、生産手続を異にするに従って異る法の形式が生ずる。国家組織は近代に至っていよいよ複雑となって来たから、国法の形式もそれに応じていよいよ多様に分化してきた・・・。
すべて国庫金の支出は必ず予め定められた準則――これを実質的意味の予算または予算表と呼ぼう――にもとづいてなされることを要し、しかもその予定準則の定立には議会の同意を要することは、近代立憲政に通ずる大原則である。諸外国憲法はかくの如き予算表は「[  ]」の形式をとるべきものとなし、予算表の制定をもって「[  ]」の専属的所管に属せしめている。わが国ではこれと異り「[  ]」の外に「予算」という特殊な形式をみとめ、予算表の制定をもって「予算」の専属的所管に属せしめている。
(出典 宮澤俊義「憲法講義案」1936年から)

  1. ア:法律 イ:予算法形式説
  2. ア:法律 イ:予算法律説
  3. ア:議決 イ:予算決定説
  4. ア:命令 イ:予算行政説
  5. ア:議決 イ:予算決算説

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【答え】: 1

【解説】

内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければなりません(憲法86条)。
つまり、予算は内閣が作成して国会の審議にかけるわけですが、
予算には、3つの考え方があります。

予算行政説:予算は「行政計画」であるという考え方
予算法律説:予算は「法律」であるという考え方
予算法形式説 :予算は「法律」とは異なる特殊の法形式であるという考え方(通説)

この考え方が通説となっています。

予算行政説

予算行政説は、予算を「行政計画」としてとらえるため、
「予算は行政(政府)を拘束しません」。
そのため、財政民主主義に反するという意見があります。

憲法83条(財政民主主義)
国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。

予算法律説

予算法律説は、「財政民主主義」に重点を置いた考え方で、
「予算が、政府や国民を拘束する」ことになります。

予算法形式説

予算法形式説は、予算は行政のみ拘束し、国民は拘束しません
つまり、政府は、予算に反する支出等は違法となります。
そして、予算は法律そのものではなく、予算を執行するためには別に執行のための法律が必要となってきます。

本問の内容は「予算法形式説」なので、
イには、「予算法形式説」となります。

ア.
諸外国憲法はかくの如き予算表は「[  ]」の形式をとるべきものとなし、予算表の制定をもって「[  ]」の専属的所管に属せしめている。わが国ではこれと異り「[  ]」の外に「予算」という特殊な形式をみとめ、予算表の制定をもって「予算」の専属的所管に属せしめている。
ア・・・法律
イギリス、ドイツ、フランス等では予算は「法」として成立します。
一方、
日本の通説は、予算法律説ではなく、予算法形式説です。
わが国ではこれと異り「法」の外に「予算」という特殊な形式をみとめています。

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平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問4|憲法・経済的自由

次の記述は、ため池の堤とう(堤塘)の使用規制を行う条例により「ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は、ため池の破損、決かい等に因る災害を未然に防止するため、その財産権の行使を殆んど全面的に禁止される」ことになった事件についての最高裁判所判決に関するものである。判決の論旨として妥当でないものはどれか。

  1. 社会生活上のやむを得ない必要のゆえに、ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は何人も、条例による制約を受忍する責務を負うというべきである。
  2. ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていない。
  3. 憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外にある行為を条例をもって禁止、処罰しても憲法および法律に抵触またはこれを逸脱するものとはいえない。
  4. 事柄によっては、国において法律で一律に定めることが困難または不適当なことがあり、その地方公共団体ごとに条例で定めることが容易かつ適切である。
  5. 憲法29条2項は、財産権の内容を条例で定めることを禁じているが、その行使については条例で規制しても許される。

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【答え】: 5

【解説】

1.社会生活上のやむを得ない必要のゆえに、ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は何人も、条例による制約を受忍する責務を負うというべきである。
1・・・妥当
判例では、「ため池の保全に関する条例は、ため池の堤とうを使用する権利者に対しては、その使用のほとんどが全面的に禁止されるので、権利に著しい制限を加えるものである。しかし、それは「災害を未然に防止する」という社会生活上のやむを得ない必要からくることであって、ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は何人も、公共の福祉のため、当然これを受忍しなければならない(受け入れて耐える)責務を負うというべきである」
と判示しています(最大判昭38.6.26:奈良県ため池条例事件)。
2.ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていない。
2・・・妥当
判例では、「ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていない」と判示しています(最大判昭38.6.26:奈良県ため池条例事件)。
3.憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外にある行為を条例をもって禁止、処罰しても憲法および法律に抵触またはこれを逸脱するものとはいえない。
3・・・妥当
判例では、
「ため池の堤とうの使用権は、憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外(らちがい:枠外)にある。
そして、この使用権を条例をもって禁止、処罰しても憲法および法律に牴触またはこれを逸脱するものとはいえない」と判示しています(最大判昭38.6.26:奈良県ため池条例事件)。
4.事柄によっては、国において法律で一律に定めることが困難または不適当なことがあり、その地方公共団体ごとに条例で定めることが容易かつ適切である。
4・・・妥当
判例では、「事柄によっては、特定または若干の地方公共団体の特殊な事情により、国において法律で一律に定めることが困難または不適当なことがあり、その地方公共団体ごとに、その条例で定めることが、容易且つ適切なことがある
本件(奈良県ため池条例事件)のような、ため池の保全の問題は、まさにこの場合に該当するというべきである。」と判示しています(最大判昭38.6.26:奈良県ため池条例事件全文参照)。
5.憲法29条2項は、財産権の内容を条例で定めることを禁じているが、その行使については条例で規制しても許される。
5・・・妥当ではない
憲法29条2項とは「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」と規定しており、「財産権の内容を条例で定めることを禁じている」とは規定していません。
したがって、妥当ではありません。

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平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問2|基礎法学

次のア~オの記述と、それらの記述が示す法思想等との組合せとして、最も適切なものはどれか。

ア.法を現実に通用している制定法および慣習法等の実定法とする考え方
イ.人身の自由および思想の自由等の人格的自由とともに経済的自由を最大限に尊重し、経済活動に対する法規制を最小限にとどめるべきであるとする考え方
ウ.事物の本性や人間の尊厳に基づいて普遍的に妥当する法があるとする考え方
エ.法制度の内容は、その基礎にある生産諸要素および経済的構造によって決定されるとし、私有財産制度も普遍的なものではなく、資本主義経済によって生み出されたとする考え方
オ.法制度を経済学の手法を用いて分析し、特に効率性の観点から立法および法解釈のあり方を検討する考え方

  1. ア:パンデクテン法学 イ:リベラリズム ウ:自然法 エ:社会主義法学 オ:利益法学
  2. ア:概念法学 イ:リバタリアニズ ウ:パターナリズム エ:コミュニタリアニズム オ:法と経済学
  3. ア:法実証主義 イ:リベラリズム ウ:善きサマリア人の法 エ:マルクス主義法学 オ:利益法学
  4. ア:概念法学 イ:レッセ・フェール ウ:善きサマリア人の法 エ:コミュニタリアニズム オ:ネオリベラリズム
  5. ア:法実証主義 イ:リバタリアニズム ウ:自然法 エ:マルクス主義法学 オ:法と経済学

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【答え】: 5

【解説】

ア.法を現実に通用している制定法および慣習法等の実定法とする考え方
ア・・・法実証主義
法実証主義とは、実定法だけを法と認め、実定法の上位に自然法の存在は認めないという考え方です。
つまり、法実証主義は、実定法の上位に自然法の存在を認める自然法論と対立した考え方です。
「実定法」とは、
立法府の制定行為,および慣習,判例などの経験的事実に基づいて成立し,その存立を経験的,歴史的に実証される法を言い、「制定法」および「慣習法」等が実定法です。実証法とも言います。
「自然法」とは、
人間の自然の本性あるいは理性に基づいて、あらゆる時代を通じて普遍的に守られるべき不変の法として、実定法を超越しているものと考えられる法です。
分かりやすい具体例でいうと、「公序良俗(社会秩序といったイメージ)」です。「公序良俗」とは何か、という具体的な定義はなく、概念的な内容です。しかし、判例でもよくあるように、「公序良俗(社会秩序)」を基準に判断して、裁判官の裁量により、判決を下すこともあります。
「概念法学」とは
法規の解釈をする際、法典に欠陥はなく、論理的に完結しているという前提に立って、条文の解釈や運用を論理的に行うことを第一とする考え方です。
そしてこの概念法学は、現実を無視した形式論的な考察態度、いわゆる「机上の空論」を批判していう場合で用いられます。
現実の裁判における基準として機能しない、または機能させることをそもそも考えていないような法的理論に対して向けられることが多いです。
イ.人身の自由および思想の自由等の人格的自由とともに経済的自由を最大限に尊重し、経済活動に対する法規制を最小限にとどめるべきであるとする考え方
イ・・・リバタニアリズム
「リバタニアリズム」とは、
「個人の自由権」と「経済的な自由」を絶対的に重視し、それに制約を加える国家の役割(法規制)を最小限度にとどめようとする考え方です。
言い方を変えると、他者の自由を侵害しない限りにおける、各人の「個人の自由権」と「経済的な自由」を尊重しようとする思想的立場です。
「リベラリズム」とは
人間は理性を持ち、従来の権威から自由であり「自己決定権を持つ」との立場から、
政治的には「政府からの自由」である自由権や個人主義、「政府への自由」である国民主権などの民主主義、
経済的には私的所有権と自由市場による資本主義などの思想や体制の基礎となるものです。
「レッセ・フェール(自由放任主義)」とは
国家による国民経済への統制と干渉を排除して、個人や企業の自由競争にまかせて経済を営むべきであるとする主義で、アダム=スミスの「国富論」でも主張しています。
ウ.事物の本性や人間の尊厳に基づいて普遍的に妥当する法があるとする考え方
ウ・・・自然法
「自然法」とは、
人間の自然の本性あるいは理性に基づいて、あらゆる時代を通じて普遍的に守られるべき不変の法として、実定法を超越しているものと考えられる法です。
分かりやすい具体例でいうと、「公序良俗(社会秩序といったイメージ)」です。「公序良俗」とは何か、という具体的な定義はなく、概念的な内容です。しかし、判例でもよくあるように、「公序良俗(社会秩序)」を基準に判断して、裁判官の裁量により、判決を下すこともあります。
「パターナリズム」とは
強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益のためを思って、弱い立場にある者の意志は問わずに介入・干渉・支援することをいいます。
親が子供のためによかれと思ってすることから来ています。
「善きサマリア人の法」とは、
災難に遭った人や急病人等の「窮地の人」を救うために「無償で善意の行動」をとった場合、良識的かつ誠実にその人ができることをしたのなら、たとえ「失敗してもその結果につき責任を問われない」という趣旨の法である。
誤った対応をして訴えられたり、処罰を受けたりする恐れをなくして、その場に居合わせた人による傷病者の救護を促進しよう、との意図があります。
※「善きサマリア人」は聖書に出てくる内容です。
エ.法制度の内容は、その基礎にある生産諸要素および経済的構造によって決定されるとし、私有財産制度も普遍的なものではなく、資本主義経済によって生み出されたとする考え方
エ・・・マルクス主義法学
「マルクス主義法学」とは、簡単に言えば、
経済状況(生産諸要素および経済的構造)である「下部構造」と、
思想や政治、法律などの「上部構造」に分けて
上部構造は下部構造によって決まってくる
つまり、法制度の内容は、その基礎にある生産諸要素および経済的構造によって決定される
という考え方です。
「社会主義法」とは、社会主義体制の国で採られる法制度の総称である。
大陸法圏に属するソビエト連邦法及びこれを参考とした他の社会主義国の法です。
「コミュニタリアニズム」とは
共同体(コミュニティ)の価値を重んじる政治思想で、歴史的に形成されてきた共同体の伝統の中でこそ個人は人間として完成され、生きていけるという考え方です。
「リベラリズムやリバタリアニズム」が個人を優先するのに対し、
「コミュニタリアニズム」は共同体が優先する考え方です。
オ.法制度を経済学の手法を用いて分析し、特に効率性の観点から立法および法解釈のあり方を検討する考え方
オ・・・法と経済学
「法と経済学」とは、
経済学の観点および手法を利用して、法的理論を分析・再解釈する学問を言います。
「利益法学」とは
法の解釈を利益整序の観点から行う法学で
法は、「社会における諸利益に対してどれをいかに保護するかの価値判断を行うもの」という考え方をします。
「ネオリベラリズム(新自由主義)」とは、
政府の規制を緩和・撤廃して民間の自由な活力に任せ成長を促そうとする考え方を言います。
政府の積極的な民間介入に反対し、資本主義下の自由競争秩序を重んじる立場および考え方です。

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平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問3|憲法

人権の享有主体性をめぐる最高裁判所の判例に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。

  1. わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼすなど、外国人の地位に照らして認めるのが相当でないと解されるものを除き、外国人にも政治活動の自由の保障が及ぶ。
  2. 会社は、自然人と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進し、または反対するなどの政治的行為をなす自由を有する。
  3. 公務員は政治的行為を制約されているが、処罰対象となり得る政治的行為は、公務員としての職務遂行の政治的中立性を害するおそれが、実質的に認められるものに限られる。
  4. 憲法上の象徴としての天皇には民事裁判権は及ばないが、私人としての天皇については当然に民事裁判権が及ぶ。
  5. 憲法が保障する教育を受ける権利の背後には、子どもは、その学習要求を充足するための教育を施すことを、大人一般に対して要求する権利を有する、との観念がある。

>解答と解説はこちら


【答え】: 4

【解説】

1.わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼすなど、外国人の地位に照らして認めるのが相当でないと解されるものを除き、外国人にも政治活動の自由の保障が及ぶ。
1・・・妥当
外国人の政治活動の自由が問題となった判例で「外国人の政治活動の自由はわが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等を除き保障される」と判示しています(最大判昭53.10.4:マクリーン事件)。

【具体例】

例えば「外国人が政治家に対して献金をすること」です。

外国人が政治家に対して献金をすることで政治家が外国人に有利な政治的意思決定をしかねません。

そのため、「外国人が政治家に対して献金をする自由」は保障されておらず、
実際、政治資金規正法で、「外国人が政治家に対して献金をすることは、原則禁止」されています。

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2.会社は、自然人と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進し、または反対するなどの政治的行為をなす自由を有する。
2・・・妥当
判例で「会社も、自然人と同じように、政治的行為をする自由がある」と判示しています(最大判昭45.6.24:八幡製鉄事件)。
3.公務員は政治的行為を制約されているが、処罰対象となり得る政治的行為は、公務員としての職務遂行の政治的中立性を害するおそれが、実質的に認められるものに限られる。
3・・・妥当
判例では、公務員が処罰される対象になる政治的行為は、政治的に中立でなくなる可能性が「実質的に」(実際に)あるものに限られる、と判示しています(最判平24.12.7:堀越事件)。
4.憲法上の象徴としての天皇には民事裁判権は及ばないが、私人としての天皇については当然に民事裁判権が及ぶ。
4・・・妥当ではない
判例では、天皇には民事裁判権が及ばない(民事訴訟の原告や被告にはならない)としています。(最判平元.11.20)
5.憲法が保障する教育を受ける権利の背後には、子どもは、その学習要求を充足するための教育を施すことを、大人一般に対して要求する権利を有する、との観念がある。
5・・・妥当
判例では、「みずから学習することのできない子どもは、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在していると考えられる。」と判示しています(最大判昭51.5.21:旭川学力テスト事件全文参照)。

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平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問1|基礎法学

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。

「『犯罪論序説』は[ ア ]の鉄則を守って犯罪理論を叙述したものである。それは当然に犯罪を[ イ ]に該当する[ ウ ]・有責の行為と解する概念構成に帰着する。近頃、犯罪としての行為を[ イ ]と[ ウ ]性と責任性とに分けて説明することは、犯罪の抽象的意義を叙述したまでで、生き生きとして躍動する生の具体性を捉えて居ないという非難を受けて居るが、…(中略)…[ イ ]と[ ウ ]性と責任性を区別せずして犯人の刑事責任を論ずることは、いわば空中に楼閣を描くの類である。私はかように解するから伝統的犯罪理論に従い、犯罪を[ イ ]に該当する[ ウ ]・有責の行為と見、これを基礎として犯罪の概念構成を試みた。
本稿は、京都帝国大学法学部における昭和7-8年度の刑法講義の犯罪論の部分に多少の修正を加えたものである。既に『公法雑誌』に連載せられたが、このたび一冊の書物にこれをまとめた。」

以上の文章は、昭和8年に起きたいわゆる[ エ ]事件の前年に行われた講義をもとにした[ エ ]の著作『犯罪論序説』の一部である(旧漢字・旧仮名遣い等は適宜修正した。)。

  1. ア:罪刑法定主義 イ:構成要件 ウ:違法 エ:瀧川
  2. ア:自由主義 イ:形成要 ウ:相当 エ:矢内原
  3. ア:罪刑専断主義 イ:侵害要件 ウ:違法 エ:澤柳
  4. ア:責任主義 イ:構成要件 ウ:違法エ:矢内原
  5. ア:罪刑法定主義 イ:侵害要件 ウ:必要 エ:瀧川

>解答と解説はこちら


【答え】: 1

【解説】

「『犯罪論序説』は[ ア:罪刑法定主義 ]の鉄則を守って犯罪理論を叙述したものである。それは当然に犯罪を[ イ:構成要件 ]に該当する[ ウ:違法 ]・有責の行為と解する概念構成に帰着する。近頃、犯罪としての行為を[ イ:構成要件 ]と[ ウ:違法 ]性と責任性とに分けて説明することは、犯罪の抽象的意義を叙述したまでで、生き生きとして躍動する生の具体性を捉えて居ないという非難を受けて居るが、…(中略)…[ イ:構成要件 ]と[ ウ:違法 ]性と責任性を区別せずして犯人の刑事責任を論ずることは、いわば空中に楼閣を描くの類である。私はかように解するから伝統的犯罪理論に従い、犯罪を[ イ:構成要件 ]に該当する[ ウ:違法 ]・有責の行為と見、これを基礎として犯罪の概念構成を試みた。
本稿は、京都帝国大学法学部における昭和7-8年度の刑法講義の犯罪論の部分に多少の修正を加えたものである。既に『公法雑誌』に連載せられたが、このたび一冊の書物にこれをまとめた。」

以上の文章は、昭和8年に起きたいわゆる[ エ:瀧川 ]事件の前年に行われた講義をもとにした[ エ:瀧川 ]の著作『犯罪論序説』の一部である(旧漢字・旧仮名遣い等は適宜修正した。)。

ア.
『犯罪論序説』は[ ア ]の鉄則を守って犯罪理論を叙述したものである。
ア・・・罪刑法定主義
「伝統的犯罪理論」や「犯罪の概念構成」から、アには「罪刑法定主義」が入ることは想像できます。『犯罪論序説』とは、瀧川幸辰(京都大学教授)著の刑法の教科書です。そして、
罪刑法定主義とは、ある行為を犯罪として処罰するためには、事前に法令によって「犯罪とされる行為の内容」、及び「それに対して科される刑罰」を、明確に規定しておかなければならないとする原則を言います。
イ.ウ.
『犯罪論序説』は[ ア:罪刑法定主義 ]の鉄則を守って犯罪理論を叙述したものである。それは当然に犯罪を[ イ]に該当する[ ウ ]・有責の行為と解する概念構成に帰着する。
近頃、犯罪としての行為を[ イ ]と[ ウ ]性と責任性とに分けて説明することは、犯罪の抽象的意義を叙述したまでで、生き生きとして躍動する生の具体性を捉えて居ないという非難を受けて居る
イ・・・構成要件
ウ・・・違法
刑法学における犯罪は、ドイツの刑法理論を継受する日本においては、
犯罪の成立要件を①構成要件、②違法、③有責の三つの要素に体系化し、
犯罪を「構成要件に該当し違法かつ有責な行為」と定義することが多い。
しかし、他の体系を用いて犯罪を定義する刑法学者もある。
エ.
「・・・本稿は、京都帝国大学法学部における昭和7-8年度の刑法講義の犯罪論の部分に多少の修正を加えたものである。既に『公法雑誌』に連載せられたが、このたび一冊の書物にこれをまとめた。」
以上の文章は、昭和8年に起きたいわゆる[ エ ]事件の前年に行われた講義をもとにした[ エ ]の著作『犯罪論序説』の一部である(旧漢字・旧仮名遣い等は適宜修正した。)。
エ・・・瀧川
1933年、京都大学教授で刑法学者の滝川は、中央大学での講演やその著『刑法読本』の内容が危険思想であるとの理由で問題とされました。
当時の文部大臣鳩山一郎は、京大総長に対し滝川に辞職勧告を行うよう命じ、一方的に滝川を休職処分にしました。
これに対し、京大法学部教授団や学生らが抗議運動を起こしたが、当局の弾圧により、数名の教授はやめさせることなり、また、滝川の『刑法読本』は発売禁止となりました。
これが瀧川事件です。

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平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略