Aは、Bに対し、Cの代理人であると偽り、Bとの間でCを売主とする売買契約(以下、「本件契約」という。)を締結した。ところが、CはAの存在を知らなかったが、このたびBがA・B間で締結された本件契約に基づいてCに対して履行を求めてきたので、Cは、Bからその経緯を聞き、はじめてAの存在を知るに至った。他方、Bは、本件契約の締結時に、AをCの代理人であると信じ、また、そのように信じたことについて過失はなかった。Bは、本件契約を取り消さずに、本件契約に基づいて、Aに対して何らかの請求をしようと考えている。このような状況で、AがCの代理人であることを証明することができないときに、Bは、Aに対して、どのような要件の下で(どのようなことがなかったときにおいて)、どのような請求をすることができるか。「Bは、Aに対して、」に続けて、下線部について、40字程度で記述しなさい(「Bは、Aに対して、」は、40字程度の字数には入らない)。
【答え】:Aが行為能力を有し、Cの追認がなかったとき、履行又は損害賠償の請求をすることができる。(43字)
【解説】
問題文の状況は、
- 無権代理人A、本人C(売主)、相手方B(買主)
- 本人Cは、無権代理人Aの存在を知らなかった
- 相手方Bが、本人Cに対して履行を求めてきた
- 相手方Bは、本件契約の締結時に、AをCの代理人であることについて、善意無過失
上記状況で
相手方Bは、上記AB間の契約を取り消さずに、AB間の契約に基づいて、Aに対して何らかの請求をしようと考えています。
このような状況で、AがCの代理人であることを証明することができないときに、
- ①相手方Bは、無権代理人Aに対して、
- ②どのような要件の下で(どのようなことがなかったときにおいて)、
- ③どのような請求をすることができるか?
善意無過失相手方が無権代理人に何らかの請求をすることから、下記民法117条を考えます。
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う(民法117条)。
前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない(同条2項)。
- 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
- 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
- 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたときは上記責任を負わない。
①については、問題文から「Bは、Aに対して、・・・」となっているので考えなくても大丈夫です。
②について、
民法117条1項の通り、
「無権代理人Aが自己の代理権を証明したとき」又は「本人Cの追認を得たとき」は、
履行又は損害賠償の責任を負わないので
無権代理人が、「履行又は損害賠償の責任」を負うためには
「無権代理人Aが自己の代理権を証明できず」かつ「本人Cの追認を得なかったこと」が必要です。
前者については、問題文に記載されているので、
②には「本人Cの追認を得なかったこと」を入れる必要があります。
さらに、2項についてみると、
1号2号は問題文に「相手方が善意無過失」である旨の記載があるので、考えなくても大丈夫です。
3号については考える必要があります。
無権代理人Aが行為能力がないと、無権代理人Aに責任追及できないので
②には、「行為能力を有する」旨を記載する必要があります。
③について、
1項の通り、「履行又は損害賠償の請求をすることができる」で締めくくればよいでしょう!
まとめると
Aが行為能力を有し、Cの追認がなかったとき、履行又は損害賠償の請求をすることができる。(43字)
平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
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問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 法の下の平等 | 問33 | 民法 |
問4 | 憲法と私法上の行為 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 権力分立 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 国会 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法・精神的自由 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法等 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 法改正のより削除 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・経済 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・社会 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・政治 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・個人情報保護 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・個人情報保護 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・情報通信 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:債権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |