【問1】民法
Aは自己所有の甲機械(甲)をBに賃貸し、その後、本件賃貸借契約の期間中にCがBから甲の修理を請け負い、Cによる修理が終了した。
CはBに対して甲を返還したが、Bは修理代金を支払わないまま無資力となり、本件賃貸借契約が解除されたことにより甲はAに返還された。本件賃貸借契約において、甲の修理費用をBの負担とする旨の特約が存するとともに、これに相応して賃料が減額されていた場合、CはAに対して、不当利得に基づいて修理費用相当額の支払を求めることはできない。
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【解答】
〇
「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け」、そのために他人に損失を及ぼした者(受益者)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負います(民法703条:不当利得の返還義務)。
本肢を見ると、「甲の修理費用を賃借人Bの負担とする旨の特約が存する」ということは、賃貸人Aは利益を得ているように見えますが、「これに相応して賃料が減額されていた」となっているので、Aは得た利益分、不利益も受けています。
つまり、Aについて不当利得は成立しません(最判平7.9.19)。
よって、Aは不当利得の返還義務は生じません。
「CはAに対して、不当利得に基づいて修理費用相当額の支払を求めることはできない。」
というのは妥当です。
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【問2】行政法
公務災害に関わる金銭債権の消滅時効期間については、早期決済の必要性など行政上の便宜を考慮する必要がないので、会計法の規定は適用されず、民法の規定が適用される。
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【解答】
〇
判例によると
「国が義務者であっても、被害者に損害を賠償すべき関係は、・・・私人相互間における損害賠償の関係とその目的性質を異にするものではない。
よって、国に対する右損害賠償請求権の消滅時効期間は、会計法の5年と解すべきではなく、民法の10年と解すべき」
として、民法を適用しています。
つまり、「公務災害に関わる金銭債権の消滅時効期間」は民法の消滅時効(10年)が適用されるので、正しいです。
【問3】会社法
株式会社は、定款において、その発行する全部の株式の内容として、または種類株式の内容として、譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨を定めることができる。
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【解答】
○
株式会社は、その発行する①全部の株式の内容として、または②種類株式の内容として、「譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨」を定めることができます(会社法107条1項1号、108条1項4号) 。
よって、本肢は正しいです。
家族で経営している会社等のように、株式が自由に譲渡されると、好ましくない者が株主なることを排除したい場合もあります。
そのような場合に、会社が、定款に「株式の譲渡による取得は会社の承認を要する」と定めて、株式の譲渡制限をすることができます。
