行政不服審査法

行政不服審査法61条:審査請求に関する規定の準用(再調査請求)

審査請求の規定が、再調査請求に準用されるもの

下記内容は審査請求のルールですが、この審査請求のルールが再調査請求にも適用されるということです。

第9条第4項 審査庁職員による意見聴取
第10条 法人でない社団又は財団の審査請求
第11条 総代
第12条 代理人による審査請求
第13条 参加人
第14条 行政庁が裁決をする権限を有しなくなった場合の措置
第15条 審理手続の承継
第16条 標準審理期間
第19条の一部 審査請求書の提出
第20条 口頭による審査請求
第23条 審査請求書の補正
第24条 審理手続を経ないでする却下裁決
第25条
(第3項を除く。)
執行停止
第26条 執行停止の取消し
第27条 審査請求の取下げ
第31条
(第5項を除く。)
口頭意見陳述
第32条
(第2項を除く。)
証拠書類等の提出
第39条 審理手続の併合又は分離
第51条 裁決の効力発生
第53条 証拠書類等の返還

(審査請求に関する規定の準用)
行政不服審査法第61条 第9条第4項、第10条から第16条まで、第18条第3項、第19条(第3項並びに第5項第1号及び第2号を除く。)、第20条、第23条、第24条、第25条(第3項を除く。)、第26条、第27条、第31条(第5項を除く。)、第32条(第2項を除く。)、第39条、第51条及び第53条の規定は、再調査の請求について準用する。この場合において、別表第二の上欄に掲げる規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。

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行政不服審査法60条:再調査請求の決定の方式

再調査請求の決定のやり方

再調査の請求の却下又は棄却の決定」および「再調査の請求の認容の決定」は、決定書という書面で行う必要があります。そして、この決定書には、主文及び理由を記載し、処分庁が記名押印します。

再調査請求の決定の際の教示

処分庁は、決定書に、再調査の請求に係る処分につき審査請求をすることができる旨並びに審査請求をすべき行政庁及び審査請求期間を記載して、これらを教示しなければなりません。

教示とは?>>

(決定の方式)
行政不服審査法第60条 前2条の決定は、主文及び理由を記載し、処分庁が記名押印した決定書によりしなければならない。
2 処分庁は、前項の決定書(再調査の請求に係る処分の全部を取り消し、又は撤廃する決定に係るものを除く。)に、再調査の請求に係る処分につき審査請求をすることができる旨(却下の決定である場合にあっては、当該却下の決定が違法な場合に限り審査請求をすることができる旨)並びに審査請求をすべき行政庁及び審査請求期間を記載して、これらを教示しなければならない。

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行政不服審査法59条:再調査の請求の認容の決定

処分についての再調査請求の認容

処分についての再調査の請求が理由がある場合には、処分庁は、決定で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更します。

例えば、営業停止の処分を受けて、それに対して、再調査請求をしたとします。再調査の結果、処分庁は、営業停止処分は妥当ではないと判断した場合、処分庁は、営業停止処分を取り消したり、処分を指示処分など、軽い処分に変更できたりします。

事実上の行為についての再調査請求の認容

事実上の行為についての再調査請求に理由がある場合、処分庁は、決定で、当該事実上の行為が違法または不当である旨を宣言します。そして、この宣言とともに当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又は、変更します。

撤廃とは?

撤廃とは、例えば、収容されている者を放免したり(収容をやめて解放すること)、領置(押収)している物を返還したりすることを言います。

不利益変更の禁止

そして、上記変更をする場合、もともとの処分と比べて、不利益な処分(重い処分)に変更することはできません。(不利益変更の禁止

(再調査の請求の認容の決定)
行政不服審査法第59条 処分(事実上の行為を除く。)についての再調査の請求が理由がある場合には、処分庁は、決定で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する。
2 事実上の行為についての再調査の請求が理由がある場合には、処分庁は、決定で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更する。
3 処分庁は、前2項の場合において、再調査の請求人の不利益に当該処分又は当該事実上の行為を変更することはできない。

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行政不服審査法58条:再調査の請求の却下又は棄却の決定

再調査の請求が法定の期間を過ぎた場合(不適法である場合)、審査庁は、裁決で却下します。

再調査請求について、理由がない場合、審査庁は、裁決で棄却します。

再調査請求について、結論を出すことを「決定」という文言を使います。

審査請求について、結論を出すことは「裁決」でしたね!

却下と棄却の違い

この2つの違いについてよく行政書士試験で出題されるので必ず頭に入れておきましょう!

却下 手続の不備など、不適法な場合に、審理をせずに門前払いをすること
棄却 手続の不備はなく適法に行われているため、審理はするが、請求に理由がないとして請求などを退けること

(再調査の請求の却下又は棄却の決定)
行政不服審査法第58条 再調査の請求が法定の期間経過後にされたものである場合その他不適法である場合には、処分庁は、決定で、当該再調査の請求を却下する。
2 再調査の請求が理由がない場合には、処分庁は、決定で、当該再調査の請求を棄却する。

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行政不服審査法57条:三月後の教示

3か月を経過しても再調査請求が係属している場合

処分庁は、再調査の請求がされた日の翌日から起算して3か月を経過しても当該再調査の請求が係属している(続いている)ときは、遅滞なく、当該処分について直ちに審査請求をすることができる旨を書面でその再調査の請求人に教示しなければなりません。(行政不服審査法57条)

教示とは、「教えること」です。

教示の詳細はこちら>>

つまり、再調査請求を行い、その翌日から3か月経っても、処分庁が再調査を行っている状況の場合、処分庁は、請求人に対して「直ちに審査請求を行うことができる旨」を伝えて、請求人は直ちに審査請求を行うことができるということです。

そして、審査請求を行うと、再調査請求は取消しされたものとみなされます。

(三月後の教示)
行政不服審査法第57条 処分庁は、再調査の請求がされた日(第61条において読み替えて準用する第23条の規定により不備を補正すべきことを命じた場合にあっては、当該不備が補正された日)の翌日から起算して3月を経過しても当該再調査の請求が係属しているときは、遅滞なく、当該処分について直ちに審査請求をすることができる旨を書面でその再調査の請求人に教示しなければならない。

<<行政不服審査法56条:再調査の請求についての決定を経ずに審査請求がされた場合 | 行政不服審査法58条:再調査の請求の却下又は棄却の決定>>

行政不服審査法56条:再調査の請求についての決定を経ずに審査請求がされた場合

再調査請求後の審査請求

再調査請求をした後に審査請求を行うことも可能です。その場合、再調査請求の決定を経た後でなければ、原則審査請求はできません

ただし、例外として、次の2つの場合、再調査請求の決定を経る前に審査請求ができます

  1. 再調査の請求をした日の翌日から起算して3か月を経過しても、処分庁が当該再調査の請求につき決定をしない場合
    ※再調査請求書に不備があり、その補正を命じられた時は、その補正をしたときから3か月を経過しても、処分庁が当該再調査の請求につき決定をしない場合
  2. 再調査の請求についての決定を経ないことにつき正当な理由がある場合

再調査請求は取り下げとみなされる

そして、上記例外規定に基づいて、再調査請求の決定を経る前に審査請求を行った場合、もともと行っていた再調査請求は取り下げたものとみなされます

(再調査の請求についての決定を経ずに審査請求がされた場合)
行政不服審査法第56条 第5条第2項ただし書の規定により審査請求がされたときは、同項の再調査の請求は、取り下げられたものとみなす。ただし、処分庁において当該審査請求がされた日以前に再調査の請求に係る処分(事実上の行為を除く。)を取り消す旨の第60条第1項の決定書の謄本を発している場合又は再調査の請求に係る事実上の行為を撤廃している場合は、当該審査請求(処分(事実上の行為を除く。)の一部を取り消す旨の第59条第1項の決定がされている場合又は事実上の行為の一部が撤廃されている場合にあっては、その部分に限る。)が取り下げられたものとみなす。

<<行政不服審査法55条:誤った教示をした場合の救済 | 行政不服審査法57条:三月後の教示>>

行政不服審査法55条:誤った教示をした場合の救済


行政不服審査法55条の誤った教示をした場合の救済については、行政書士試験でもよく出題される部分です。しかし、分かりづらいため、きちんと頭に入っていない受験生も多いです。そのため、合否の分けれ目になる部分なので行政書士試験に合格するためにも絶対押さえておきましょう!

教示とは?

教示とは、「不服ある場合は、こんな方法がありますよ!」教えてくれる制度です。

そもそも、国民のほとんどが、行政不服審査法を知っているわけではありません。そのため、行政庁の処分により不利益を受ける国民の権利利益を救済するために、教示制度があります。

再調査請求ができるにも関わらず、できない旨の教示をし、審査請求がされた場合

ある処分がなされて、その処分について、再調査請求ができる旨の法律があったとします。

その場合、処分を受けた者に対して、処分庁は、「再調査請求ができますよ!」と教える必要があります。

それにも関わらず、間違って、「再調査請求はできません!」と教えてしまい、結果的に、処分を受けた者が審査請求をした。

この場合、審査請求人(=処分を受けた者)は「再調査請求にしてください!」と申立てをすれば、再調査請求に変更することができます。

この場合、審査庁は、速やかに、審査請求書又は審査請求録取書を処分庁(再調査を行う行政庁)に送付しなければなりません。そして、上記審査請求書などが処分庁に送付されたときは、初めから処分庁に再調査請求がされたものとみなします

ただし、例外として、処分庁が、審査請求人に対し弁明書が送付した後においては、再調査請求はできなくなり、そのまま審査請求の手続きが行われます。

(誤った教示をした場合の救済)
行政不服審査法第55条 再調査の請求をすることができる処分につき、処分庁が誤って再調査の請求をすることができる旨を教示しなかった場合において、審査請求がされた場合であって、審査請求人から申立てがあったときは、審査庁は、速やかに、審査請求書又は審査請求録取書を処分庁に送付しなければならない。ただし、審査請求人に対し弁明書が送付された後においては、この限りでない。
2 前項本文の規定により審査請求書又は審査請求録取書の送付を受けた処分庁は、速やかに、その旨を審査請求人及び参加人に通知しなければならない。
3 第1項本文の規定により審査請求書又は審査請求録取書が処分庁に送付されたときは、初めから処分庁に再調査の請求がされたものとみなす。

<<行政不服審査法54条:再調査の請求期間 | 行政不服審査法56条:再調査の請求についての決定を経ずに審査請求がされた場合>>

行政不服審査法54条:再調査の請求期間

再調査請求の請求期間

再調査請求は下記期間内に請求しないといけません。下記期間を過ぎて再調査請求をしても不適法として却下されてしまいます。

下記主観的期間と客観的期間である3か月または1年のどちらか一方でも経過してしまうと再調査請求ができなくなります。

主観的期間 原則、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内
例外として、正当な理由があるときは、3か月を超えてもよい
客観的期間 原則処分があった日の翌日から起算して1年以内
正当な理由があるときは、1年を超えてもよい

正当な理由とは?

正当な理由とは、例えば、処分庁が、誤って、「再調査請求について、処分があったことを知った日から4か月以内に行ってください」と教示した場合等です。

>>審査請求の請求期間

(再調査の請求期間)
行政不服審査法第54条 再調査の請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3月を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
2 再調査の請求は、処分があった日の翌日から起算して1年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

<<行政不服審査法53条:証拠書類等の返還 | 行政不服審査法55条:誤った教示をした場合の救済>>

行政不服審査法53条:証拠書類等の返還

審査請求の手続きの際に、提出した証拠書類や物件について、審査庁は、裁決したときは、速やかに、提出した者に返還しなければなりません。

例えば、審査請求人が、売買契約書の写しを提出したのであれば、裁決後、速やかに、審査庁は審査請求人に対して返還しないといけないです。

(証拠書類等の返還)
行政不服審査法第53条 審査庁は、裁決をしたときは、速やかに、第32条第1項又は第2項の規定により提出された証拠書類若しくは証拠物又は書類その他の物件及び第33条の規定による提出要求に応じて提出された書類その他の物件をその提出人に返還しなければならない。

<<行政不服審査法52条:裁決の拘束力 | 行政不服審査法54条:再調査の請求期間>>

行政不服審査法51条:裁決の効力発生

裁決の効力に関するこのページは、行政書士試験でも重要なポイントなので、しっかり頭に入れましょう!

裁決の効力が発生する時期

裁決の効力は、審査請求人に送達された時(届いた時)に発生します。

裁決書の送付と公示送達

そして、上記裁決の送達は、原則、送達を受けるべき者(審査請求人)に裁決書の謄本を送付することによって行われます。ただし、例外として、送達を受けるべき者の所在が知れない場合等、裁決書の謄本を送付することができない場合には、公示の方法によってすることができます。これを公示送達と言います。

原則 裁決書の謄本を送付
例外 裁決書の謄本を送付することができない場合、公示送達

公示送達

公示送達を行う場合、審査庁裁決書の謄本を保管し、「いつでもその送達を受けるべき者に交付する旨」を当該審査庁の掲示場に掲示します。

さらに、「いつでもその送達を受けるべき者に交付する旨」を官報その他の公報又は新聞紙少なくとも1回掲載しなければなりません。

そして、掲示を始めた日の翌日から起算して2週間を経過した時に裁決書の謄本の送付があったものとみなします

裁決書の送付先

審査庁は、裁決書の謄本を、審査請求人、参加人及び処分庁等(審査庁以外の処分庁等に限る。)に送付しなければなりません。

(裁決の効力発生)
行政不服審査法第51条 裁決は、審査請求人(当該審査請求が処分の相手方以外の者のしたものである場合における第46条第1項及び第47条の規定による裁決にあっては、審査請求人及び処分の相手方)に送達された時に、その効力を生ずる。
2 裁決の送達は、送達を受けるべき者に裁決書の謄本を送付することによってする。ただし、送達を受けるべき者の所在が知れない場合その他裁決書の謄本を送付することができない場合には、公示の方法によってすることができる。
3 公示の方法による送達は、審査庁が裁決書の謄本を保管し、いつでもその送達を受けるべき者に交付する旨を当該審査庁の掲示場に掲示し、かつ、その旨を官報その他の公報又は新聞紙に少なくとも1回掲載してするものとする。この場合において、その掲示を始めた日の翌日から起算して2週間を経過した時に裁決書の謄本の送付があったものとみなす。
4 審査庁は、裁決書の謄本を参加人及び処分庁等(審査庁以外の処分庁等に限る。)に送付しなければならない。

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