憲法の無料テキスト

地方自治

憲法第92条
地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

上記92条の条文の地方自治とは、分かりやすく言えば、日本国内を地域を区切って、その中でそれぞれが独自に行政サービスを行ったり、ルール作りをしたりするということです。

地方自治の本旨とは?

地方自治の本旨とは、住民自治と団体自治の2つを意味します。この2つに従って、地方公共団体の組織や運営について法律(地方地自法)で定める、と憲法は言っているわけです。

住民自治

住民自治とは、地方公共団体の行政は、その住民の意思に基づいて行わなければならない、ということです。

住民自治の具体例として、直接請求住民訴訟が挙げられます。

団体自治

団体自治とは、国から独立した存在として、地方公共団体自らの意思と責任で地方公共団体の事務を処理する、ということで、国からの介入を排除して住民の自由を保障しています。

また、この団体自治は、国家と地方に権力分立させ、住民の人権保障にも役立っているといえます。

団体自治の具体例として、条例制定権(94条)があります。

憲法第94条
地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

地方公共団体の機関

憲法第93条
地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

上記93条2項を見ると、「地方公共団体の長は、住民が直接選挙で選ぶ」となっています。これは、大統領制であることを意味しています。

大統領制とは、国家元首ないし行政権の主体たる大統領を国民から直接的に選出する政治制度です。

地方公共団体の機関に関する重要判例

東京都の特別区について区長の公選制を廃止することが憲法上許されるかどうかが争われた。この点について、最高裁は「憲法上の地方公共団体というためには、事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識を持っているという社会的基盤が存在し沿革的にみても、現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権自主行政権自主財政権等地方自治の基本的機能を付与された地域団体であることを必要とするが、東京都の特別区は、そのような実体を備えておらず、憲法上の地方公共団体に当たらない」としました。(最大判昭38.3.27:特別区長公選廃止事件)

財政民主主義と租税法律主義

財政民主主義

憲法第83条
国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。

財政とは、国家がその任務を行うために、必要な財力を調達し、管理士、使用することで、分かりやすく言えば、国家の歳入(収入)と歳出(支出)です。

具体的に言えば、
国民から税金を徴収したり、国債を発行して国民から借金をするのが、歳入で、
公務員の人件費だったり、公共事業にお金を使ったり、社会保障にお金を使ったりするのが歳出です。

そして、国家が使用する費用は、結局は国民が負担するものなので、国家財政の運用には、民主的なコントロールが必要です。

上記の通り、財政を処理する権限は国会に与えられています。国会は私たちが投票で選んだ議員によって成り立っていることから、民主的だといえるわけです。

これを財政民主主義と言います。

歳入において、この財政民主主義が現れているのは84条の租税法律主義です。

租税法律主義

憲法第84条
あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

租税法律主義とは、新たに税金を課したり、税制を変更したりする場合、国民の代表者からなる国会の法律によって決定しなければならないということです。

総理大臣が独断で、〇〇税を取り入れます!ということはできないのです。

そして、租税法律主義の内容としては、

  1. 課税要件法定主義
  2. 課税要件明確主義

課税要件法定主義

課税要件法定主義とは、分かりやすく言えば、「納税義務が成立するための要件」と「租税の賦課・徴収の手続」は法律で定めなければならないという原則です。

具体的には、納税義務が発生する要件として、「納税義務者、課税物件、課税物件の帰属、課税標準、税率」を定め、さらに、細かくどのように税金等を徴収するかを法律で決めなければならないということです。

ここで問題になるのは、法律が、下位規範である政令や省令に定めを委任する場合です。
例えば、「財務省令で定める方法により」といった場合です。

委任自体は租税法律主義に反しませんが、委任する場合には一般的・白紙的委任は許されず具体的・個別的委任でなければなりません。

また、委任の目的、内容及び程度が委任する法律の中で明確にされていなければならないと解されています。

課税要件明確主義

課税要件明確主義というのは、法律またはその委任のもとに政令や省令において課税要件及び租税の賦課・徴収手続に関する定めをなす場合に、その定めは一義的で明確でなければならないという原則を言います。
一義的とは、それ以外に意味や解釈ができないということです。法律で定めた内容が、色々な解釈ができると、課税庁の自由裁量により、色々な課税ができてしまします。それを防ぐための原則です。

違憲審査権

憲法第81条
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

違憲審査とは?

違憲審査とは、法律・命令・規則・処分が憲法に適合するか否かを審査することを言います。

憲法が最上位のルールとして君臨しており、国会で定める法律等は、憲法に違反することができません。そして、法律などが憲法に違反していないかどうかを審査するのが違憲審査で、裁判所の重要な仕事となっています。

そして、違憲審査については、付随的違憲審査制と抽象的違憲審査制の2つの考え方があります。

付随的違憲審査制

付随的違憲審査制とは、具体的な訴訟(事件)があって、その事件を審査する上で、必要な場合でのみ違憲審査を付随的に行う制度です。

例えば、Xが死刑判決を受けた場合において、「死刑制度はそもそも違憲だから、死刑を受けることはない」と主張して違憲審査を行うことです。死刑判決が具体的な事件

判例(最大判昭27.10.8:警察予備隊訴訟)でも、日本の違憲審査制は、付随的違憲審査制を採用していることを示しています。

つまり、裁判所は、具体的な訴訟と切り離して、憲法判断をすることはできないということです。

抽象的違憲審査制

具体的な訴訟(事件)がないけど、法律等が憲法違反ではないかと審査することです。

例えば、死刑制度はおかしいと思って、死刑制度について違憲審査を申し立てることです。日本では、上記の通り、付随的違憲審査制を採用していることから、上記のように、具体的な事件がないにも関わらず、死刑制度の違憲審査を行うことはできません。

違憲審査の対象

81条の条文では、「一切の法律、命令、規則又は処分」と書かれています。これには、「個別具体的な公権行為」も含まれます。

また、下記判例により、立法不作為条約についても違憲審査の対象と判示されています。

違憲審査に関する重要判例

  • 公職選挙法及び公職選挙法施行令で、「一定事由がある場合、投票所に行かずに、在宅等で投票することができる」という制度を定めていました。しかし、この制度の悪用により、法改正され、当該在宅投票制度が廃止され、その後、在宅投票制度を設けることはありませんでした。そして、歩行困難になり投票所にいくことができなくなったXが、在宅投票制度は、選挙人(投票を行う人)に対する投票を機会を保障する憲法15条等に違反するとして、在宅投票制度を廃止したままで、再度立法行為を行わなかった不作為により、精神的な損害を受けたとして、国家賠償法1条1項に基づいて国に損害賠償を求めた。
    これに対して最高裁は、「国会議員は、立法に関しては、原則として、国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではないというべきであって、国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定し難いような例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けないものといわなければならない。」とし、立法行為の不作為についても違憲審査を行っていることから、立法不作為も違憲審査の対象としています。また、今回の在宅投票制度を廃止して、その後復活しなかった不作為については、違法ではないとしました。(最判昭60.11.21:在宅投票制度廃止事件)
  • 日本国外に在住する在外国民が、国政選挙において、投票できない制度について、当時の公職選挙法の違憲確認等と損害賠償請求の訴えがなされた。
    これに対して最高裁は、「立法の内容又は立法不作為が国民に、憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けるものというべき」として、今回の在外選挙制度について違憲と判示した。(最大判平17.9.14:在外日本人選挙権訴訟)

違憲判決・違憲決定とした事案

違憲判決・意見決定となった事案は、これまでに9つしかないので、すべて覚えておきましょう!

  1. 最大判昭48.4.4:尊属殺重罰規定違憲判決
  2. 最大判昭50.4.30:薬事法距離制限事件
  3. 最大判昭51.4.14、最大判昭60.7.17:衆議院議員定員不均衡訴訟
  4. 最大判昭62.4.22:森林法事件
  5. 最大判平14.9.11:郵便法免責規定違憲判決
  6. 最大判平17.9.14:在外日本人選挙権訴訟
  7. 最大判平20.6.4:国籍法3条1項違憲判決
  8. 最大決平25.9.4:非嫡出子相続分差別違憲決定
  9. 最大判平27.12.16:再婚禁止期間違憲訴訟

裁判の公開

憲法第82条
裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。

裁判の対審および判決は、原則公開です。

対審とは、民事訴訟で、原告・被告を法廷に立ち合わせ、口頭弁論をさせて審理することです。

ただし、対審については、例外もあり、裁判官が全員一致で非公開にすることができます。

また、「政治犯罪、出版に関する犯罪又は基本的事件が問題となっている事件の対審」は必ず、必ず後悔しなければなりません。

まとめると下記の通りです!

対審 原則、公開
例外として
① 政治犯罪、出版に関する犯罪又は基本的事件が問題となっている事件は、常に公開
② ①以外の事件は、裁判官が全員一致で非公開にできる
判決 常に公開

裁判所の組織

裁判所の組織に関して憲法で規定されている部分でいうと、79条と80条です。

憲法第79条
最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
2 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
3 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
4 審査に関する事項は、法律でこれを定める。
5 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。

憲法第80条
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる[1]。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。

行政書士の試験におけるポイントを列挙します。

  • 最高裁判所長官は、内閣が指名して、天皇が任命する。
  • 最高裁判所の長官以外の裁判官内閣が任命して、天皇が認証する。
  • 最高裁判所の長官および裁判官は、任期がない任命後初めて行われる衆議院議員選挙の際の国民審査に付される
  • 最高裁判所の長官および裁判官は、定年70歳。(裁判所法50条
  • 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した名簿により、内閣が任命する。
    ただし、高等裁判所の長官については、さらに天皇が認証をする。(裁判所法40条2項
  • 下級裁判所の裁判官は、任期が10年
  • 高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所の裁判官の定年は、65歳。(裁判所法50条
  • 簡易裁判所の裁判官の定年は、70歳。(裁判所法50条

司法権の独立

司法権の独立とは、2つの意味を持ちます。

  1. 司法権が立法権や行政権から独立していること(司法府の独立
  2. 裁判官一人が独立して職権を行使すること(裁判官の独立

司法府の独立

司法府の独立は、全体としての裁判所が、国会や内閣から独立して、自主的に活動することができるというこです。その為、憲法では、次のような制度が設けられています。

  1. 最高裁判所の規則制定権(77条
  2. 最高裁判所による下級裁判所裁判官の指名権(80条1項
  3. 裁判所による裁判官の懲戒(78条後段)

最高裁判所の規則制定権

憲法第77条
最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

憲法41条で「国の唯一の立法機関」と書いているのですが、その意味は2つあり、「国会中心立法の原則」と「国会単独立法の原則」です。

今回、最高裁判所が、単独で、裁判所の規則を制定する権利を持つため、国会中心立法の原則の例外にあたります。

最高裁判所による下級裁判所裁判官の指名権

憲法第80条1項
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。

下級裁判所とは、最高裁判所以外を指すので、高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所のことです。そして、これらの裁判官は最終的には内閣が任命するのですが、最高裁判所が指名した名簿から任命させるわけなので、最高裁判所の意思が強く反映されるわけです。そのため、裁判所の自主性を確保していると言えます。

裁判所による裁判官の懲戒

憲法第78条
裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。

78条は、裁判官の身分保障の規定です。裁判官の懲戒処分は行政機関ができないのですが、これができるとすると、裁判官は、行政に有利な判断をしてしまい、独立性を失ってしまいます。そのため、裁判官の懲戒処分(免職、停職、降任、減給、戒告)は、原則、弾劾裁判といった形で行います。

裁判官の独立

裁判官の職権行使の独立

憲法第76条
3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

「良心」とは、客観的な裁判官としての良心を指します。裁判官として考えたときに何が正しいかで判断し、その基準は、憲法と法律です。

裁判官の身分保障

裁判官の罷免事由の限定

裁判官は上記78条および79条場合でないと罷免されることはありません。

憲法第78条
2 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
3 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。

下記の場合に罷免されます。

  1. 心身故障のために職務執行不能の裁判を受けた場合(78条)
  2. 弾劾裁判所による罷免(78条)
  3. 国民審査による最高裁判所裁判官の罷免(79条2項3項)

3の国民審査による罷免は、最高裁の裁判官のみ適用され、下級裁判所の裁判官は適用されません。

そして、国民審査は、解職制度(リコール制度)であり、任期満了前に国民または住民の意思によって罷免する制度を言います。

行政機関による懲戒処分の禁止

上記「裁判所による裁判官の懲戒」でも解説した通り、裁判官の懲戒処分は行政機関が行うことができません。

報酬の減額禁止

憲法第79条
6 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

憲法第80条
2 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

最高裁判所・下級裁判所関係なく、いずれの裁判官も、すべて定期に相当額の報酬が保障され、在任中に減額されることはありません。

一方、国会議員の歳費(給与)については、減額される可能性はあります。

 

 

裁判所(司法権が及ぶかどうか)

憲法76条
すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

司法権とは?

司法権とは、具体的な争訟について、法を適用し、宣言することによって争訟を裁定する国家の作用のことを言います。分かりやすく言えば、具体的な事件について、法律を使って解決する行為のことです。

具体的な争訟とは?

そして、具体的な争訟を「法律上の争訟」という言い方をしますが、「①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争」であって「②法律を適用することによって終局的な怪異決をすることができるもの」です。

例えば、あなたが、Aさんに100万円を貸して返してくれないため、裁判をしようとしたとします。この場合、あなたは、Aさんに対して「100万円を返してもらう権利」があります。つまり、上記①を満たします。そして、お金の貸し借りについて、民法という法律を使えば、解決できます。そのため②も満たします。したがって、これは、具体的な争訟と言えるわけです。

具体的な争訟に当たらない事例(判例)

下記判例の通り、「具体的事件性がなく抽象的な事件」「宗教の対象の価値、宗教上の教義の判断、宗教上の地位の確認」については、具体的な争訟(法律上の争訟)に当たらないとして、司法権が及びません。(却下される)

  • 自衛隊の前進である警察予備隊の設置について、当時の日本社会党の代表者Xが、警察予備隊の設置及び維持は、憲法9条に反するとして、国に対して無効確認の訴えを提起した。これに対して最高裁は、
    「わが裁判所が現行の制度上与えられているのは司法権を行う権限であり、そして司法権が発動するためには具体的な争訟事件が提起されることを必要とする」として、上記でも解説した通り、裁判で審理するためには、具体的な争訟である必要があるということです。また、
    「裁判所は具体的な争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法及びその他の法律命令等の解釈に対し存在する疑義論争に関し抽象的な判断を下すごとき権限を行い得るものではない。」として、将来的にそのような論争が起こり得るとしても、抽象的なことを判断する権限は裁判所にはない、としています。さらに、
    「わが現行の制度の下においては、特定の者の具体的な法律関係につき紛争の存する場合においてのみ裁判所にその判断を求めることができるのであり、裁判所がかような具体的事件を離れて抽象的に法律命令等の合憲性を判断する権限を有するとの見解には、憲法上及び法令上何等の根拠も存しない。」として、裁判所が違憲立法審査権を行使するには、実際に起こった具体的な争訟事件が必要ということです。言い換えると、わが国は、「付随的違憲審査制」を採用している、と判旨しています。
    結局のところ、今回の訴えについては、具体的な争訟に当たらないとして、却下されました。(最大判昭27.10.8:警察予備隊訴訟)
  • 国家試験の合格、不合格の判定は、司法審査の対象となるかについて、最高裁は「国家試験の合格・不合格の判定は、学問・技術上の知識、能力、意見等の優劣、当否の判断を内容とする行為であるから、試験実施機関の最終判断に委ねられる」として、法令を適用することによって解決することができない事案なので、裁判の対象とはなり得ないとしました。(最判昭41.2.8:技術士国家試験事件)
  • 創価学会の本尊である「板曼荼羅(いたまんだら)」を安置するために「正本堂」を建築しようと、創価学会が、会員に建築費の寄付を募りました。
    寄付をした創価学会の会員は「板まんだらは偽物だ」として、寄付金の贈与の錯誤無効を主張し不当利得の返還を請求した。
    これに対して最高裁は「本件訴訟は、具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争の形式をとっており、信仰の対象の価値または宗教上の教義に関する判断は、錯誤無効による不当利得の返還請求を認めるか否かの前提条件にとどまっているとされているが、実際問題、信仰の対象の価値等に対する判断が、本件を判断する上で必要不可欠なものと認められ、本件訴訟の争点および当事者の主張立証もこの判断に関するものがその核心となっていると認められることからすれば、結局、本件の訴訟は、その実質において法令の適用による終局的な解決の不可能なものであって、裁判所法3条にいう『法律上の争訟』にあたらない」とした。(最判昭56.4.7:板まんだら事件)

司法権の限界

具体的な争訟であったとしても、「他の権利との関係」や「制度上の理由」から裁判所が判断を回避する場合があります。これを司法権の限界と言います。

憲法に規定された限界

下記については、裁判所による司法権は及びません。(裁判所は裁判をしない)

国際法上の限界

例えば、「外交使節の裁判権免除」。外国から日本に派遣された外交官が犯罪を犯した場合、日本の裁判所で裁判をせず、派遣元の国で裁判を行います。

憲法解釈上の限界

天皇と民事裁判権

天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることにかんがみ、天皇には民事裁判権は及ばない。(最判平元.11.20)

自律権の問題

自律権とは、懲罰や議事手続きなど、国会や各議院の内部事項について自主的に決定できる権能を言います。

議院の自律権はこちら>>

憲法上、国会等に与えられた自律権については、それぞれの組織が決定権を持っているため、司法権は及びません。(最大判昭37.3.7:警察法改正無効事件)

ただし、「議院の除名処分」は司法審査が及びます。(最大判昭35.10.19:地方議会議員懲罰事件)

裁量行為

憲法が、立法権や行政権に対して一定の裁量を認めている場合があります。裁量の範囲内の行為については当か・不当かが問題になるだけで、違法性は問いません。そのため、原則、裁判所は審査できません。

統治行為(政治行為)

統治行為とは、高度な政治性のある国家行為で、例えば、「衆議院の解散行為」です。これは、国会等の判断を尊重すべきところなので、裁判所の審査は及びません。(最大判昭34.12.16:砂川事件、最大判昭35.6.8:苫米地事件)

部分社会の法理

部分社会の法理とは、ある団体内部の紛争で、団体の自立的な判断を尊重すべきとして、司法審査が及ばない考えを言います。ただし、一般市民秩序と直接関係する問題に対して司法審査が及びます。(最大判昭35.10.19:地方議会議員懲罰事件、最判昭52.3.15:富山大学事件、最判昭63.12.20:共産党袴田事件)

司法権の限界に関する重要判例

  • 1954年(昭和29年)に改正された新警察法について住民が法律として無効であるとして争われた。これに対して最高裁は「新警察法は両院において議決を経たものとされ、適法な手続によって公布されている以上、裁判所は両院の自主性を尊重し、議事手続に関する事実を審理してその有効無効を判断すべきでない」として司法権が及ばないとした。(最大判昭37.3.7:警察法改正無効事件)
  • 地方議会が議員Xの出席停止とする懲罰を決議し、Xがこの決議の無効の確認および取消しの訴えをした。
    これに対して最高裁は「自律的な法規範をもつ社会ないしは団体に在つては、当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せ、必ずしも、裁判による審査が適当でないものがある。本件における出席停止の如き懲罰はまさにそれに該当するものと解するを相当とする。」として、議員の出席停止処分は、議院内部の話として司法審査が及ばないとしています。
    また、一方で、
    「議員の除名処分の如きは、議員の身分の喪失に関する重大事項で、単なる内部規律の問題に止らない」として議員の除名処分については、議院内部の話ではなく、司法審査が及ぶとしています。(最大判昭35.10.19:地方議会議員懲罰事件)
  • デモ隊員がアメリカ空軍基地内へ侵入した行為が、日米安保条約に違反された事件について、そもそも、日米安保条約が違憲ではないかと争われた。
    これに対して最高裁は「日米安保条約は高度の政治性を有するものであって、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限り、司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものである」として、日米安保条約は高度な政治性を有するものなので、原則、司法権が及ばないとしつつ、一見極めて明白に違憲無効であると認められる場合は、司法権が及ぶとしました。(最大判昭34.12.16:砂川事件)
  • 吉田内閣時代、吉田自由党と鳩山自由党が対立しており、吉田自由党は密かに選挙の準備を進めておき、準備の整っていない鳩山派に打撃を与える目的で、抜き打ちで衆議院の解散を行った。これに対して最高裁は「衆議院の解散は、極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であって、かくのごとき行為について、その法律上の有効無効を審査することは司法裁判所の権限の外にありと解すべきである」として、衆議院の解散については司法審査の対象外と判示しました。(最大判昭35.6.8:苫米地事件)
  • 富山大学のA教授が、大学から授業担当停止処分を受け、学生への代替科目履修の指示を行った。しかし、A教授は、授業担当停止処分に従わず、授業を続行し、学生Xもその授業を受け、A教授からの成績評価を受けた。しかし、学校は、Xに対して単位認定をしなかった。これに対して、Xは学校に対して単位認定するよう求めた。
    これに対して、最高裁は「自律的な法規範を有する特殊な部分社会における法律上の争訟のごときは、それが一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、その自主的、自律的な解決に委ねるのを適当とし、裁判所の司法審査の対象にはならないものと解するのが、相当」
    また、
    「単位授与(認定)行為は、特段の事情のない限り、純然たる大学内部の問題として、大学の自主的、自律的な判断に委ねられるべきものであって、裁判所の司法審査の対象にはならないものと解するのが相当」として、一般市民法秩序と直接関係しない単位認定は、大学内部の問題(部分社会の法理)として司法審査が及ばないとしました。(最判昭52.3.15:富山大学事件)
  • 日本共産党の党員Xが、党規律違反を理由に、党から除名処分を受けた。この除名処分について、最高裁は「政党の結社としての自主性にかんがみると、政党の内部的自律権に属する行為は、法律に特別の定めのない限り尊重すべきである」とし
    さらに
    「政党が組織内の自律的運営として党員に対してした除名その他の処分の当否については、原則として自律的な解決に委ねられ、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばないというべきのを相当である」とし
    政党の党員に対する除名処分は、原則、司法審査の対象とならず一般市民法秩序と直接の関係を有する場合は、例外的に司法審査の対象となる判示した。(最判昭63.12.20:共産党袴田事件)

内閣の権能

内閣は、一般行政事務の他、下記の15の事務を行います。

  1. 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。(73条
  2. 外交関係を処理すること。
  3. 条約を締結すること。ただし、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
  4. 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
  5. 予算を作成して国会に提出すること。
  6. この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
  7. 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
  8. 天皇の告示行為に対する助言と承認(3条7条
  9. 国会の召集を決定すること。(7条2号
  10. 参議院の緊急集会を求めること。(54条2項
  11. 衆議院の解散をすること(7条3号)
  12. 最高裁判所の長たる裁判官を指名すること、およびそれ以外の裁判官を任命すること(6条2項79条1項80条
  13. 予備費を支出すること(87条
  14. 決算を国会に提出すること(90条1項
  15. 国会および国民に財政状況を報告すること(91条

法律を誠実に執行し、国務を総理する

国会で法律を作り、内閣がそれを執行するという流れです。

「国務を総理する」とは、行政事務を統轄し、行政各部を指揮監督するといったイメージです。

そして、「法律」については、あとで解説する「政令」同様、執行の責任を明確にするため、べての主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署します。(74条

外交関係の処理

外交関係の処理は、内閣の権限です。

条約の締結

内閣は条約を締結することができます。そして、この条約は法律に優位すると解釈されています。つまり、この条約と法律が矛盾する場合、条約が優先します。そのため、法律制定機関である国会の事前承認もしくは事後承認が必要となります。

法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を掌理すること

ここでいう「法律」とは、「国家公務員法」を指します。

また、「官吏(かんり)」とは「国家公務員」と考えて大丈夫です。

「掌理(しょうり)」とは、「とりまとめる」という意味です。

つまり、内閣は、国家公務員法の基準に従って、国家公務員に関する事務のとりまとめを行うということです。

予算を作成して国会に提出

予算の作成権限は内閣に属しますが、国会の議決を受けることが必要です。(60条

政令の制定

内閣は、政令を制定するのですが、この政令については、制定・執行の責任を明確にするため、すべての主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署します。(74条

政令とは?

政令とは、内閣の制定する命令です。

国会中心立法の原則から内閣が政令を制定するにあたっても国会が関与する必要があります。つまり、法律で定めらた内容を執行するための細かい事柄を決める執行命令か、法律から委任を受けて細かい事柄を決める委任命令しか認められないと考えられています

大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定(恩赦の決定)

上記をまとめて「恩赦(おんしゃ)」と言います。恩赦とは、内閣の権限で(行政権により)、刑罰の全部又は一部を消滅若しくは軽減させることを言います。

このように、恩赦するかどうかは、内閣が決定します。

大赦とは?

大赦(たいしゃ)は、一定の犯罪者全体について刑を消滅させることを言います。

特赦とは?

特赦(とくしゃ)は特定の者について刑を消滅させることを言います。

国会の召集決定

憲法第7条2号
内閣の決定に基づき、国会の召集を行う。

国会の召集決定は内閣が行い、天皇が召集します。

参議院の緊急集会を求める

憲法第54条
2 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。

国会は衆議院と参議院で構成されていて、両議院は同時に活動します。そのため、衆議院が解散すると、参議院の会期も終了します。この間に、緊急事態が起こった場合に備えて、参議院のみ緊急集会を行うことができます。

内閣が緊急集会を決定しますが、緊急集会を召集するのは天皇です。

緊急集会の手続きについては、下記の通り、国会法で定められています。
内閣総理大臣が、集会の期日を定め、案件を示して、参議院議長に請求します(国会法第99条第1項)。請求を受けた議長はその旨を各議員に通知し、通知を受けた各議員は指定された期日に参議院に集会しなければなりません(国会法第99条第2項)

緊急集会の詳細はこちら>>

衆議院の解散

衆議院解散の決定を行うのは、内閣であり、解散をすることは天皇の国事行為です。

天皇は形式的儀式的に衆議院解散をさせるわけです。

衆議院解散の流れはこちら>>

最高裁判所長官の指名とそれ以外の裁判官の任命

憲法第6条
2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

憲法第79条
最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。

憲法第80条
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。

最高裁判所長官 内閣が指名天皇が任命
上記以外の裁判官 最高裁判所の指名した者の名簿から内閣が任命

高等裁判所の長官も最高裁判所の指名した者の名簿から内閣が任命します。

下級裁判所(高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所)の裁判官については、最高裁が指名するわけなので、裁判所の自主性を確保していると言えます。

予備費の支出

憲法第87条
予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
2 すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

予備費とは、予定外の支出及び予算を超過した支出へ対応するために準備しておく費用のことで、国の場合予備費は設けてもよいし、設けなくてもよいです(任意)。

そして、内閣は、この予備費を使う(支出)ことができるのですが、使った場合、あとで、国会の承諾を得る必要があります。もし、国会の事後承認が得られなかったとしてもその支出は有効であり、内閣の政治責任が問われることはあります。

地方自治法における予備費はこちら>>

決算を国会に提出

憲法第90条
国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。

決算とは、一会計年度(1年間)の収入と支出の結果です。この国の決算は、初めに会計検査院に検査してもらい、その後、内閣が、決算書類と検査報告書を国会に提出します。

会計検査院とは?

会計検査院は、国や政府関係機関の決算、独立行政法人等の会計などを検査報告する行政機関です。

そして、会計検査院は、憲法90条で設置をすることが規定されており、内閣から独立してています。そのため、内閣の統轄の下にはありません。

また、国家行政組織法上の「国の行政機関」ではない点も注意しましょう!

財政状況の報告

憲法第73条
内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。

憲法には、上記の通り、報告すべき財政状況の「具体的な内容」「方法」については規定されていません。

「報告する内容」については、例えば、毎会計年度の予算及び決算、、国有財産や国の債務の状況、予算使用の状況などを報告します。

また、「報告の方法」については、財政法46条に規定されています。

財産法第46条
内閣は、予算が成立したときは、直ちに予算、前前年度の歳入歳出決算並びに公債、借入金及び国有財産の現在高その他財政に関する一般の事項について、印刷物、講演その他適当な方法で国民に報告しなければならない。
2 前項に規定するものの外、内閣は、少くとも毎四半期ごとに、予算使用の状況、国庫の状況その他財政の状況について、国会及び国民に報告しなければならない。

 

内閣総理大臣の権能

内閣総理大臣の権能は下記6つあります。

  1. 他の国務大臣を任命し、罷免すること(68条
  2. 内閣を代表して、議案を国会に提出し、一般国務および外交関係について国会に報告すること(72条
  3. 内閣を代表して行政各部を指揮監督する。(72条
  4. 国務大臣に対する訴追に対して同意すること(75条
  5. 法律および政令に主任の国務大臣とともに連署すること(74条
  6. 議案について発言をするため議院に出席すること(63条

国務大臣の任命権

憲法第68条
内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

内閣総理大臣は、国務大臣を任命することもできるし、国務大臣を罷免(やめさせること)もできます

そして、任命も罷免も、閣議にかける必要はなく、内閣総理大臣の独断で決めることができます。これは、内閣総理大臣自身を中心に、自分の政策に近い自分を国務大臣にすることで統一的な内閣を組織を作り、運営するためです。

内閣を代表して議案提出・国務報告・行政指揮監督を行う

憲法第72条
内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。

内閣総理大臣の行政各部への指揮監督は、閣議によって決定された方針をもとに行われます。(内閣法6条

内閣総理大臣の権能に関する判例

「内閣総理大臣が行政各部に対し、指揮監督権を行使するためには、閣議にかけて決定した方針が存在することを要するが、閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても、内閣総理大臣の右のような地位及び権限に照らすと、流動的で多様な行政需要に遅滞なく対応するため、内閣総理大臣は、少なくとも、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導、助言等の指示を与える権限を有するものと解するのが相当である。」として、閣議にかけて決定した方針でなくても、内閣の意思に反しない限り、総理は行政各部に指示を上げる権限を有するとしました。(最大判平7.2.22:ロッキード事件)

国務大臣の訴追に対する同意

憲法第75条
国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。

在任中の国務大臣の訴追には、内閣総理大臣の同意が必要です。これは、内閣の一体性を確保することと、内閣総理大臣の長としての地位を強化するためです。

しかし、上記ルールは、在任中は訴追されないだけで、在任期間が過ぎれば、訴追されることはあります。

これは、上記「訴追の権利は害されない」という部分です。

訴追の権利は害されないとは?

犯罪が終わった時から一定期間を経過すると、その後起訴することができなくなります。これを公訴時効と言います。そして、「訴追の権利は害されない」とは在任中に公訴時効の期間が進まないだけで、起訴ができなくなるわけではないということです。起訴する権利自体は残るということです。

法律・政令に連署

憲法第74条
法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。

内閣総理大臣は、主任の大臣が署名した法律や政令に連署(一緒に署名)します。

これは、法律や政令の執行責任を明確にするためのものです。

そして、連署は、形式上のものなので、連署がなかったとしても、法律の効力には関係ないので、連署のない法律や政令であっても効力を有します

発言のために議院出席

憲法第63条
内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

内閣総理大臣および国務大臣は、いつでも議案について発言するため議院に出席することができます。つまり、議院からの呼び出しがなくても、自らの意思で議院に出席できるということです。

内閣の組織

憲法第66条
内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。

内閣は、内閣総理大臣とその他の大臣(国務大臣という)で組織される合議体です。

合議体とは、複数の者が集まって意思決定をする組織を言います。

国務大臣の人数は原則14人以内で、特別必要がある場合は17人以内です。(内閣法2条2項

内閣総理大臣と国務大臣は「文民」でなければならないのですが、文民とは、分かりやすく言えば、軍人でない人・自衛官でない人です。

そして、内閣総理大臣が国務大臣を選び国務大臣の過半数は国会議員でなければならないです。(68条