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最判平5.3.30:テニスコート審判台転倒事件

論点

  1. 設置管理者の通常予測し得ない異常な方法で使用して生じた事故につき、国家賠償法2条の責任を負うか?

事案

X1は、妻X2らとともに、長男A(当時5歳)を連れて、Y町の設置するB中学校の校庭内でテニスをしていた。

その間、Aは球拾いなどをして遊んでいたが、その後、テニスコートの横にある審判台に昇り、審判台の座席の後部の鉄パイプを握って降りようとしたため、本件審判台が後方に倒れ、Aはその下敷きとなり、死亡した。

X1らは、本件審判台の設置管理者であるY町を被告として、国家賠償法2条1項に基づいて国家賠償訴訟を提起した。

判決

設置管理者の通常予測し得ない異常な方法で使用して生じた事故につき、国家賠償法2条の責任を負うか?

→負わない

国家賠償法2条1項にいう「公の営造物の設置又は管理に瑕疵」があるとは、公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、右の安全性を欠くか否かの判断は、当該営造物の構造、本来の用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的、個別的に判断すべきである。

本件でみると、一般に、テニスの審判台は、審判者がコート面より高い位置から競技を見守るための設備であり、座席への昇り降りには、そのために設けられた階段によるべきことはいうまでもなく、審判台の通常有すべき安全性の有無は、この本来の用法に従った使用を前提とした上で、何らかの危険発生の可能性があるか否かによって決せられるべきものといわなければならない。

営造物の設置管理者は、本件の例についていえば、審判台が本来の用法に従って安全であるべきことについて責任を負うのは当然として、その責任は原則としてこれをもって限度とすべく、本来の用法に従えば安全である営造物について、これを設置管理者の通常予測し得ない異常な方法で使用しないという注意義務は、利用者である一般市民の側が負うのが当然であり、幼児について、異常な行動に出ることがないようにさせる注意義務は、もとより、第一次的にその保護者にあるといわなければならない。

そして、本件事案のような使用をすれば、本来その安全性に欠けるところのない設備であっても、何らかの危険を生ずることは避け難いところである。

幼児が異常な行動に出ることのないようにしつけるのは、保護者の側の義務であり、このような通常予測し得ない異常な行動の結果生じた事故につき、保護者から設置管理者に対して責任を問うというのは、もとより相当でない。

したがって、国YがXらに対して国家賠償法2条1項所定の責任を負ういわれはない。

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